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300万年生きた人

  • 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長
  • 谷口 正和

ついにわが国の100歳以上の人口が3万人を超えたそうです(正確には3万2295人)。うち女性は2万7682人で85.7%を占め、男性はわずか4613人。ここにも女性化社会の流れが押し寄せています。

これを佐野洋子さんの名作童話『100万回生きたねこ』になぞらえて、100歳×3万人=「300万年生きた人」と言ってみました。300万年分のエネルギーと知恵が充満している社会が来たのです。これを20歳で換算して見るとなんと1500万年分になります。100歳パワーとは、ものすごいパワーであることが分かります。

情報とサービスの時代において、力を生み出すものは「量」ではありません。それは「質」です。これは商品もサービスも、市場も社会も同じ、世界中のあらゆる価値基準を覆す巨大なパラダイムシフトです。

その意味で、100歳×3万人の「質」パワーが与える影響には、予想以上のものがあるでしょう。なにしろ100歳予備軍が「次は自分だ」と目白押しの社会なのですから。「300万年生きた人」はすぐに「400万年生きた人」「500万年生きた人」になるでしょう。

では「300万年生きた人」時代の社会的影響を考察してみましょう。まず当然起きてくるのは「長寿の持つ価値」です。長く生きてきた価値は、当然のことながら継続の価値へと結びつきます。およそ1400年前に法隆寺を建てて以来連綿と続いている宮大工の技や(最後の宮大工と言われる西岡常一さんの『木のいのち木のこころ』に詳しい。一読、その知恵には驚嘆します)、1200年間町衆が引き継いできた京都の祇園祭などに注目が集まるのも、長く続くことの価値にみんなが目覚めてきた証しだといえましょう。

では、いちばん長く続いてきたことは何でしょう。それは「自然」であり「生命」です。太古、まず荒々しいまでの自然があり、それが静まっていく中で、そこに「生命」が生まれ、やっと500万年前に類人猿が生まれ、われわれ現代人の祖先に近いと言われるネアンデルタール人が生まれたのはわずか20万年前だとか。自然と生命は分かちがたく続いてきた結果、今私たちがここにいるのです。人類も地球の生命と歴史の中では、まだまだ若者、新参者です。

日本人の宗教観でいちばん古いものは「祖先崇拝」ですが、顧客の祖先を敬う心が静かに若い人たちの間にも浸透しているようです。神社参りやお祭りに参加する若い人が近年増えているのを感じています。特にお祭りはその地域の文化、歴史と重なって、そのコミュニティの精神的核になりつつあります。

科学が生み出した物質万能信仰は新品信仰、若い肉体信仰をもたらしました。人も機械も新品のほうが価値があるという信仰です。しかし「300万年生きた人」の時代は、見かけよりもコンテンツ。機能よりも性能。極端な言い方をすれば「仙人の時代」とも言えます(芥川龍之介の小説に出てくる仙人や道士のなんと魅力あることか!)。

日野原重明さんの大人気に見るまでもなく、これからは「300万年生きた人」およびその予備軍の中からスターが次々と出てきます。ニューヨークの年老いた日系人ホームレスの画家にでさえ、その生き方に哲学を感じてしまうのです(映画「ミリキタニの猫」)。「300万年生きた人」の生き方は千差万別、ダイバーシティ(多様性)の塊でしょう。彼らはみな日本が終戦を迎えたときに38歳以上だったのです!その前後の話をまとめれば、映画が100本くらい取れるだけの人生エピソードが埋まっているのではないでしょうか。

全員「300万年生きた人」に学ぶ時代です。

 

【関連情報】

▼「100万回生きたねこ」 佐野 洋子

○★☆★はちみつ病★☆★ 
 「100万回生きたねこ」佐野 洋子  2007/07/17
 自分のことしか好きじゃなかった猫が、自分より大切なものに出会い、
 誰かのために泣いたときに、はじめて自分の人生(猫生?)を生きた、
 ということなのかなぁ。
http://blogs.yahoo.co.jp/hachimitsu20022002/49889749.html


○へもへも紹介板 「100万回生きたねこ」佐野 洋子 2006/06/23
 100万回も死んで、100万回も生きたねこがいました。
 王様、船乗り、手品使い、どろぼう、おばあさん、女の子……100万人の人がそのねこを
 かわいがり、100万人の人がそのねこが死んだときに泣きました。あるときねこは誰の
 ねこでもない、のらねこになりました。自分が大好きなねこは、めすねこたちにちやほやされて
 有頂天になりますが、一匹の白く美しいねこに魅せられます。やがて子どもが生まれ、
 自分よりも大切な家族を持つことに。そして……。
http://hemohemohyo.seesaa.net/article/19722478.html


○猫の本で癒されたい 「100万回生きたねこ」 2005/04/01
 タイトルが謎でも中身はじっくりと感動します。
 ラストに持って行くための前半のすり込みが凄い。
http://blog.livedoor.jp/neko_no_hon_de/archives/17757198.html


