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日本初、世界最大の飛行船「ツェッペリンNT」で東京上空クルーズ

 宣伝メッセージをペインティングした飛行船が、上空をゆったりと横切っていくのを目にしたことがあるが、ついに国内初の本格的な「飛行船遊覧クルーズ」が東京上空で実現する。JTB西日本が日本飛行船と旅客総代理店契約を結び、10月25日から販売を始めた。

 日本飛行船が所有する準硬式飛行船「ツェッペリンNT」=写真=は、全長75・1メートル、最大幅19・7メートルで世界最大。全長75メートルはジャンボジェット機の70メートルを大きく上回る。客室のゴンドラは全長10・7メートルで最大12人乗りだが、乗客定員は8人。巡航高度は300―600メートルで、乗客用のゴンドラはエンジンから離れているために、ヘリコプターと違って通常の会話ができるほど静かという。


日本飛行船が所有する準硬式飛行船「ツェッペリンNT」 

 「ツェッペリンNT」は、2004年6月に日本飛行船がドイツのツェッペリン社から購入した。今年6月に国土交通省から航空運送事業許可を取得するまで「YOKOSO!JAPAN」の広告宣伝や観測などで利用されてきた。同型の飛行船は世界に3隻のみで、残りの2隻はドイツでの観光遊覧や、南アフリカでの資源探査に使用されている。

 飛行船といえば、タイタニック号の沈没事故と並んで、20世紀の2大惨事といわれる1937年のヒンデンブルク号の爆発炎上墜落事故を想起されるかもしれない。当時の衝撃的なニュースフィルムが目に焼き付いている人も多いだろう。

 そのヒンデンブルク号は1936年に建造。全長245メートルで100人乗り。空の豪華客船と呼ばれ、個室の客室や食堂、シャワー室やトイレが完備され、展望室、読書室、喫煙室まで備わっていた。極めつきはラウンジにはグランドピアノが置かれていたという徹底ぶり。「ニューヨークのエンパイア・ステートビルが飛行船の係留マストの役割を想定して建築された」(渡邊裕之日本飛行船社長)ことはあまり知られていない。

 しかし、同号の原因不明の炎上墜落で、オーロラやシベリアの大自然、ニューヨークの摩天楼を優雅に眺め、栄華を極めた“豪華客船”としての一つの時代が終わる。

 ヒンデンブルク号はガス袋(気嚢)に水素ガスを使用していたが、最新型の「ツェッペリンNT」は浮揚ガスに不燃性のヘリウムを使用しているため、爆発の危険性がないという。名前の「NT」はニューテクノロジーで、最新の素材と技術を融合して21世紀型の飛行船として登場した。日本飛行船の杤木一郎会長は「航空機の中で、最も安全な飛行船の良さを一人でも多くの人に知ってもらいたい」と安全性を強調する。

 さらに、渡邊社長は「ドイツでは2001年から商業運航を開始し、6万8000人が搭乗した。遊覧飛行には常時1万人以上の先行予約が入っている状態」と、その人気ぶりを紹介した。ツェッペリン社は、「ツェッペリンNT」で60数年ぶりに建造再開したが、将来的には85人乗りの大型飛行船の建造も計画している。

 「ツェッペリンNT」の東京周遊コースは、11月23日から就航する。乗客は埼玉県の桶川をスタートし、池袋、上野、浅草、汐留、六本木、渋谷、新宿、桶川と巡る90分のコース。設定料金は平日のデイフライトが12万6000円、金・土曜のナイトフライトが14万7000円――など。クリスマスフライトや初日の出フライトなども設定している。


東京上空を飛行する「ツェッペリンNT」
(10月23日、六本木ヒルズ森タワー屋上から。撮影=増田剛)

                         

 90分間で13万円前後の価格は、ハワイ旅行に匹敵するし、格安ツアーではヨーロッパ旅行も可能な値段だ。消費文化が爛熟した東京とはいえ、ドイツのように1年先まで予約待ちの状態になるか? それは、飛行船で遊覧クルーズという話題性が命運を握る。東京では観光客だけではなく、ビジネス利用として取引企業や、お得意様のご招待、インセンティブ(報奨)での活用を睨む。

 JTB西日本の鈴木孝三社長は「飛行船遊覧クルーズによって、新たな地域の魅力開発につなげていきたい。まずは関東、関西で定着させたい」と話す。関西では来年3月から5月にかけて就航する計画で、京都の紅葉や奈良県吉野山の満開の桜などをあげながら、「日本各地のベストシーズンに飛行船を飛ばしたい」と夢を語る。関東・関西の両コースを合わせて1000人の販売を目指す。
 
 90分で10万円を軽く超え、ペアなら30万円の料金にめまいがした人には、日本旅行が企画した「ヘリクルーズ」シリーズがおすすめ。「ランチ&Dayクルーズ」舞浜・東京ドリームコースでは、舞浜のホテルオークラ東京ベイでランチを食べたあと、浦安ヘリポートから約15分間のヘリコプター遊覧で、料金は1人1万800円。10月19日から2008年3月31日まで毎日運航し、クリスマス期間限定の特別企画も用意している。

 もっと安上がりに済ませたいならば、東京タワーや六本木ヒルズの展望室で自ら動き、「あたかも飛行船に乗っている気分に浸る」という手もないではないが……。

 


【関連情報】

○ASCII.jp  2007/10/24
 【動画】飛行船で優雅に空中散歩!「飛行船遊覧クルーズ」が運航開始!
http://ascii.jp/elem/000/000/077/77763/index-3.html


○温泉旅行ニュース”温泉旅ねっと”2007/11/01
 JTBの「飛行船遊覧クルーズ」が大人気 予約殺到
http://onsentabi.way-nifty.com/news/2007/11/jtb_9be2.html


○GIGAZINE 2006/10/04
 世界最大の飛行船「ツェッペリンNT号」に10m×30mのバナー広告
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20061004_zeppelin/


○紺碧の海 「ツェッペリン世界周航達成記念日」 2007/08/29
http://www.shipboard.info/blog/archives/2007/08/post_1153.html


○『熱都力学』動画広告流す飛行船「浮遊する映像広告」2006/06/26
http://morningfire.at.webry.info/200606/article_9.html


○Novo dirigível A-170 Multimídia Space Airships(YouTube映像 01:51)
 (動画広告流す飛行船:「ツェッペリンNT号」ではありません)
http://jp.youtube.com/watch?v=2t253vJ4Orc


○GIZMODO  「空中に設置される発電所」 2007/04/03
 高いところは地上より強い風が吹いているので、ここで風力発電をして地上に
 電気を送ろうという、そういうコンセプトです。  
http://www.gizmodo.jp/2007/04/post_1303.html


○六本木経済新聞 2007/10/23
 飛行船「ツェッペリンNT」がヒルズ上空に─11月・運航開始
http://roppongi.keizai.biz/headline/1192/index.html


○フジサンケイ ビジネスアイ 2007/10/24
 「ツェッペリンで都心を空から…日本初の飛行船遊覧クルーズ」
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200710240017a.nwc


○関心空間 「飛行船遊覧クルーズ in TOKYO」 2007/11/03
http://www.kanshin.com/keyword/1262121


○RC airship, RC blimp. aerial view spectacular(YouTube映像 04:41)
http://www.youtube.com/watch?v=LgRTwA3JQkM

 

 


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