NO STYLE広告論 YouTubeで見る! 2007世界のCM“裏”ベストテン(前篇)
- 広告批評 編集部
「広告批評」11月号で、「カンヌ広告祭1998─2007」という特集を組んだ。この10年の世界の名作がCD-ROM付きで見られるとあって、ご好評頂いているようだ(編集作業は大変でしたが)。一方、「広告批評」では、毎年年末に日本の「広告ベストテン特集」を組んでおり、今年(2007年版)もなかなか見応えのあるラインナップになっている(12月4日発売)。
そこで今回は、やや強引なドッキング企画ではあるが、勝手に「2007年世界のCMベストテン」を試みようと思う。カンヌでゴールドを取ったりするような正統派は、すでにメディアサボールでも紹介してしまったので、ここではもう少しマニアックに“裏ベストテン”な並びにしてみたい(YouTubeで見られるものに限定)。“A面”にもご興味持っていただけるようであれば、本誌(11月号)のほうも是非!(http://www.kokokuhihyo.com)
では早速。10位から。
●10位 MASTERFOODS/SKITTLES SWEETS(2006─)
http://www.youtube.com/watch?v=7HEF49nMsM8
http://www.youtube.com/watch?v=GEsqELX5e4o&feature=related
アメリカで大人気のCMシリーズ。カンヌ等の国際広告祭ではそんなにいい賞に輝いたりはしないが、単純に笑えて広告人にもファンが多い。TBWAグループのクリエイティブのトップである、ジョン・ハント氏も「広告批評」10月号で、「広告が楽しいものだと思い出させてくれるCM」とコメントしていたが、まさにその通りのエンターテインメント小品。
ちょっと不条理マンガみたいなノリでもあるが、聞いた話によると、こういう“笑い”はアメリカでは案外少ないそうだ。タイプ数が多いが個人的には「トレード篇」が好き。ヘンな声で鳴くウサギがキュート。天井からSKITTLESが漏れてくるタイプも面白い。榎本俊二のマンガのキャラクターみたいでグー。
※ほかのバージョンもSKITTLESで検索してみてください。
これとちょっと似たノリのお菓子のお笑いCMでは、「もしお母さんが男だったら食べさせてくれるスナック」とのふれこみのcombosシリーズも要チェック!
http://www.youtube.com/watch?v=Zr8hmrxkX0c
●9位 AXE(アックス) 「彼女作れよ」シリーズ
今年、満を持して日本上陸したAXE。イギリスやアルゼンチンといった“男性用デオドラント先進国”同様、日本でも「AXE=モテる」イメージ全開のフェロモン系CMを連発している。海外には過去、「getting dressed」(http://www.youtube.com/watch?v=n6Xhgfme-xU)
といったロマンティックな名作もある一方で、南アフリカではこういった迷作もオンエアされていた、ということでご紹介したいのが次のコマーシャル。
http://www.youtube.com/watch?v=_LqG1dNVvjo
「こんなバカなことしてるくらいなら彼女作れよ」というメッセージだが、この“バカなこと”の中身が、ちょっとあってもおかしくない感じで笑いを誘う。このシリーズでは、昨年の「コイン投げ」(http://www.youtube.com/watch?v=nDiFqqoXkXs)
も面白かったが、バカバカしさでは、この「水芸篇」が上回る。モテる男だらけのAXEのCMに、AXEを吹き付けてもモテなさそうな男が出てくるのがいい。残念ながらカンヌではショートリストどまりだった。
AXEだけでなく、カンヌグランプリのダヴを始め、今年は世界的にユニリーバのCMが元気だったので、補足的にもう少し紹介しておこう。アルゼンチンで流れているIMPULSE(AXEの女性版みたいな商品)もなかなか評判がよく、上映の度に会場でも笑いが起きていた。セリフものなので字幕がないとちょっとわかりにくいのだが、例えば次の「ダイナー篇」などは、スペイン語を知らなくとも、なんとなく空気は伝わってくる。
http://www.youtube.com/watch?v=WyH2Z3_02yA
一応解説。とある女と一夜を共にし旅立った男。しかし、彼女のことがどうしても忘れられず、列車を途中でおりて、彼女が働くダイナーへダッシュ。もう会えないと思っていた男がこちらへ走ってくるのを目にして、女がドキドキしながら待っていると、彼は開口一番「君とは一夜限りの関係なんかじゃない……。もう二、三回はヤル価値がある」とのたまう。
「ハッ?」という女の表情が映し出されたあとで、「わかるよ、その気持ち」とうなずくオヤジ二人がいい味出してる。YouTube上ではシリーズ新作も公開されているが、いずれも「現代において、ロマンティックな出来事はなかなか起こらない(だから、この商品を使ってね)」というメッセージに説得力を持たせるように落としこんでいる。
同じくユニリーバ・LUX SOAPの「NEON GIRL」も、賞で言えばブロンズどまりだったが、今年印象深かった一作。11月号でこれを手がけたディレクターのダニエル・クレイマン(XBOX「Champagne」、ギネス「noitulove」を手がけたイギリスの巨匠)に取材したが、その際彼は、最初このネオンボードは本物を作ろうとしたのだが、「完成まで8年かかる」と言われて断念したと語っていた。結局CGを使ってワンカットで撮っているかのように見せることにしたそうだ。最初からCGでやろうとせず、とりあえず“本物”を作ろうとするクリエイティブ魂に感服だ。
http://www.youtube.com/watch?v=3DDBwwDr36I
(参考作品)
http://www.youtube.com/watch?v=1t4sdgvy-pk
http://www.youtube.com/watch?v=mLPj8cgDOVk
