コモディティ化の先に向かったiPhoneとDSVision
- ブロガー/ライター
iPhone3Gが日本で発売されてそろそろ1ヶ月というところです。私もこういうものは好きですから、購入して楽しんでいます。事実としてiPhone3Gが売れている、かどうかはまだはっきりとはわかりませんが、とりあえず手にした人たちは楽しんでいるようです。ブログ、mixi日記、電車の中と、iPhoneの話やiPhoneを目にする機会が増えてきました。
リンク:http://www.apple.com/jp/iphone/
ここで、iPhone3GのSMSがすばらしいとか、iPhoneアプリの優れているものとかを紹介してもいいところではありますが、それはまだまだこれからもっと面白くなってくるとして、今回は、携帯端末としてのiPhoneというところで考えてみたいと思います。
日本の電車の中というのは、実に携帯端末ウォッチの場所としては最適なところで、一時期は完全に任天堂DS一色、それからモンスターハンターのヒットと同時に一気にPSPが増えだし、今は決定的なものはないという感じかと思っていたら、ドラクエ5の発売で、また一気にDSが増えているという状況です。任天堂DSはひとつヒット作が出ると、確実にそれを消費するだけのマーケットサイズを得ているということでもあると思います。
実際、任天堂の2008年3月期の決算短信によれば、任天堂DSは既に日本国内累計2,000万台以上を販売しており、世界でも累計7,000万台以上を販売しているモンスターとしか言いようがないお化け携帯端末なわけです。(リンク:http://www.nintendo.co.jp/ir/pdf/2008/080730.pdf)。そういえば、私の家にも3台ぐらいあります。つまり、任天堂は1家に1台ではなく、1人1台という世界です。
そして、その任天堂DSがしれっと始めているサービスがあります。それが『DSvision』です。
DSvisionのサイトを確認すると、DSvisionについてはこんな説明がされています。
「DSvisionは、『みる』『よむ』『学ぶ』といった専用再生ソフトをインターネットからダウンロードし、ニンテンドーDS(R)で再生する、新しいサービスです。」
ちょっとよくわからないですね。ところが、実際にDSvisionでダウンロードできるソフト(というコンテンツ)に注目するとびっくりします。始めてのDSvisionというページを見ると、こんなことが書いてあります。
リンク: 初めての方へ|DSvision.jp
http://www.dsvision.jp/first/index.html
DSvision専用ソフトはインターネットでダウンロードできます。
「テキスト」「コミック」「ムービー」「サウンド」といった色々なソフトを24時間いつでも好きなときにご購入いただけます。
DSvisionのサイトで確認することができますが、この「テキスト」「コミック」「ムービー」「サウンド」は、ほぼすべて有料コンテンツです。これはすごい。そして、同時に任天堂はいわゆる違法業者への提訴もしています。これは任天堂本気ですね。
リンク: 任天堂ほかソフトメーカー54社、ニンテンドーDSで動作する「マジコン」を
販売する5社を提訴(インサイド)---Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080729-00000000-isd-game
さて、iPhoneに戻りましょう。iPhoneは言うまでもなくiTunes Storeというサービスとがっちり結びついて、音楽・ビデオ・アプリを販売するソリューションです。
iPhone3Gの発表と同時にスタートしたApp Storeでは既にコミックなどもiPhoneアプリの形で提供されています。
DSとiPhone、どちらもコモディティ化(市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとっては何処のメーカーの品を購入しても大差ない状態のことである。:ウィキペディアより)というところからは、ほど遠い携帯端末です。
しかし、この2つの端末は、端末に触れるという「タッチ」というところにこだわり、その端末に対して、ネットを単にパイプとして利用して、他の端末を一切排除した形で中身にこだわらないソフトウェアの流通を開始しています。
現在、端末の数という意味では任天堂DSが圧倒していますが、iTunes Storeにはそれと同等の販売実績があります。
これはおもしろい。
なにがおもしろいかというと、任天堂とアップルが、DSとiPhoneという携帯端末において、有料コンテンツの販売という同じ土俵で対決する可能性が出てきたからです。
任天堂DSとアップルiPhone、いずれも出発点までたぐり寄せていくとまったく違うところからスタートしています。
任天堂は当然携帯ゲーム機、アップルはPDAです。
そして、失敗ということにフォーカスすると、任天堂においては「通信」、アップルにおいては「携帯端末」というところで、実は両社とも過去に失敗しています。
