ドイツ郵政民営化の最新情報─銀行機能拡大を狙うドイツポスト
- ドイツ在住ジャーナリスト
(記事概要)
日本では、郵政民営化の成功例として紹介されるドイツの郵便局「ドイツポスト」 も、近年個人を相手にするリテールバンキングの顧客探しにおわれている。普段郵便局に訪れる9割の人は、郵便貯金以外の銀行に口座を持っているといわれており、郵便物を出しにだけ来ているこれらの顧客が、将来郵便貯金口座を開くようになればと、取り扱い窓口増加に投資を始めた。
そこで中心となるのは首都のベルリン。郵便貯金顧客の8%以上、つまり約50万人がベルリン市民。ベルリンには約850人の従業員が働く75の郵便貯金窓口があり、営業などの約300名を換算すれば、ベルリン市内で郵便貯金に関わる従業員は約2000人にも上る。
Tagesspiegel(ターゲスシュピーゲル)2007年10月13日
http://www.tagesspiegel.de/wirtschaft/Unternehmen-Postbank;art129,2398830?_FRAME=33&_FORMAT=PRINT
(解説)
政府所有企業であったドイツ連邦郵便が、ドイツテレコム(電話通信)とドイツ・ポストバンク(預貯金)、そしてドイツポスト(郵便)に分割、株式会社として民営化され、グループ会社(コンツェルン)となったのが1995年。その後97年には民間文房具店のMcPaperを買収し、2002年には国際宅配便会社のDHLを100%子会社化している。
2回にわたる民営化プロセスを経て、現在では「ドイツポストワールドネット」(グループ構成図:http://investors.dpwn.de/de/investoren/der_konzern/index.html)と称し、傘下に「ドイツポスト」、「ドイツポストバンク」、「DHL」といった3つの事業体を有している。これまで宅配・郵便企業として成功を収めてきたドイツ・ポストであるが、彼らが次に目標とするのは、ドイツポストにおけるリテールバンキングの顧客獲得だ。
銀行間においてこうしたリテールバンキング顧客獲得競争が高まる中、ドイツ・ポストでは、郵送物発送のためだけに郵便局に訪れる顧客を、ドイツポストワールドネットの銀行部門であるドイツポストバンクの顧客としても、やって来てくれることを目指している。
そこで首都ベルリンに多くの顧客を持つドイツポストは、支店増加に投資を始めた。中でも新しい支店内では、チケットオフィスとしての機能、さらには文房具品の販売、宝くじの販売、さらには電力会社との契約締結、ドイツテレコムのサービスや製品の提供もあり、マルチショップを目指している。まずは試験段階として、こうした8つの新型支店を、ベルリン、アウグスブルク、アーヘン、ハノーファー近郊のガルプセン、コンスタンツ、レーゲンスブルク、そしてミュンヘンに設置する予定だ。
さらには、サービス改善によって利用者の増加も見込んでいる。まず問題とされているのは待ち時間の短縮。最高5分の待ち時間になるよう努力したいとのことだ。現在1460万人の顧客数に加え、さらに今年のうちに郵便貯金口座を利用する100万人の新顧客を獲得するのが目標だそうだ。民営化されて日が浅いこともあり、サービスが改善されていないという声もあるドイツポスト。同業者との競争で、充実したサービス内容が実現されれば嬉しい限りだ。
【ドイツの郵政改革関連情報】
○郵政民営化と外国郵政事業比較サイト 「ドイツの郵政事業について」2007/09/09
http://yuseigaikoku.sblo.jp/article/5371854.html
○郵政民営化!─諸外国の状況─ 「ドイツの郵政民営化の流れ!」2007/09/01
http://yuseimineika100.seesaa.net/article/55099580.html
○Watermark 「ドイツ・ポスト・ワールドネットの歩み」2005/08/18
http://d.hatena.ne.jp/umkaji/20050818#p1
○IBTimes 2007-02-14
「ドイツポストグループ会長、DHL、2年で110億円投資」
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/070214/4377.html
○熟年の文化徒然雑記帳 2005/10/16
「ドイツ企業のグローバル戦略・・・日独経済シンポジューム」
http://blog.goo.ne.jp/harunakamura/e/87f26c4e32e323a54176757a51b485ce
○いたって平凡 「ドイツポストバンクに学ぶ郵政民営化」2005/09/14
http://kktsuyoshi.exblog.jp/934182/
【日本の郵政民営化に関する情報】
○経済アナリスト 森永 卓郎氏 日経BP社 SAFETY JAPAN
「郵政民営化の先にある恐怖のシナリオ」 2007/10/22
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/104/index.html
