ペットラーのガス室?
- 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長
すでに市場規模は1兆円に届こうかというペット市場ですが、内側には大きな矛盾も抱えています。
ペットフード工業会によると、現在日本で暮らしている犬の数は約1200万頭で、日本人の10人に1人が犬を飼っている計算だといいます。
しかし一方で全国の保健所や動物愛護センターなどの施設で「致死処分」されている犬は、平成17年度が約13万頭で、1日あたり約350頭が炭酸ガスのガス室で「処分」されているのです。ペットショップで“店頭陳列”されている犬も、“賞味期限”が過ぎれば、まっすぐにガス室行きだとか。まるでアウシュビッツです。これを「ヒットラーのガス室」になぞらえて「ペットラーのガス室」と言ってみました。
何万羽のレグホンが飼われている大型鶏卵場は、これまた卵と言う生命商品を大量生産する工場です。われわれが舌鼓を打っているマグロのトロなども、ヨーロッパ地中海の辺りで、まるでフォアグラのように餌を詰め込まれて大量生産されているものが多いそうです。
市場原理の中に、生命も商品化されて組み込まれてしまった時代だといえるでしょう。
しかし見方を変えれば、私たち人間自身が、犬などのペットと同じ立場に置かれていると見方も出来ます。われわれ自身が「ペットラーのガス室」の中に同居しているのです。 市場原理の歯車は、とっくに地球の適正サイズを超えてしまっているのかもしれません。
未知の病気が、67年以降毎年1種類ずつ発生しているそうです。世界保健機関(WHO)は2007年の「世界健康報告」を発表しましたが、そのなかで、SARSや鳥インフルエンザ、エボラ出血熱など新種の病気は毎年1種類ずつ発生していると指摘しました。多分これも急速に進行するグローバル資本主義の結果でしょう。本来、その土地にあれば無害だったものも、大移動社会の到来によって他の土地に運ばれると、たちまち致死的な威力を発揮します。
WHOも、グローバル化に伴い人やモノの移動が激増して、世界各地で過去5年間、約1100件の伝染病の流行があったことを指摘しています。われわれ人間自身が、大量生産社会の過剰に生産されたペットであり、鶏になってしまったと言うことです。
私たちはここで立ち止まり、利益優先主義を越えた市場最適化に、謙虚さをもって真正面から取り組むことが必要になってきています。 経済を追求し過ぎた食卓や農業、人間の傲慢さを映すペットブーム、モノが溢れた住まい、目まぐるしい買い替え需要など、物質主義、生産優先主義の消費構造を改めなければ、私たち人間が「ペットラーのガス室」に入れられてしまうのです。
中国の食品問題が大きく浮上してきましたが、これなども「ペットラーのガス室」問題といえるでしょう。約13億人と言われる巨大な国が、一気にグローバル経済の波の中に放り込まれれば、そこにはモラルなど無視した拝金主義、利益主義が生まれます。何でもいいから、売れれば勝ち、儲ければ勝ちの社会です。
情報の時代は連鎖の時代です。負の情報、負の市場が生まれれば、それはたちまち世界を負のシステムで覆ってしまいます。
幻冬舎から『有害連鎖』(末吉竹二朗)という本が発売されました。「負の連鎖」をしている地球環境と社会や経済の動き、その仕組みをわかりやすく解説しているということです(まだ読んでいません)。「ハリケーン・カトリーナが発生」すると「中国でマイカーが増加」など、他人事だと思いがちな出来事はすべて回り回って自分へ返るという趣旨だそうです。
私たち人間は、知らず知らずのうちに自ら「ガス室」へ入り込んでいるのかもしれません。ご用心ご用心です。
【関連情報】
○内田樹の研究室 「与ひょうのロハス」 2006/06/09
http://blog.tatsuru.com/archives/001772.php
○livedoorニュース 「ペットを見殺しにしないで」 2006/11/22
http://news.livedoor.com/article/detail/2753782/
○Garbagenews.com 2006/07/11
「ペットブームの影で……子犬18匹を捨てた男女を逮捕」
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2006/07/18_4.html
○フジサンケイ ビジネスアイ
「中国の食品安全ヤリ玉…5日からAPEC、声明で調整」 2007/08/30
http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200708300027a.nwc
○イザ! 頂門の一針 「食品問題のさらなる危険性」 2007/09/01
http://chomon-ryojiro.iza.ne.jp/blog/entry/286163
○イザ! 福島香織(産経新聞中国総局記者)
「民以何食為天 食の安全学(1)」 2007/04/18
http://fukushimak.iza.ne.jp/blog/entry/154453/
○DREAM/ING 111
China FreeNHK『問われる中国食品の安全性』 2007/08/29
http://blog.goo.ne.jp/swr3313648mm/e/dd3e5cf17a69ab5c7ae1b19766f4b3bd
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