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ミスマッチを避ける新卒者のための会社選び

“今の会社に一生勤めたい”(45.9%)

これは、財団法人社会経済生産性本部による2007年度の新入社員意識調査の転職に関する質問において、“チャンスがあれば、転職してもよい”(34.4%)とする回答を大きく上回ったものである。

“就職超氷河期”といわれていた2000年においては、“今の会社に一生勤めたい”と回答したのは20.5%と過去最低水準であったが、今年は過去最高水準に到達した。

リクルートによる『就職ブランド調査』においても、実力がダイレクトに評価に反映される成果主義を求める回答は減少傾向にあり、安定を求める回答が増加傾向にある。2008年春卒業予定の大学生・企業選択の視点では、“仕事の成果や業績が正当に評価される”というポイントよりも “給与・福利厚生など待遇が良い”というポイントを重視していることが明らかにされた。

景気がよくなると安定志向で会社選びをする学生が増えると一般的にいわれているので、こういった数字をみても「なるほど、そういうことか」と思うことができるが、本当に新入社員たちは安定を手に入れられたのだろうか。

不況を乗り越える過程で、日本のビジネスシーンは激変した。企業は生産性を高めるためにコストダウンに必死になり、徹底的に無駄を排除した。契約社員や派遣社員という雇用形態が浸透したのも、戦略的な人員計画で人件費を大幅にカットできることにメリットを感じる企業が増えたためともいえる。

また、無理な経営による倒産や破綻が相次ぎ、企業は透明性のある経営を求められるようにもなった。外部からの厳しいチェックにより、限られた時間の中で、より高い生産性を求められる経営環境では、安定だけを理由に働く社員を養う余裕はない。

いくら景気が回復してきたといっても、そこには“くう・ねる・あそぶ”や“五時から男”は帰ってこないのだ。時代は進んでいるのだから。

結局、安定志向で会社を選んだものの、実際に企業の中で働いてみると、そこには求める安定が見つからず、ミスマッチを感じるケースも少なくないだろう。新入社員のおよそ3割が3年以内に辞めてしまう問題にも、このことが大きく関係していると思われる。新卒者はもっと慎重に会社選びをしなければならないのだ。

若手社会人にターゲットを絞った転職サイト『リクナビNEXT第二新卒』では、第二新卒として転職した人の転職理由ランキングが公表されている。ベスト3を以下に挙げる。

1位 成長できる仕事がしたかった
2位 年収をアップさせたかった
3位 キャリアアップしたかった

新卒者が安定志向で会社選びをしていることと比較して、第二新卒者はそうではないことを示している。会社がどうであるというようなことは一切考慮されず、自分がどうなるかに主眼が置かれている。年収アップは安定志向的な回答のように思われるかもしれないが、必ずしもそうとはいえない。長期雇用が保障されるような大企業では、若手社員の年収が低い傾向にあり、若いうちから相応の年収を求めるならば、実力主義の企業に入るしかないからだ。

リクルートが2008年度春卒業予定者に対して実施した就職人気企業調査では、1位からみずほFG、全日本空輸、三菱東京UFJ銀行、トヨタ自動車、日立製作所、電通、JR東海、JTB、博報堂、松下電器産業と続いている。

これらの企業の大半において、組織の中心となって活躍しているのは40代であり、現在の新入社員が20年後のキャリアを見据えて入社を決意したのか疑問とする声もある。

バリバリ活躍できるまで20年がかかるが、20年間、会社と自己の処遇が安定し続ける保証はどこにもない。会社が不安定になったときに、自力で道を切り開けるだけのスキルは必要だ。そう考えれば、若いうちからチャンスが与えられ、前線で活躍できる環境でスキルを磨いた方が得策ではないだろうか。

いずれにせよ、新卒マーケットにおける、単に安定というイメージを追い求める会社選びは、第二新卒マーケットになると、何かやりたいことや目標を実現できるような環境選びへと変わっている。

新入社員が「こんなはずじゃなかった…」なんてことにならないようなヒントは、第二新卒者の転職行動にあるのではないだろうか。

 

■関連情報

○MediaSabor  2007/07/23
「時代の流れと逆行する若者の保守的な職業観」
http://mediasabor.jp/2007/07/post_164.html


○梅田望夫 My Life Between Silicon Valley and Japan
「好きを貫く」ことと大企業への就職  2007/04/02
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070402/p1


○梅田望夫 My Life Between Silicon Valley and Japan
自らの傾向や「向き不向き」に向き合うこと  2007/04/03
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070403/p1


○広告代理店マンが考え抜いた本当の就職活動!
 「企業選びの基準」 2007/01/13
http://ameblo.jp/shukatsu-mind/entry-10023376544.html


○大阪人の独り言 「就職活動の成果を定義する」 2007/07/28
http://yubiyubita.blog113.fc2.com/blog-category-5.html


○FPN 「なぜ若手が会社を辞めるのか? 七五三問題」 2006/12/08
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=1879


○日々発見 「20代の仕事選びへの個人的な意見」 2006/04/04
http://blog.goo.ne.jp/jamsession-jp/e/98b70abbc7d66098756f14b48e7de7e2


○泣き笑い転職道場 「転職 第二新卒のお悩み」 2006/11/07
http://blog.so-net.ne.jp/chizu-yamamoto/archive/20061107

 

○渡邉 正裕  企業ミシュラン ニュース解説編 2007/02/28
 『若者はなぜ会社選びに失敗するのか─企業のウソを見破る技術』発売
http://www.actiblog.com/watanabe/30696


○Type5w4のBook Diary 2007/07/16
 書評:若者はなぜ「会社選び」に失敗するのか
http://bookdiary.livedoor.biz/archives/51137997.html


○枕中洞 「働く」を考えるための本 20冊+α 2006/05/14
http://chinchudo.exblog.jp/3432505/


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