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「9・11」「SARS」当時をも上回る危機的状況・・・ 原油高騰が海外旅行を直撃!! 北京オリンピックの成否に注目

■ 夏休みの海外旅行17万人減少へ

 JTBは夏休み(7月15日―8月31日)の旅行見通しとして、海外旅行者数は、燃油サーチャージの高騰が大きく客足に響き、前年に比べて期間中17万人減少すると発表。前年同期比7・0%減の225万人となる見通しで、2年連続の減少となる。一方の国内旅行人数も0・9%減の7350万人と、4年ぶりに減少すると予想している。この大きな原因は、他の産業と同様に、いやそれ以上に原油高騰が影響している。


■ 「市場は極めて厳しい。有事に匹敵」
 
 「海外旅行マーケットは予想以上に極めて厳しい。有事に匹敵する危機的な状況」と、海外パック商品「ルックJTB」を造成するJTBワールドバケーションズの北島文幸社長は話す。「旅行者が国内旅行にシフトしている動きも非常に少ない。一番大きな要因は燃油サーチャージの高騰。とくに夏休みは家族旅行が中心だが、最大のターゲットであるファミリー需要が大きく減退した」と言う。燃油サーチャージの法外な価格をパンフレットで知り、キャンセルが相次いでいる状態だ。


■ 家族4人でハワイ旅行に16万円上乗せ

 燃油サーチャージの高騰は、「財布が1つ」の家族旅行を直撃する。例えば、ハワイに家族4人で行くと、4人分のツアー料金のほかに、燃油サーチャージ料金として16万円が上乗せとなる。これは大きい。16万円で家族4人が沖縄旅行できる価格だ。一方、国内旅行でもガソリン代の高騰で、安近短傾向が強く、都心のホテルや25周年を迎えた東京ディズニーリゾートなどのレジャー施設、熱海や鬼怒川温泉など、首都圏近郊の観光地に流れる傾向にある。


■ 2008年の海外旅行者数は100万人減少!?

 旅行業界では2010年までに海外旅行者数2000万人を目指してさまざまな需要喚起策を講じているが、財団法人日本交通公社は、08年の日本人の海外旅行者数を1640万人と予想する。別の見通しでは1610万人台という悲観的な予測もあり、07年の1729万人に比べ約100万人の減少となる。

 海外旅行者数は、2000年に1782万人でピークを迎える。しかし、翌01年は米国同時多発テロ「9・11」の影響で、1622万人に激減した。03年には新型肺炎SARSの発生とイラク戦争の勃発で、1330万人まで落ち込んでしまう。その後、少しずつ回復傾向にあったが、その間に若年層の旅行離れなどが進み、完全に回復しきれていなかった。そこに、この原油高騰が直撃した。

 08年は、9・11の翌年の02年以下になるという非常事態の数字になる。海外旅行者数は2007年5月から14カ月連続で減少している。
 

■ 将来的な回復の見通しがつかない……

 9・11やSARSに関しては、「一定の期間が経過すれば需要が回復する」という希望が持てたが、現状は「将来的にも回復の見通しがつかない危機的状況」と捉えている。燃油サーチャージは値上げの一方で、下がる可能性は今のところまったくなしの状況。10月以降も、燃油サーチャージがもっと上がる可能性もあるということが、さらなる不安を煽る。


■ 壊滅的な中国旅行、五輪成功で回復も

 日本旅行業協会(JATA)がJTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行、阪急交通社、ジャルパック、ANAセールスの大手旅行会社6社を対象にまとめた海外パッケージツアーの7―9月予約状況によると、「全体的に伸び悩んでいるが、とくにオリンピックが開催される8月の中国は、割高感もあり前年同月比33・1%」と壊滅的な数値だ。もともと人気旅行先だった中国は、4月(前年同月比51・7%)、5月(51・9%)、6月(43・5%)、7月(44・6%)、8月(33・1%)、9月(35・5%)と、食品の安全の問題、環境汚染への心配、チベット問題、四川大地震と、マイナス要素が相次いだため、低迷が続く。オリンピック開催期間中、閉幕以降も低調が続く見通しだ。

 通常、オリンピックが閉幕した直後から、五輪開催地への旅行者は増加するもの。北京オリンピックが成功すれば、中国全体のイメージもアップし、旅行者増が期待されるが、仮に悪いイメージが付くような出来事が起これば、最悪のケースも考えられる。
 
 ジャルパックの高橋哲夫社長は「8月8日から北京オリンピックが開幕するが、五輪が盛り上がり、成功することで、中国行きの旅行者の拡大、ひいては海外旅行全体の需要拡大につながっていくことを期待している」と、ひたすら北京オリンピックの成功を祈っている。今のところ、海外旅行の需要回復の決め手が、これといってないのが現状なのだ。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○【潮流 - 雲上快晴 】海外旅行の「今そこにある危機」 2008/06/30
 旅行業界が直面する「今そこにある危機」とは何なのか。思いつくままに
 上げれば、まずは燃油サーチャージ、若年層の海外旅行離れ、
 国際航空券販売に対するコミッションカット、レジャー路線の供給量減少、
 中国旅行需要の激減など沢山出てくるが、最大の課題は「海外旅行に魅力が
 ないと誤解されていること」と思っている。
http://jwing.exblog.jp/8941276/


○NEXT ONE  「燃油サーチャージの値上げ(原油価格高騰)!」2008/07/03
 最近は若者を中心に海外旅行へ行く人が減少傾向だそうですが、
 燃油サーチャージの高騰がこれにさらに拍車をかけそうな気がします。
http://silverline97.blog92.fc2.com/blog-entry-136.html

 

 


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