Entry

NO STYLE 広告論 YouTubeで見る! 2007世界のCM“裏”ベストテン(後篇)

前回に引き続き、筆者が勝手に選ぶ「世界のCM“裏”ベストテン」をお届けします。今日は5位から1位までの発表。テレビCMというより、今年話題になったバイラルCM中心のセレクトになりました。

●5位 Ray-Ban「Catch Sunglasses」

http://jp.youtube.com/watch?v=-prfAENSh2k

驚異の“グラサン顔面キャッチ”。これはスゴい。ワザとして。ホントにこんなことできるのか。「グラサンに細工?」とも一瞬思ったが、そうだったとしても、走っているクルマに向かってサングラスを投げつけるシーンはちょっとビックリする(それと同時に、この場面のスローモーション映像がちょっと怪しいような……)。視聴数は300万超。

前に紹介した“メントス×コーク”の水芸シリーズ(http://jp.youtube.com/watch?v=hKoB0MHVBvM)もそうだったけど、YouTubeの世界では、こういったビックリ映像が話題を呼びやすいようだ。世界中どこでも、たぶん家庭や職場の“話のタネ”として見られているのだろう。その意味では国境を越える偉大な“小ネタ”だが、難点を言うなら、特にサングラスの売れゆきアップにつながらなさそうってこと(そのつもりもないだろうが)。

メントスと違って、自分でやってみる気がおこらない!(たぶん) どっちかと言うと、最後に「get a girl friend」(彼女作れよ)のタグラインを入れて、AXEのコマーシャル(前回9位として紹介)にしたほうが効き目あったかも。続篇は以下で。

http://jp.youtube.com/watch?v=P5DjZ0Q7G98


●4位 SONY BRAVIA 「PLAY DOH」

http://jp.youtube.com/watch?v=CLUAbkRUvVQ

今年、この連載でもさんざんネタにさせてもらったBRAVIAの待望の第3弾。第1弾のスーパーボール、第2弾のペンキがいずれも超話題になっただけに、SONYとしても外せない3作目なのだが、今度はそう来たか! コマ撮りのクレイアニメ。NYの雑踏のあいまを何百匹かのカラフルなウサギが跳ね回る映像制作には、40人のアニメーターが投入され、10万枚のスチール写真が使われているという。

もちろんウサギもCGではなく、ほんまもんの粘土。演出は、ナイキ「tag」やプレステ「MOUNTAIN」なども手がけるフランク・バッジェンだけあって、映像の仕上がりはパーフェクト! 音楽もローリング・ストーンズの「She's a rainbow」と、期待を裏切らない作品になっている。果たしていくらかかったのか? メイキングは以下の公式サイトで見られます。

http://bravia.sony.eu/bravia.html

このサイトと見比べて感じたのだが、やっぱりYouTubeは画像が粗いですね。今後の進化がそれを解決するのかもしれないけど、現状こういった“映像作品”を味わうには適していないと言えるだろう。

ほかの人気作と同様、複数投稿されているが、視聴数はいずれも、数万から数十万どまり。それでもすごいことはすごいが、見られた回数に限って言えば、ブラビアがさっきのグラサンに完全に負けてしまうところが、YouTubeという“メディア”の特徴をよく表していると思う。できることならこういうCMは、大きめの、それも色がキレイに出るスクリーンで見たいものだ。それこそ、ブラビアみたいなちょっとお高めのテレビで。

このように「商品の品質に見合った色鮮やかなステキ映像を流すブランド」というイメージがますます浸透しつつあるブラビアだが、残念ながらこの第3弾には、どす黒い噂も。すでに多くのブログ等でささやかれている“パクリ疑惑”だ。

Kozyndanというアーチストのイラスト作品に、このアイデア(NYらしき都会の街中に大量のウサギが現れる)が存在するのである。しかも、Kozyndan自身のブログ(http://kozyndan.livejournal.com/113874.html)によれば、2年前、制作会社のパッション・ピクチャーからコンタクトがあり、この作品を含むポートフォリオを渡した後、何の音沙汰もなかったとのこと。そして、まさにこのパッション・ピクチャーが今回の「PLAY DOH」篇を制作しているところを考えれば、ブラビアがKozyndanの作品に何らかインスパイアされるところがあったのは、ほぼ間違いないと見ていいだろう。うーん……。

