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フランス労働法改革の是非。海外に労働市場を奪われ、国内でも待遇格差拡大

 国立統計局が8月に発表した2007年の労働白書によると、フランスの平均労働時間は週37.9時間。この調査より浮かびあがってきたのは、労働分野によって労働状況の不公平ぶりが進んだことだ。農業や職人業に従事している人は、週60時間も働いているのに比べ、管理職の人は、年間の有給休暇が10週間も取れるという両極化が進んでいる。

 サルコジ大統領は、「もっと稼ぐためにもっと働こう!」とのスローガンをかかげているが、一番長い時間働いている人は自営業者が多く、労働法改革の恩恵にはあずかれず、長く働いても収入は変わらない。一方で、大企業のサラリーマンは、35時間制で有給日数が増え、新改革で残業時間手当も増え、給料があがっている。このままで、フランスは激化する国際市場で生き残っていけるのだろうか?

 10%前後の高い失業率を改善しようと2000年に導入された週35時間労働法。2000年以前も、週あたりの法定労働時間が39時間(週休二日制で一日7時間50分)と、他の先進国と比べても短かかった。労働者一人当たりの労働時間を削減して、ワークシェアリングを促し、失業率を減らすのが目的であった。

 7年が過ぎた2008年現在、週35時間制は、フランスでの人件費を高め、激化する国際労働市場でフランス人の労働市場をさらに奪うという逆の効果を生みだし、失策の評価を受けている。中国やインドなどの人件費が安い国への生産拠点移行に加え、新しくEUに加盟した東欧諸国への、ミシュランなどのフランスを代表する企業の生産拠点移行を促した直接の原因を作ったのも35時間法である。

 長期的観点からみたばあい、フランスの経済を悪化させた35時間制は、フランス人の間の不公平をも助長させた。管理職として働く人は、一日あたりの労働時間を減らす事が困難なため、超過残業時間を、一日又は半日の有給休暇で振り替えられる。そのおかげで、フランスでは5週間の年間有給休暇が確保されているのに加え、管理職の人間は、RTTとよばれる2週間から5週間の追加振替休暇が発生し、年間7週間から10週間の休暇をとれる人も少なからずいる。

 農業大国フランスでも、農業に従事しているのは人口の3%まで減少している。1955年には、産業界と農業界で働く人口はそれぞれが約500万人と同レベルだった。労働人口が少なくなっている分、一人当たりの労働時間が長くなっている。農業分野では週平均の労働時間が59時間と一番長い。サラリーマンの平均は、38.2時間だ。

 バカンス大国のフランス。8月のパリは、みんながバカンスにでかけ、閑散としている。パリの大企業で働くサラリーマン達は、増えた有給休暇と残業手当で、2週間から1ヶ月のバカンスをばっちり取る。 この光景は、これからも続くのだろうか?

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○モチベーションは楽しさ創造から 2008/08/06
 「ワークライフバランスとは、単なる時間のバランスなのか?」
 長期的にワークライフバランスを取ろうとすれば、戦略性がとても大事になって
 くるのです。誰か(会社や上司、環境等)に頼っても、ワークライフバランスは
 得ることはできず、自分で勝ち取るしかないのではないでしょうか?
 自分の人生ですからね。
http://d.hatena.ne.jp/favre21/20080806#1217982699


○Business Media 誠 2008/05/23
 「残業代が増える? いまだ手探り“理想の働き方”」
 店長に残業代を支払うことを決めた日本マクドナルドだが、
 「サービス残業が増えるだけ」といった批判は根強い。また一部の企業では
 QC活動(品質管理)に残業代を支払っているものの、条件付きといった
 ケースが多いようだ。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0805/23/news020.html

 

 

 


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