●8位 Sky「Simpsons」
YouTubeのヒット作。アニメ「Simpsons」のよく知られた冒頭シーン(ホーマー一家が「Simpsons」を見るために、学校やら職場から家にかけつける)を実写化した映像がとにかくよくできている。登場人物の動きや背景はもちろん、カメラワークからカット割りまでアニメそっくりで話題になり、YouTubeでの視聴回数も今年の夏の段階で1600万を超えていた。いまは同じ映像が複数投稿され、さらにすごいことになっている。
http://www.youtube.com/watch?v=brh6KRvQHBc
この演出を手がけたディレクターのクリス・パーマーもイギリスの実力派。adidas「ベッカムとウィルキンソン」なども彼の仕事だ(http://www.youtube.com/watch?v=vMeF2vSug30)。
●7位 DORITOS
http://www.youtube.com/watch?v=kNxgxF-7SfA
DORITOSはアメリカではメジャーなスナック菓子だが、このCMは今年スーパーボウルの中継内でオンエアされ、一躍話題となった。一見、特に制作費もかけていなそうだし、それほど笑えるものでもないにもかかわらず。
スーパーボウルは、毎年、全米約5000万人が見るとも言われ、その30秒スポットは一説によれば250万ドル(約3億円)もするらしい(高いところと安いところがあるのだが)。そこで、制作費をたっぷりかけ、一流クリエイターを起用して作った入魂のスペシャルCMを各社競うように流すことが恒例となっている。
ところが、今回DORITOSがオンエアしたこのCMは、視聴者が作った手作りコマ―シャル。一般から30秒CMを募集し、その優勝作品を“ここ”に投入したのである(つまり、結果発表もこの日)。CMが面白いかどうかは別として、これは前代未聞の試みであることに違いない。「TIME」誌の「パーソン・オブ・イヤー」に“YOU”が、「Ad Age』誌の「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」に“Consumer”が選ばれる(共に2006年の年末に発表)という時代を象徴する出来事であった。
ちなみにDORITOSはウェブサイトも充実している(http://www.snackstrongproductions.com)ここでは、ミッシー・エリオットのアドバイスを受けながらミキシングを楽しめるコーナーやXBOXとのコラボレーションコーナー、街で出会った人たちにDORITOSの新製品を試食してもらい、ネーミングを考えてもらうコーナーなど、ユーザーの“参加性”が高いコンテンツが用意されている。
http://promotions.yahoo.com/doritos/では、スーパーボウルでオンエアされたCMや最終審査に残った優秀作4点が見られるだけでなく、ビデオ編集ツールを用いて、それらの映像に手を加えることができるようになっている。いずれのコンテンツもお菓子の広告にふさわしい“遊び心”が溢れている。
ちなみに、YouTubeはスーパーボウル後に、どのCMに人気が集まったかを投票してもらう「Supervote」を実施したという。その一位はダントツで、以前もご紹介したCoca Cola「Videogame」だったようだ(http://www.youtube.com/watch?v=7wt5FiZQrgM)。
よい悪いは別として、広告への視聴者参加もここまで進んだのかという感がある。
●6位 Steinlager「Win Nick's Life」
デビッド・ドロガ(droga5)は、大統領専用機AIR FORCE ONEにスプレーで落描きするという、大胆不敵な一部始終(実はヤラセ)をドキュメンタリータッチの映像で捉えたマークエコー「Still Free」(http://www.youtube.com/watch?v=FgnEGIRYC98)や「世界水の日」に、NYのレストランで出された水道水に1ドル課金して、集まったお金をUNICEFに寄付、資金は世界の水に恵まれない人々をサポートするために用いられるという「Tap Project」(http://www.youtube.com/watch?v=Uzs-Lm0AvRU)など、話題のキャンペーンを連打しているアメリカの人気クリエイターである。
そういった仕事とは別に、彼が今年手がけたキャンペーンが、Steinlager「Win Nick's Life」。元々は、Club 18-30 holiday(http://www.youtube.com/watch?v=gzbgzFtj2FU)
といったおふざけが大好きなクリエイティブ・ディレクターだけあって、このビール会社の広告は、その点でなかなか気合いが入っている。
ニュージーランドのビール(Steinlager)のアメリカ輸出を開始するにあたり、マーケティング担当者NICKが渡米するから、本国(NZ)での彼の席が空く。つきましては、彼の替わりに、というか“NICK本人”としてSteinlager社で働いてくれるアメリカ人を募集するというキャンペーンなのだ。
優勝者(?)は彼の家でその両親と暮らすことになるという。募集コマーシャルとして、職場や家族など、NICKのニュージーランドでの暮らしぶりを事細かに紹介する映像が作られ、同社のウェブサイトなどで流された。一体どこまで本気なのか。実際に人が派遣されれば、その日常も“ウルルン的”に切り取られ、また広告化されたりするのかもしれない。
http://www.youtube.com/watch?v=43VD78RIYIk&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=wWcYIfVOnSM&feature=related
“裏ベストテン”と言いながらも、挙げていくと結構濃い並びになってしまった。次回は5位から1位を発表します!
