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勢いづく「内からのエレガント」

移り変わりが激しいファッションであっても、素敵なファッションに身を包むことで、自分のみならず、周りの人々の気持ちまでも盛り上げて明るくしてくれる魅力はいつの時代も変わらない。

今秋冬のファッションでは、ストリートスタイルはすっかり影を潜め、久しぶりに黒やグレーなどのモノトーンが復活。エレガントでクラシカルな、きちんと感を醸し出したスタイルが主流となった。ワンピース風のコートや、ウエストをベルトでマークしてきちんと感を見せた着こなし、ロンググローブやクラッチバッグなどでエレガントな指先を魅せた演出など、クラシック要素を取り入れた装いを楽しんだ人も多かったのではないだろうか。

1920年代の女性をコルセットから解放したポール・ポワレ。ココ・シャネルに見られた男性と同じように女性が社会進出するための「ギャルソンヌ・スタイル」。40年代のクリスチャン・ディオールに代表される「ニュールック」のフィット&フレア。こうしたきらびやかなファッションからインスパイアされ、現代に蘇ったデザインが多く見られた。

上流階級のスタイルを描写した映画「華麗なるギャツビー」や、「男爵の麗人」のマレーネ・ディートリッヒが映画で扮したダンディー・レディのような、内側から滲み出るような凛とした美しさもよみがえった。強さの中に潜むエレガンスをにおわせるファッションだ。

このような上品さと華やかさを兼ね備えたファッションを好むのが、ソーシャライツ(社交界の令嬢)と言われる人々だ。もともと上流階級の名家の令嬢で、学歴もあり、ビジネスもこなす。さらに社会貢献活動やボランティアに積極的に参加しており、多額の寄付もしている。家柄も含め、知性や教養もある。ここ数年、もてはやされたセレブを色あせさせた存在だ。

社交界の令嬢は、生まれながらにいい物に囲まれて、社交界などのパーティも多く経験しているので、品格あるゴージャスなファッションはもちろんお得意。その素敵な着こなしが評価され、ファッションアイコンといわれていたセレブやモデルたちのプライベートファッションに取って代わって、ここ最近はソーシャライツのファッションが注目されている。

実際、ファッションショーの最前列には、ここ数シーズン多くのソーシャライツが座っている。彼女たちは、ブランドの広告塔であるセレブや有名人と違って、ブランドにとって大切な顧客でもあるから、なおさら大事にされるわけだ。

この時期はいよいよ冬のセールも一段落し、春のトレンドが気になるところだ。2008年春夏は、秋冬のモノトーンとは変わって、世界的に色×柄が爆発する。

とは言え、エレガントでクラシカルな要素は残しながら、モダンに昇華したニュークラシックを多くのメゾンが提案している。「エレガント」「クラシカル」という価値観は長期的なトレンドになる気配を見せている。

今春夏の大きな潮流となるのは、「アート」と「自然回帰」。まるでキャンバスがそのまま服になったかのようなピンクやイエロー、グリーンなどの鮮やかな色や、ボタニカルガーデンや自然を思わせる草木や花をイメージさせるモチーフが躍り出た。

アメリカのモダンアートの画家で、アクション・ペインティングで知られるジャクソン・ポロックをファッションに取り込んだ作品が登場した。ポップ・アートの先駆者、ジャスパー・ジョーンズを彷彿させるような色・柄も多くのビッグメゾンから繰り返し発信された。現代抽象画家の巨匠、マーク・ロスコも服のモチーフとして再現された。

描き手の肉体と直結し、躍動感を感じさせるアクション・ペインティングは、極めて人間的な表現で、人体を通じて自然に繋がるアートと言える。ソーシャライツは環境問題にも敏感で、地球温暖化を防ぐ社会貢献活動にも前向きだ。

アニヤ・ハインドマーチのエコバッグは昨年、爆発的にヒットした。「I'm Not A Plastic Bag」(わたしはポリ袋ではない)というメッセージを発し、使い捨てレジ袋の削減を訴えた。もっとも、エコを訴えながら、実は消費しているので、エコでないのでは? という意見もあるかもしれない。

しかし、こういったエコバッグを持ったり、デザイナーが表現した作品をまとうことは、私たちの内側にも変化をもたらす。制服に身を包んだり、晴れ着を着たりしたときに、気持ちまで変わるように、ファッションは意識を変える。たかがバッグではないのだ。「カタチ」から始まる内なる美があってもいいだろう。

次回は、アートとファッションに関して踏み込んで紹介していきたいと思う。

 

【関連情報】

○25ans<ヴァンサンカン>
 ソーシャライツこそ、現代最強のセレブリティ!
http://www.25ans.jp/25ans/socialites/index2.php


○YOMIURI ONLINE(大手小町) 2007/10/13
 2008春夏パリコレクション…花柄 エコの合言葉
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/beauty/collection/20071013ok01.htm


○VOGUE.com 2007/10/02
 2008年春夏ファッションはシックで決まり
http://www.vogue.co.jp/page.jsp?id=22192


○ファッション中毒オシャレ情報 
 「2008春夏パリコレが始まった」 2007/10/03
 最近は日本の新聞でもパリコレや東京、ミラノなどのコレクションが
 取り上げられるようになった。しかし、フランスのフィガロ、アメリカの
 ニューヨーク・タイムズ、イギリスのフィナンシャル・タイムズなどは
 本格的にショーを取り上げ、コレクションの期間中は連日、読みごたえの
 ある記事と写真を掲載する。それだけ一般人読者の関心が高く、日常の
 会話にもファッションの話がでてくるらしい。
http://kogiku.cocolog-nifty.com/joji/2007/10/post_d4d5.html


○MODE PRESS 2007/07/21
 “エコバッグ”はもはや社会現象 インドネシアで発売中止
http://www.afpbb.com/fashion/1816033

 

○Jasper Johns(YouTube映像 04:48)
http://jp.youtube.com/watch?v=0WTMcpWaeXU


○Speed Painting Having Fun With Jackson Pollock Software
 (YouTube映像 03:06)
http://jp.youtube.com/watch?v=iVyyvKZRZtQ&feature=related


○Mark Rothko(YouTube映像 04:18)
http://jp.youtube.com/watch?v=zQQalxpRLko

 

 

 


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