広告における“パクリ”は、なかなか複雑な側面があり、少数の人びとが享受している芸術表現を大衆化(ブレイク)させるといったメリットもときにはあるので、一様に断罪するのもちょっと違うと思うのだが、今回は経緯が経緯だけに、そしてその映像がすばらしいだけに、後味の悪いものがある。

それはさておき、グローバル商品であるブラビアは、世界中で「Color like no other」をテーマにした様々なバージョンのコマーシャルを作っている。リオのカーニバルや噴水なんかが出てくる日本オリジナルもご覧になったことがあるだろう。毎回世界的に話題になるこのシリーズ(スーパーボール、ペンキ、クレイアニメ)は、ヨーロッパで流れているものだが、どこかの地域(エジプト?)でオンエアされたピラミッド篇もなかなか見応えがあったので、補足的にご紹介しておこう。

http://jp.youtube.com/watch?v=zW--lAtwyEo


●3位 Blendtec 「Will it Blend?」

http://jp.youtube.com/watch?v=B8H29jU8Wrs

ミキサー会社による、通販番組のパロディ風実証広告。クレジットカードやCDはいいとして、ゴルフボールにiPod、iPhoneまで粉砕する(どちらかと言うと“粉末”になってしまう)なんて、一体どんなミキサーなんだ! アイデアも面白いが、まず商品がすごすぎる。

YouTubeには様々なタイプがアップされている(なぜか画質もすごくいい)が、このiPod篇だけでなんと視聴回数470万!(12月末現在)。シリーズの別タイプも含めると、一体どれだけの人がこれを見たのだろう? ひょっとすると一千万規模に上るのではないか(同じ人が複数回見ているとしても)。一度見たら忘れられないインパクト。これを見ると「ミキサーと言えば、Blendtecでしょ」みたいに妙に納得してしまう。すごいことずくめのBlendtecなのだが、この性能だけにお値段のほうもけっこうすごそうだ。

ちなみに「Will it Blend?」サイト(http://www.willitblend.com/)では、家庭で真似してはいけない例(「Don't Try This @ Home」)として、約60の面白い“ブレンド実験”が紹介されている。


●2位 Smirnoff 「Tea Partay」&「Green Tea Partay」

http://jp.youtube.com/watch?v=PTU2He2BIc0

http://jp.youtube.com/watch?v=GWzNiUXTh7E

この“裏”ベストテンでは、メディアサボールの連載で今年紹介できなかったものをランキングに入れているのだが、これだけはもう一度ふれておきたい。それくらいよくできた作品。「Tea Partay」のほうはちょっと古くて、昨年の秋以降に流行っていたようだが、今年流れた新バージョンが「Green Tea Partay」。いずれも、400万近い視聴数に達している。

企画としては、ギャングスタ(黒人のウハウハラップ)をプレッピー(白人のおぼっちゃん)たちが真似るというものだが、リリックや出てくるアイテムなどディテールが凝りまくっているようだ。“いるようだ”と幾分自信なさげなのは、スラング(というより英語)や向こうのHIP HOPカルチャーに明るくないからだが、ウェブ上の情報も総合した上でなんとか解説を試みてみると──

「Tea Partay」篇

いかにも育ちのよさそうなおぼっちゃんが、仲間たちといいクルマに乗って登場。エリート層が多数暮らすニュー・イングランド(ニューハンプシャー州やバーモント州)の高級住宅街を優雅に流す。彼らのファッションと言えば、爽やかでパステルカラー調の色合いも上品な英国風Poloルック。途中で、頭の切れそうな女数人をピックアップし、向かった先はテニスコート ─というように典型的ギャングスタラップのPVとは、乗ってるクルマ、住んでる場所、付き合ってる仲間や彼女のタイプ、遊び場など、すべてを“真逆”にする徹底ぶり! 一瞬、靴下をはいていない足下のクローズアップカットなどもインサートされたりして、こういうのも何か意味があるんだろう。 

歌詞のほうもそんなテイスト。「ヨットに乗れば、馬にも乗る。食事は毎回フルコース。この国を仕切ってるのはオレの家族」などと、イヤミなWASPっぷり全開である。でも、若い彼らなりの反抗心&ハングリー精神は持ち合わせているようで、どうやらそこがTea Partyではなく、あえて“Tea Partay”と呼ぶゆえんらしい。パーティーじゃないんだ、“パーテイ”なんだYO、チェケラッチョ! 