【関連情報】
○本は好きだけど読書は嫌いな咎人の記録 「広告批評11月号」2007/11/12
http://plaza.rakuten.co.jp/shishotsukasa/diary/200711120000/
▼クリエイター デビッド・ドロガ関連
○MediaSabor 2007/04/09
NO STYLE 広告論 「STILL FREE」は広告に自由をもたらすか
STILL FREEを手がけたクリエイティブ・ディレクターのデビッド・ドロガは、
次のように語っている。「テレビを見ない、いまの若者のキーワードは
Discovery(発見)、Sharing(共有)、そしてDebate(議論)の3つだと思ってる。
だから彼らの手でメッセージを市場に広げてもらおうと考えたわけだ」
http://mediasabor.jp/2007/04/no_style_still_free.html
○ecogroove エコナコト 2007/07/06
「レストランの水が有料に?!(カンヌ2007より)」
イケてるレストランを巻き込んだり、カッコいいブランドロゴを作ったりと、
細かい部分まで練られていて、クールでありながら効果もきちんと伴っている
ところがこのキャンペーンのすばらしいところ。
http://www.econakoto.net/ecogroov/article/28
○ニューヨーク・スマイル! 2007/03/22
「1ドルが世界の子供を救える日!-World Water Day」
http://chouchony.exblog.jp/6640541/
○Social Market press 「Tap Project2」 2007/05/17
http://www.social-market-press.jp/column/24/index.html
▼AXE関連
○インサイター 2007/02/18
エロエロ広告で有名なボディスプレー「AXE」が日本上陸
http://blog.livedoor.jp/insighter/archives/50937580.html
○livedoorニュース 2007/09/22
【独女通信】独女流「モテスプレー・AXE」の正しい使い方
http://news.livedoor.com/article/detail/3307430/
○エキサイト ウェブアド タイムス 2007/07/04
「ビリーもびっくり?THE AXERCISE -THE AXE EFFECT-」
http://www.excite.co.jp/webad/news/rid_511/
▼スーパーボウルCM、DORITOS CM関連
○CNET 2007/03/22
「フリトレー、ウェブを利用して広告制作--拡大するユーザー生成型コンテンツ」
Frito-Layへの応募総数は1000件以上にも及び、オンラインで公開された応募作品
はスーパーボウルの週の間に6億回も視聴され、同コンテストは、多くのニュース報道に
取り上げられた。放映中にアナウンサーらがDoritosを実際に食べたテレビニュース番組
などもあった。
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20345595,00.htm
○PatioTalk 「2007年スーパーボウル広告の最終報告書」2007/02/28
Super Bowlの広告主はオフラインとオンライン広告を統合しようとしているが、
かなりの数の広告主は機会を喪失し、必要な全てのエレメントを統合し、
消費者の興味、BuzzをWebトラフィックへ誘導していたのは少数派
http://patiotalk.jp/archives/02_advertising/200702/28_001956.php
○行け行け!LAビジネスウォッチャーズ
「スーパーボウルの広告に新たな動き」 2007/02/01
ITの発達によって、一般人もプロ並みの作品を制作することが可能になったこと、
そして、You Tubeなどの登場で自分の作品を多くの人に見てもらえる機会が増え
たことが、今回の一般消費者の作品を利用するということにつながったと思います。
http://usbizdirect.blog64.fc2.com/blog-entry-219.html
○Funky Sensation 「米フリトレー社 CGCMコンテスト勝者決定!」2007/02/05
http://bally.blog47.fc2.com/blog-entry-167.html
○スポーツビジネス from NY 「スーパーボウルCMランキング」 2007/02/07
http://tomoyasuzuki.jugem.jp/?eid=51
○GIZMODO Japan 2007/02
「今年のスーパーボウル広告ベスト広告は?」
http://www.gizmodo.jp/2007/02/post_897.html
○エキサイト ウェブアド タイムス 2007/02/05
「スーパーボウルのCMに投票企画、YouTubeのSUPERVOTE」
スーパーボウルのCMの数々が、現在、YouTubeのコミュニティコーナーに、
投票企画「SUPERVOTE」がアップされている。
http://www.excite.co.jp/webad/news/rid_197/
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