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第3の研究(by 谷口正和)

  • 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長 
  • 谷口 正和

 猛烈な情報化の時代が来た。高度情報化社会というが、その情報化ぶりには驚嘆するものがある。

 Google(グーグル)で「京都」と入れてみると、なんと1億1800万件がヒットした。もちろんかなりのダブりもあるだろうが、それにしてもすさまじいヒット数である。京都という名前の由来から京都という字が入った書籍まで、まさに京都の森羅万象を調べることができる。

 つまり、京都の研究はすでに尽くされていると言ってもいい。言い方を変えれば、ゼロから京都研究というようなことはもはや不可能なのだ。

 「第3の研究」とは、すでに研究されたものの上に乗って研究せよ、ということである。情報が今日のように猛烈なスピードと量で流布する時代と違い、かつては情報を集めること自体が困難だった。一冊のオランダ本を手に入れることでさえ、江戸以前は難しいことだったのである。

 ヨーロッパでも、グーテンベルグが印刷機を発明する以前は、聖書が100冊前後しかなかったということだ。しかし印刷機が発明されるやいなや、ほぼ1年くらいで100万部くらいになったということである。

 そして今日、「京都」のヒット数が10億件以上の時代である。グーテンベルグ革命をはるかにしのぐ超情報革命がおきているのだ。

 情報の時代は、まず情報を集めるところから始まる。情報化が進めば進むほど、ますますそうなる。

 情報の収集→整理→分析→仮説化→検証→フィードバック→最新情報収集・・・のループは、学問からビジネスにいたるまで、およそ情報を扱うものにとっては、必須の手順なのである。

 この高度情報社会、まだ誰も、などというような領域はもうない。だったら、すでに研究・発表されている情報をよく集めて、よく整理し、その高さから出発したほうが、レベルが格段に上がることは間違いない。もうすでに情報は積み上げられ、私たちの目の前にあるのだ。 この「研究の研究」とでもいうべき方法を、「第3の研究」と名づけてみた訳である。いわばスーパー・ラボラトリーとしての「サード・ラボ」。そこから生まれるスーパーインデックスを手に入れようということだ。

 どのようなテーマであれ、研究した人は必ず発表する。グーグルの件数が示すとおりである。ラーメンが好きな人は名店を食べ歩き、研究し、その情報をブログで発信し、ラーメン王などと賞賛されるのを待つ。

 高度情報社会の持っている最大の力は、「情報は公開される」ということなのだ。衆知を集め、研究のレベルを極端に言えば「100年分を1日で」驚異的に上げることができる社会なのである。

 この「第3の研究」力を活用しない手はない。情報が自由自在に検索できる時代、その力の最高の活用方法は「第3の研究」である。

 Esquireの 3月号が「ミシュランvsザガットサーベイ」と称して、2大グルメガイドブックを分析している。消費者アンケート結果で店を評価する『ザガットサーベイ 東京のレストラン2008』と、専門家の厳選した店が掲載される『ミシュランガイド東京2008』。この性格の異なる2冊だ。

 ミシュランは一店舗あたりの情報量が多いのが特徴で150店を掲載。ザガットは1243店の情報が掲載されており、一店舗あたりの情報量は少ないが一般人の率直な意見が載っているのが特徴だ。すでに研究されているものをさらに上の視点から研究すれば、はしごを八段目あたりから上り始めたも同然だ。

 どんなに「もう知っている」と思っていることでも、まず調べる。あなたが研究したこと以上の研究が、日々生産されているのだから。

 

【関連情報】

○INTEC JAPAN / FORUM  2007/09/10
 「デジタルネイティブの恐るべきIT能力」
  デジタルネイティブは、応用力も適応力も大人とはケタ違いであり
 恐るべきデジタル新人類が育ってきているのです。とくにPCの使いこなしと
 学力との関係は明確であり、今後の子どもに対するIT教育のあり方が問題に
 なっています。
http://www.intecjapan.com/forum/2007/09/post_69.html


○開拓前線 「彼ら、デジタル・ネイティブ」 2006/12/25
  President onlineに『ネアンデルタール人のつぶやき』という記事がある。
 その記事の中に、“デジタル・ネイティブ”という単語が出てくる。
 デジタル・ネイティブ。サイバースペースの住民。この単語には非常に
 重要な意味が含まれている。
http://blog.livedoor.jp/yujiyasuda/archives/51253546.html


○POLAR BEAR BLOG 「情報中毒への対応」 2006/04/30
  情報を集めるのは「参考書を選ぶ」「旅行先を選ぶ」など、何らかの決断を
 下すためです。「情報中毒」になってしまうのは、決め手となる情報が
 得られずに情報を集め続けてしまうからだとしたら、その「決め手情報」を
 こちらから与えてしまうという方法が考えられるでしょう。
http://akihitok.typepad.jp/blog/2006/04/post_2916.html


○近況 2005/09/16
 フォーサイトクラブ・セミナー「ウェブ社会『大変化』への正しい対応・
 間違った対応」梅田望夫さん講演ログ

 ネット新時代に対応するための7原則
 1.アナロジーで考えてはいけない
 2.「ムーアの法則」を信じ、「おっちょこちょい」であれ
 3.Only the Paranoid Survive(アンディ・グローブを思いだそう)
 4.「時間の使い方の優先順位」を変えないと何も変わらない
 5.新しい現象に対し、「古い感覚を総動員した理論武装」で戦うな
 6.若い人に教わることを忌避するな
 7.Never Too Late
http://d.hatena.ne.jp/pekeq/20050916/p1

 


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