任天堂はそれこそファミコン時代から通信ということに何度もトライしています。そして、結局WiFiというコモディティ化された技術が登場するまで、それこそ人工衛星まで視野に入れたのに、一度も成功しませんでした。
アップルは過去にPDAで「Newton(ニュートン)」という失敗をしています。通信機能も備えており、エレガントなインターフェイスを備えていましたが、マーケット的には失敗に終わりました。
任天堂もアップルも、過去の失敗の教訓の上にWiFiとWebというコモディティ化された新しいパイプが登場した今だからこそ、再度勝負をかけているわけです。
こう考えてみると、任天堂とアップルが勝負をしているのは、お互いではないと考えた方がいいかもしれません。
任天堂とアップルが勝負しているのは、Wintel(米マイクロソフト社製のWindowsOSと、米インテル製のCPUやチップセットを搭載したコンピュータのことを指す俗称。 また、マイクロソフト社とインテル社の提携関係のことを言う場合もある。:フリー百科事典『ウィキペディア』より)というコモディティ化された世界であると考えるべきでしょう。
オンラインの有料コンテンツの販売というのは、Wintelというコモディティ化された世界では大きな成功事例というのをほぼ聞いたことがありません。
その理由にはいろいろな側面がありますが、その理由に対する回答というのを今のところいちばん至近距離で視野に入れているのは、任天堂とアップルだというのは、どうにも皮肉なものです。
この先、10年でこの勝負には結果が出て行くことになると思いますが、iPhoneという黒船に対して、日本という国にはDSという別の船があることも忘れずにウォッチしていこうと思います。
【編集部ピックアップ関連情報】
○東京のはじっこで愛を叫ぶ 「任天堂法務部 最強列伝」2008/07/30
これら任天堂法務部が手がけた訴訟事案を見渡すと、ある共通点が
分かります。それは徹底的な事前調査です。何か起きそうな所は先回りして
対抗手段を取っておく。その技量が半端無いんですね。
http://d.hatena.ne.jp/tenten99/20080730/1217425696
○CNET 2008/07/11
ゲームソフト会社から見たiPhoneの魅力--「ここまで整ったプラットフォームは世界初」
アップルが通信事業者のような締め付けをすると困るのですが、基本的には
何でも受け付けますという姿勢ですし、アップルの審査も公序良俗に反しないか
どうかと、ウイルスなどのチェックという程度です。ある意味、我々が何を
出そうが、値段をいくら付けようが基本的には自由なわけです。そんな
プラットフォームは、今まで世の中に1個もないんです。PCでも、
家庭用ゲーム機でも存在しない。ここまで整っているビジネスモデルを提供
している会社というのは、世の中で本当に初めてです。
http://japan.cnet.com/interview/story/0,2000055954,20376901,00.htm
○nobilog2 2008/08/03
iPhoneで「情報」と「アクション」の距離が短くなる
スピーチの骨子はこんな感じだ:
【1】iPhoneは世界的現象
【2】iPhoneは世界進出のチャンス
【3】Webアプリも重要
【4】Web 2.0 in your pocket
【5】情報獲得からアクションへの距離が短く
http://nobi.cocolog-nifty.com/nobilog2/2008/08/post_a745.html
○VENTURE VIEW「やってみて解った、AppStoreで勝負するための9の鉄則」2008/07/18
ひとつ大ポカをやってしまったのが、勝ちを焦ってアプリ名の前にスペースを
入れたりしてしまったこと。日本のi-modeサービスなどでは、50音順に並べた
時に上位に来るように頭に記号や数字を付けるのは常識だったのですが、
アメリカでは大変な非常識だったらしく、とてつもない反発を受けてしまい
ました。世界市場の洗礼を受けたと受け止めています。
http://v.japan.cnet.com/blog/shimizu/2008/07/18/entry_27012342/
○ITmedia News 2007/11/22
「進研ゼミがWeb化 教科書準拠のDSソフトも」
進研ゼミでは学校別に教材を作成し、それぞれの生徒に合わせて教材を
送付してきた。だが「保護者の学習に対するニーズも変化してきており、
学校によって進度や学習内容も変わっている。プリントメディアだけで
サポートするのは困難。新指導要領への対応などを考えても、ネットを
使った新たな学習の仕組みを提供していきたい」と同社の福島保社長は話す。
印刷・郵送も不要でコンテンツを随時更新できるWebを活用することで、
柔軟に教材提供できるようにするほか、音声や動画を活用し、紙では
できない分かりやすい解説を目指す。加えて、ゲーム形式の教材なら、
子どもたちの集中力も高められるとしている。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/22/news111.html
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