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顧客をワクワクさせる仕掛け作りが全て! 動画PR、ネットコミュニティーをフル活用する米国ファッション小売店の今

不況、不況と言われても、成長を続ける企業は存在する。中でも景気に左右されやすいファッション業界で、力強い存在感を表してきた2つのセレクトショップ(ブティック)に注目したい。


http://www.blondela.com/ (音有り)

ロサンゼルスの海側に位置するエリア、サンタモニカにあるブティック「BLONDE(ブロンド)」。オーナー兼バイヤーのアンバー・ファーが、2000年にオープンした小さなショップだ。日本のファッション誌に軒並み取りあげられる理由は、もちろん女性セレブ顧客( ニコール・リッチー、ミーシャ・バートン、レイチェル・ビルソン、パリス・ヒルトンなど)の影響。

とはいえ、セレブがこぞって通うのは品揃えとカスタマーサービスの賜物と言える。メディアの取材に対してもオーナー自らが対応。そのパブリシティを2006年から始めたネット販売という形で最大限に活かしている。

ブロンドにとって、今やオンラインショップは重要な収入源だという。ちなみに「オンラインのお客様の3分の1は日本人」という。彼女らの運営するウェブサイトは、商品販売に限らない。キーとなっているのは、ネットにしろ、ショップに直接通うにしろ、大切な顧客たちを「コミュニティー」という形で囲い込んでいる点だ。

ショップに人気ブランドの商品をいち早く取り入れるのはもとより、ブロンドファンのファッショニスタたちが、自身のブランドをはじめれば、彼らを支えるべくいち早く買い付け、販売する。さらにブロンドのウェブサイト内でデザイナーたちのコミュニティーページを持たせることで、お客に旬のデザイナーとショップの距離の近さをアピール。その結果、売り切れ続出の商品が並ぶ店を作り出す。自身の店を自らどんどん盛り上げているのだ。そのための手段の一つはビデオ。

「Amber’s Closet」と題したビデオは、店の商品の特徴やトレンドを、オーナーでありバイヤーでもあるアンバー自らが数分間語り続ける。デジカメで簡単に撮ったものを編集してできたこのビデオだが、来店できない遠方の顧客にとって、店のスタッフからあれこれ勧められているのと同じような感覚を味わうことができる。

さらにカスタマーサービス、シッピングなど、全てオーナーやスタッフ自らが行なっているので、売れ行きや問題点などを逐一知ることができる。ショップの営業時間外で販売し、発送については店の閑散時間帯を上手に利用。こうすることで人材を最大限活用しているのだ。さらに今後も彼らのコミュニティーを利用して、この先非営利の組織への寄付を目的としたファッションイベントを開催していくつもりだという。小さな洋服屋でも大きなムーブメント作りに貢献しているといえる。


http://akirachicago.com/ (音有り)

シカゴの比較的新しいショッピングエリア、バックタウン。中目黒や代官山といった雰囲気漂う町並みだ。そんなバックタウンでひと際目立つショップが、「AKIRA」。2002年に大学の同級生であった3人のアジア系アメリカ人オーナーたちが共同ではじめたショップである。

赤地に黒でAKIRAと書かれた文字には、3人のオーナー共に日本文化を「かっこいい、クール」と捉えた結果の賜物。オリジナルで展開するブランド名も、日本人を連想させる名前を使っているというほどだ。

そんな3人のオーナーたちは共にアパレル業界での経験はほとんどなくショップを開業。当初レディースだけを扱っていた1ブティックから、過去6年で同じストリートに5軒のショップを続々オープン。メンズストアー、シューストアーと展開し、今ではダウンタウンやメインストリームのリンカンパークエリアにも進出。7軒のショップを運営するチェーンに成長した。

Vera WangやVivienne Westwoodといった定価500ドルを超える高級ドレスから、$35で買えるAKIRAオリジナルのワンピースまで並ぶこのショップのコンセプトは、財布の中身にかかわらず、ファッション好きな人を満足させる品揃えと、カスタマーサービスを提供すること。

さらにショップに行くとここは日本? と思えるほどショップのスタッフはよく気が利く。きちんとトレーニングされているのがわかるのだ。名札とインカムを付けたショップスタッフたちは、競争の激しい渋谷109のショップのスタッフのように、客の好み、サイズにあった商品を次々と見せ、接客していく。

実際オーナーたちは日本にも買い付けおよび市場調査を目的としてたびたび訪れているそうだ。10人を超えるスタッフがショップ内で働く店内には、ビートのきいた音楽がなり、キャッシャーテーブルには、その音楽がAKIRAオリジナルのリミックスCDとして紹介されている。

さらにウェブサイト、マガジン、イベントを通して、AKIRA流のトレンドやファッション感をストレートに伝えることに余念がない。彼等はメディアが伝える流行に敏感というより、自分達の顧客の中の流行を創りだそうとしているのだ。特にウェブサイトには、これまでのファッションイベントの様子を伝えるビデオや写真が張り巡らされ、またファッション、ビジネスの両面で取材されて来たプレス情報で、AKIRAというショップが今ここシカゴをベースに何を伝えたいか、しっかりと発信している。

今回取りあげた2つのショップいずれも、トレンドを発信するブティックにとって、ネットの機能を最大限に利用していることが分かる。Myspaceに自身のページを持っているのは当たり前。次はそのコミュニティーに入った人たちを満足させられるようなフィードバックを、頻繁なサイト更新で行なわないといけない。

新商品がなくとも、イベントやトレンドについての説明など、伝えたいことは沢山あるのだ。ネット販売がここまで定着した今、より安く、ショップに足を運ばずに同じものが購入できる状況。その中で顧客がわくわくし、明日にでも店に行きたい! と思わせられる店。それは電話やメール、ショップでの毎日、一客一客のカスタマーサービスだけでは今や足りないのだ。

こまめな情報発信によるコミュニティー作りが、ファンを作り、ショップを盛り上げる。その過程でネットの機能を最大限、活かせるか、それが今後のショップ生き残りの鍵のようだ。

 

 


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