○とみきち読書日記 「100万回生きたねこ」佐野 洋子 2004/05/14
 ふてぶてしくて、何回死んでも生き返るとらねこは、ある時初めて「自分の生」を
 生きる意味を知る。それゆえに、死の本当の意味を知ることになる。それを読んで、
 私たちも命の意味を知る。嘆き悲しむとらねこの姿は圧倒的!http://yomuyomu.tea-nifty.com/dokushononiwa/2004/05/post_12.html


○関心空間  「100万回生きたねこ」 2004/03/22
http://www.kanshin.com/keyword/437019


○数楽者のボヤキ・ツブヤキ・ササヤキ-中学 数学 道徳 Mathematics
 佐野洋子「100万回生きたねこ」で,人生や生命の大切さを教える 2005/09/06
http://ameblo.jp/masanori432/entry-10004041128.html


○「100万回生きたねこ」試論
 http://homepage3.nifty.com/exajoe/page002.html


○講談社絵本通信 「100万回生きたねこ」佐野 洋子
 (藤井フミヤ氏、柳田邦男氏、西原理恵子氏など、
  各界著名人のメッセージ)
http://shop.kodansha.jp/bc/ehon/topic_02.html#message

 

▼映画:ミリキタニの猫

○映画 ミリキタニの猫 公式サイト
2001年9月11日、世界貿易センターが瓦解する緊張状態のニューヨーク路上。騒然とした周囲をよそに、いつもと同じように平然と絵筆を動かしている男がいた。彼の名はジミー・ミリキタニ、80歳。カリフォルニアで生まれたが、第二次世界大戦中、日系人強制収容所に送られ、アメリカに抵抗して自ら市民権を捨てた。その時から彼の反骨の人生が始まった。
http://www.uplink.co.jp/thecatsofmirikitani/index2.php


○描きたいアレコレ・やや甘口 「ミリキタニの猫」 2007/09/23
 ちょっと前に『ミリキタニの猫』を観た。絵も猫も好きで観たんだけど、
 途中で思いがけず泣いてしまった。えっ、こんなに泣く映画だとは思わなかった。
 ぎゅっと心をつかまれた気がする。
http://kakitaiarekore.blog89.fc2.com/blog-entry-105.html


○クレッシェンド + CRESCENDO + 「ミリキタニの猫」 2007/09/26
 ものすごくインパクトのある映画を観た。日系アメリカ人の路上画家、
 ジミー・ミリキタニの人生を描いたドキュメンタリー作品。
http://cafefran.exblog.jp/7056466/


○naonao 日々のこと 「ミリキタニの猫(ドキュメンタリー)」2007/08/23
 この映画は、映画製作者のリンダ・ハーテェンドフのカメラを通して2000年ごろから
 現在に至るミリキタニを追うドキュメンタリーです。それまで路上で生活していた
 ミリキタニも、2001年に9・11のテロが起こって以来、リンダの計らいでリンダの家に
 居候させてもらい、それからもずっと絵を描き続けてます。
http://blog.so-net.ne.jp/naoazucar/2007-08-17-1


○柳下毅一郎 映画評論家緊張日記 「ミリキタニの猫」2007/04/26
 去年の東京国際映画祭で話題だった作品。いや、これは傑作だった。
 何よりもこれだけの話を74分にまとめて語ってしまうのが素晴らしい。
 いったいどれだけの素材を捨てたのか。
http://garth.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/2006_1711.html

 

▼最後の宮大工 西岡常一(にしおか つねかず)

○suppy's Blog  2007/09/18
 書評「木のいのち木のこころ<地>」小川三夫 
http://blog.livedoor.jp/suppy/archives/51636824.html


○創ること。暮らすこと。 2005/10/27
  『木のいのち木のこころ』 西岡常一<天>小川三夫<地>塩野米松<人>
http://www.graphlabo.com/blog/konatsu/archives/2005/10/post_77.html


○STUDIO-SERENE分室 「木のいのち木のこころを読む」 2005/02/20
http://studio-serene.blog.drecom.jp/archive/1


○西岡常一さんの内弟子 小川三夫氏(鵤工舎大工)記念講演 
 「木のいのち 木のこころ」
http://www.asahi-net.or.jp/~de3m-ozw/0toukai/ishioka/ishi02.htm

 

▼日野原重明

○花・髪切と思考の浮游空間
 「日野原重明氏;戦う勇気より平和を守る勇気」 2007/09/21
http://blog.goo.ne.jp/longicorn/e/f8e6ca331ea998dc372d3d87c2a07e3a


○MoKoのメモリー 癒しの言葉を求めて
 「日野原重明の講演会を見に行って・・・ 」 2007/04/28
http://84482777.at.webry.info/200704/article_9.html


○加賀五兵衛 かがごへい 「日野原重明氏」 2007/09/16
http://blog.goo.ne.jp/kagagohei/e/b913c0e8c364661e544a7aced780c89e


○育児ブログ日記【のびのび☆幼児っ子】
 「十歳のきみへ」 日野原重明  2007/08/10
http://blog.livedoor.jp/akun0917/archives/51038751.html


○薬と縁を切る健康法! 「日野原重明流健康長寿法!」 2006/03/15
http://blog.livedoor.jp/suzukistyle/archives/50485996.html

 

 


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