○経営コンサルタント 大前 研一氏 日経BP社 SAFETY JAPAN
小泉改革の目玉「郵政民営化」のなれの果て 2007/10/24
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/a/103/index.html
○livedoorニュース 2007-09-29
『実感なき景気回復に潜む金融恐慌の罠』の真相について
経済アナリストの菊池英博氏に聞く(3)
今、郵政公社全体で368兆円の資金があり、266兆円を国債の購入に充てている。
民営化で200兆円ほどの資金が日本から海外に出ていくと予想され、国債が
売れなくなれば、長期金利が上昇し、大量の国債を保有している日本の大手銀行
では多額の国債評価損が発生し、大規模な金融不安が起こる。
http://news.livedoor.com/article/detail/3325344/
○コンサルタント道具箱 「ゆうちょ銀行」 2007/10/09
だいたい、郵政民営化をなぜする必要があったのか、国民はどこまで
理解できてるのであろうか?民営化によって税金の無駄を省くためと
説明されているが、そうではない。
http://naka68.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_cc27.html
○アッテンボローの雑記帳(郵便局員の気ままな日記) 2007-07-21
「ゆうちょ銀行は多分破綻するのではないか」
http://rounin40.cocolog-nifty.com/attenborow/2007/07/post_cfe1.html
○ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 2007/09/15
郵政民営化の後に訪れる日本の「サブプライム問題」
http://amesei.exblog.jp/6147384/
○文藝春秋「アメリカの日本改造プログラム」関岡英之(ノンフィクション作家)
http://www.bunshun.co.jp/jicho/nihonkaizou/nihonkaizou.htm
○深夜のNews 『年次改革要望書』というものがある 2004/08/17
『年次改革要望書』とは、日本の各産業分野に対してアメリカ政府が機構改革や
規制緩和などの要求事項を通達する文章である。
http://night-news.moe-nifty.com/blog/2004/08/post_9.html
○そぞろ日記 「拒否できない日本─アメリカの日本改造が進んでいる」2005/10/11
http://miyau.cocolog-nifty.com/sozoro/2005/10/post_87d6.html
○Life is beautiful: 米国政府の「年次改革要望書」を読む 2005/08/28
http://satoshi.blogs.com/life/2005/08/post_17.html
○Clala-Flala「拒否できない日本」(関岡英之)2005/09/16
http://clala.lolipop.jp/blog/2005/20050916-2346.html
○ぱのらまさんの日常雑記 「年次改革要望書と郵政民営化」2005/08/24
http://d.hatena.ne.jp/panorama/20050824
○フジサンケイ ビジネスアイ 2007/10/25
「カード各社、ゆうちょ銀めぐりさや当て激化…ノンバンク再編も」
http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200710250026a.nwc
○フジサンケイ ビジネスアイ 2007/10/06
「郵政民営化の立役者・竹中平蔵慶応大教授に聞く」
http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200710060029a.nwc
○CNETブログ インフラコンサルティングの最前線
「システム前線異常アリ!ゆうちょ銀行の裏側」2007/10/09
http://rblog-ent.japan.cnet.com/0040/2007/10/post_d153.html
○とむ丸の夢「民営化郵便局のことを、どれだけ知っていますか」2007/10/09
http://pokoapokotom.blog79.fc2.com/blog-entry-448.html
○Munchener Brucke 「郵政民営化 白けまくりの発足」2007/10/02
http://d.hatena.ne.jp/kechack/20071002/p1
○オルタナティブ通信 「郵便局=北朝鮮」 2007/09/12
http://alternativereport1.seesaa.net/article/54997634.html
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