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世界のオーガニック食材宅配ビジネス事情─優れている日本勢


日本ではオーガニック食材の入手方法といえばスーパーでの購入が主流ですが、近年は宅配システムの利用者も増えてきています。「Oisix(おいしっくす)」を筆頭に「大地を守る会」、「らでぃっしゅぼーや」、「ポラン広場」などの食材配達サービスはインターネットの普及とともに認知度も上がり、忙しくて買い物に行けないOLの方々や小さな子供を持つ主婦層に支持されているようです。

毎日の食卓に並ぶ食材を直接目で見て手に触れることなく購入するという、ひと昔前では考えられない手法も、今ではなんの抵抗もなくカタログやパソコンの画面上の写真や項目名だけを見てお金を払う生活者が何十万人と存在します。

私自身は料理をする際、その食材自体がオーガニックかどうか、栽培履歴や産地が信頼をおけるものであるかどうかを確認することも重要ですが、その前にその素材自体の新鮮さや質を、手触りや香りで確かめることを大切にしているため、宅配ならではの便利さを理解していてもどうしてもお店に足を運ぶ習慣を変えることができません。

世界のオーガニック先進国といわれる国々ではどうでしょうか。今回は他国での宅配事情にスポットを当ててみます。

オーガニックに限らず食材の宅配業者は、先進国であればたいていの国々に存在しています。アメリカやオーストラリアなど大陸が広く移動のほとんどを車に頼っている地域は、休日に大型ショッピングセンターで冷蔵庫いっぱいの食材をまとめ買いするのが主流。あえて宅配システムを利用するとすれば、珍しい食材や季節はずれのものを取り寄せたいとき、買い物に行く時間がないときなどのようで。

乳製品が主流のヨーロッパにおいては、鮮度や運搬の問題から宅配が難しく、ビジネスは存在するようですが売り上げは伸び悩んでいるようです。

ここで国別に宅配システムの現状、注目されている宅配業者名、スーパーなどの小売店を国別にご紹介します。(各国の業界関係者からのインタビュー参照)




<アメリカ>

状況
*ニューヨーク、ロス、サンフランシスコ、シカゴなど都会では存在している。
*生産者コミュニティーを消費者がサポートするシステムが主流でCSA(注1)
  が支持されている。

宅配でよく知られてるところ
[New seasons market]
スーパーも数店舗かまえている。

成功しているスーパーマーケット
[Earth Fair.Inc]
南東エリアで成功しているスーパーの1つ。
お客様の質問に対応できるようスタッフの研修が充実している。
店内の商品ディスプレイが良い。


<オーストラリア>

状況
*オーストラリアはColesとWoolworthの2大スーパーが主流。そのそれぞれが
  オーガニックを独自の品数とこだわりで扱っている(特にColesは近年、
  本格的にオーガニックの取り扱いをスタート。)
  アメリカのWholeFoodsMarket(注2)のような存在はあまりない。
*宅配は地産地消型の提携システムが支持されている。

宅配でよく知られてるところ
[Organic foods select]
数ある提携システムの中でも特に名が知られている。

成功しているスーパーマーケット
[Macro wholefoods]


<ドイツ>

状況
*宅配業者のサービスより、スーパーマーケットがホームページ上でオーダーを
  受け宅配するシステムが主流。

宅配でよく知られてるところ
[Edeka]
店舗展開とセットで知名度を上げている。
決まったエリアのみの宅配サービスがある。

成功しているスーパーマーケット
[Basic]
[Alnatuia]


<イギリス>

イギリスは大手スーパー(TESCO、ASDA、Sainsbury's)などが消費者の食材購入先としては主流で、各スーパーが独自でオーガニックブランドをつくったり、取り扱い品目の数や種類、金額の競争で鎬を削っています。成長率が高く、世界の中でもロンドンの市場の動きやトレンドは特に注目されています。

ロンドンでは宅配業者も多く存在し、各社でフードマイレージや包装へのこだわりなどの特徴やメリットを打ち出し消費者を魅了しています。スーパーは[Waitrose]などが伸びているとのこと。ちなみにチャールズ皇太子のオーガニック食品ブランドDutchy Originalsは好調のようです。

各国の関係者にヒアリングをした結果、世界中のどの国よりも最も宅配システムの質やレベルが高く、繊細なサービスを提供できているのは間違いなく日本のようです。他の国に日本のような宅配システムが確立できない一番の理由は英語で言う「logistics(ロジスティクス)」が欠けているからだそうです。

このlogisticsの意味は「注文どおりに小分けし、箱詰めし、期日内に運搬するなどの細かい作業のこと」を指し、的確かつ迅速にそれらが遂行できるのは、日本人の特質と、宅配網が整備されていることが大きな要因です。またそれらのレベルの高いサービスを求める消費者性向も日本ならではとのこと。近い将来、日本の市場環境に似たアジア各国(韓国や台湾、香港、上海)でも類似ビジネスが出てくるかもしれません。今後も日本の宅配システムビジネスの動向に注目です。


(注1):CSA
 Community Supported Aguriculture の頭文字で、日本では産直提携に
 当てはまるとされ「地域のコミュニティに支持された農業」という意味で
 解釈されている。

(注2):WholeFoodsMarket
 成長を続けるアメリカの注目の大手オーガニック食品小売りチェーン店

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○カフェグローブ 2008/01/24
 「世界最大のオーガニック・スーパーは……おいしかった」
 今回は去年ロンドンにオープンしたWhole Foods Market(WFM)を
 遅まきながらやっと覗いてきたのでご報告です。
http://blog.cafeglobe.com/archives/fromeditor/2008/01/wholefoodmarket.html


○ITpro 久米信行の「企業経営に活かすBlog道」2007/08/31
 野菜宅配らでぃっしゅぼーやの「たべるん♪Voice」
 「たべるん♪Voice」は,一見すると「よくある料理レシピ」サイトに
 見えるかもしれません。しかし,そこには,ブログならではの効果が
 満載です。料理好きの個人ブロガーを巻き込みながら,生活者目線の
 社員ブロガー,農家ブロガー,幹部によるオフィシャルブロガーが
 同心円状にゆるやかに連携する姿は,新しい企業ブログポータルの
 理想像に近いかもしれません。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20070829/280614/


○MouRa  2007/11/30
 オーガニック食品宅配「大地を守る会」直営の
 有機和食レストラン「山藤」が2号店をオープン!
http://mopix.moura.jp/?p=201

 


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