そんなイケてるナイスガイが、みんなでワイワイやるときに飲むのが、スミノフの低アルコールシリーズ「Raw Tea」(レモン、ピーチ、ラズベリー)というわけ。そこが何事もライトないまどきだ。ピュア・ウオッカを売りにするスミノフらしくない低アルコール飲料(=おぼっちゃまでも飲める)にピッタリというか、商品と時代の気分をうまく面白く表現している映像ということがおわかり頂けるだろう。

「Green Tea Partay」篇

「Raw Tea」シリーズの新製品として発売されたのが、なんとウオッカと緑茶をブレンドした「Green Tea」。そこで、スミノフが制作した新たなPVがこれ。前作に登場した東海岸のラップグループ「Prep-Unit」にぶつける形で、今度は西海岸に「Boyz N The Hillz」というライバルグループが結成された。

ニュー・イングランドのおぼっちゃんに対抗して、こちらに登場するのはビバヒルのイケメン(VIP)たち。西海岸風のサウンドにのせて、プールの前で焼けた肌と厚い胸板をこれ見よがしに見せつけている。ヤシ並木のストリートを行くリムジンなど、まんまな感じは笑えるが、前作に比べるとちょっとトーンダウン気味な印象も。やはり“緑茶”とラップの組み合わせは無理があったのかもしれない。

しかし、どちらも商品は売れただろうな、という察しはつく。若者がどんどんアルコールを飲まなくなっている時代に、こういう“遊び心”のあるブランドは強い。

さて、かなり長々とお届けしてきたが、次で最後。1位はこれでいきます!


●1位 Cadburys Dairy Milk「ゴリラドラマー」(チョコレートのキャドバリー)
http://www.youtube.com/watch?v=CbLr2NEV_7o

未見の方は是非。これは余計な説明が一切いらない。ゴリラいけてます。「本物なのか?」とか「チョコレートとどう関係がある?」みたいないくつかの重要な謎は別として。

パロディ作品としてワンダーブラは秀逸。こちらはちゃんと商品にオチてる。しかし、今回唯一YouTubeで発見できず。残念! 以下でどうぞ。

http://www.collegehumor.com/video:1789087

 

【関連情報】

○MediaSabor  2007/12/07
  NO STYLE広告論 YouTubeで見る! 2007世界のCM“裏”ベストテン(前篇)
http://mediasabor.jp/2007/12/no_styleyoutube_2007cm.html


○Web担当者Forum  2007/12/13
 「53%のユーザーが動画CMに影響されて商品購入を検討する/
 インターネット広告に関する調査」
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2007/12/13/2326


○アンモナイト 「キャドバリーのゴリラ」 2007/09/10
 夫は、「本物のドラマー+ゴリラの着ぐるみ」派で、息子は、「ドラマーが
 叩いたのを、あとで特殊効果でゴリラに変えたんだ」論。私は、「本物の
 ゴリラをドラマーに仕立てるべく特訓したんだ」論。(←ない、ない…(笑))。
http://tempest.blog3.fc2.com/blog-entry-1597.html


○日々嘉綴 総合
「SONY BRAVIAの新CMはパクり?」 2007/10/15
http://www.mediapicnic.com/hibikate/archives/2007/10/bravia1.html


○東京右往左往 「Will It Blend?」 2007/07/22
 Blendtecと言えば、スターバックスでプラペチーノを作るのにも使っている
 強力ミキサーの会社。広告予算が潤沢にあるわけでなく、ダメもとyoutubeで
 ビデオを流してみたら、そのチャレンジ精神ととぼけた演出で大評判に。
http://tokyo.de-blog.jp/main/2007/07/will_it_blend.html


○Teddy's Household 「Will It Blend?」  2007/08/07
 アメリカの Blendtecというミキサーなどを作っている会社が、YouTubeで
 Will It Blend?というシリーズのマーケティングで大成功したそうです。
 YouTube 効果で売り上げは5倍に伸びたそうです。
http://yaplog.jp/teddydale/archive/338


○tknr.com 「will it blend? ─アホのできるかな─」2007/10/17
http://tknr.com/blog/index.php?e=866


○アドマン2.0@デキる広告マンの作り方 2007/11/03
 「バイラルムービー(ブランディングムービー)をたくさん集めてみました」
http://ameblo.jp/adman/entry-10053793879.html

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/511
will it blend? ?アホのできるかな? 2008年06月12日 18:46
http://www.willitblend.com/ blendtec社のミキサーTotal B...