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グーグルでiPhoneの次に多く検索された「Webkinz」、いよいよ世界進出 

  • 米国在住モチベーション・コンサルタント&コーチ 
  • 菊入 みゆき

 2007年の全米グーグル最多検索キーワード・ランキングの第2位は、「Webkinz(ウェブキンズ)」だった。ちなみに1位はiPhone。全世界のランキングでも、Webkinzは5位だ。いかに流行したかがわかる。

 Webkinzは、15ドル前後で買えるぬいぐるみのシリーズである。カナダの玩具メーカー、Ganz(ガンツ)社が2005年4月に発売したもので、幼児・小学生の子供たちを中心に、圧倒的な人気を博している。

 ぬいぐるみには、シークレットコードが付いており、購入者は、このコードを使って、インターネットのWebkinz Worldサイト(www.webkinz.com)に登録、ぬいぐるみをアバターとして遊べる。サイト上にアバターのご機嫌や健康、おなかのすき具合などが表示され、食べ物をあげたり遊んだりしてこれらを管理する。このあたり、一時流行った「たまごっち」に似ている。ぬいぐるみにはそれぞれ自分の部屋が与えられており、インテリアを変えたり家具を買い揃えたりとカスタマイズができ、友だちのぬいぐるみを招待したりもできる。このあたりは、人気ゲームソフト「どうぶつの森」と似ている。また、KinzCashという仮想通貨を使ってゲームをしたり、他のユーザーとチャットを楽しむこともできる。

 ぬいぐるみは、量販店では売られておらず、指定されたギフトショップや小さなおもちゃショップでしか買えない。価格帯が手ごろなため、誕生会などのパーティ・ギフトとして、何十匹もまとめ買いされるケースも多く、一時期は売り切れ店が続出した。入荷しても数時間で完売、イーベイでは75匹が3000ドルで取引される、といった現象も見られた。Webkinz Worldにはまり、何時間もパソコンの前で過ごす子供が増え、問題になったりもしている。

 こんなにも流行した要因はなんだろうか。ひとつには、現実の世界とオンラインの世界をつなぐ巧みな仕組みだ。出資者である親は、子供のオンラインゲームに、サイト上でクレジットカードを使って支払いをすることには抵抗感を持つ。Webkinzは、ぬいぐるみを買うという気軽な行為の中に、バーチャル世界に入るための支払いを含めることで、この抵抗感を払拭した。

 一旦サイトに入れば、そのおもしろさにはまり、それが新たな商品購入や友人への紹介につながる。筆者も実際にぬいぐるみを購入し、サイト登録してみたが、ぬいぐるみには誕生日が設定され、病院で定期健診があり、アカデミーで勉強したり、その資格を使って仕事をしてKinzCashを稼いだりと、ひとつの世界を楽しめる設計になっていると感じた。他のユーザーとのチャットも魅力だ。ショップの販売スタッフも、「私の孫は、サウスカロライナにいる従兄弟とWebkinz Worldでチャットしてるのよ!」と語っていた。仲間ができると、その世界の魅力度はさらに増すだろう。

 品揃えも、成功要因のひとつだ。ショップでは、ぬいぐるみに着せる洋服$5、リップグロス$7.5、キャリーバッグ$15などが、やはりシークレットコード付きで売られている。これらもサイト登録ができ、現実でもオンラインでも遊べる仕掛けだ。まとめ買いで客単価も上がる。Webkinzを扱うギフトショップチェーン、ホールマークストアでは、ぬいぐるみと同じ広さの棚をアクセサリー類に割く。それだけの売上が見込めるのだ。子供服チェーンのリミテッドトゥーでは、全売上の1割程度がWebkinz商品だが、中でもアクセサリー類が好調だという。「ぬいぐるみに着せるピンクの水玉模様のパーカーが、どの店でも売れ筋」と同社は語る。

 2008年8月のWebkinz Worldサイトへの米国内ユニークアクセス数は、630万件だった。昨年8月のピーク時から微減しているものの、同種のサービスを展開する、クラブペンギン 230万件、バービーガールズ45万件に大差をつける。

 いったいどれくらいの売上があるのか、と思うが、Ganz社は、株式非公開企業であり、売上その他の数字を公開していない。が、明らかに売上の柱は単価の低いぬいぐるみで、しかもサイトは無料であることから、「Webkinzはみなが思うほど儲かってはいない」というアナリストもいる。

 この8月、Ganz社は、今後数ヶ月でWebkinz Worldサイトにフランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語のサービスを追加すると発表した。その他の言語も、引き続き準備に入る予定だ。すでに、イギリス、オーストラリアに商品の流通拠点を確保しているという。本格的な世界進出のステージにはいるわけだ。冒頭のグーグル検索キーワードの結果もグローバルな需要の高さを示しており、各国での売上には期待を持てそうだ。

 こうした経緯を見る限り、同社は、サイトの吸引力向上による商品売上高アップという仕組みを、今後も引き続き展開していくように思える。当然考えられる、オンライン広告による収益という道は、選ばないのであろうか。

 実はWebkinzには、広告でつまずいた経緯がある。昨年、Webkinz World サイト内で映画「アルビン/歌うシマリス3兄弟」の宣伝をし、「全米コマーシャルなしの子供時代推進連合」という団体からクレームを受け、1,000件の抗議が殺到したのだ。影響力の大きいサイトだけに、世間の目も厳しい。また、コマーシャルのないサイトだからこそ、親も安心して子供を遊ばせられるという事情もある。現在のWebkinz Worldサイト上には宣伝と思われるものはない。

 膨大なアクセスがありながら広告なしという商業サイトは、ユニークである。あくまで、自社商品の売上を基本にすえるという実直な姿勢は、いっそ好ましく、また、このままどこまでいけるのか、楽しみでもある。

 が、今後のことは、わからない。Ganz社のスポークスパーソンは、Webkinz Worldサイトでのオンライン広告の計画はないとしながらも、将来の可能性については否定していない。


<参考記事>

▼Marketwire 2008/9/4 Webkinz World is Now Worldwide-
 The Hottest Kids' Site in North America Goes Global
http://www.marketwire.com/press-release/Webkinz-896374.html

▼BusinessWeek  2007/12/20 Toys with a Second Life
http://www.businessweek.com/magazine/content/07_53/b4065091329372.html

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○Webkinz日本語版
http://www.webkinz.co.jp/


○iPhone・iPod touch ラボ 2008/08/07
 iPhone で飼うバーチャル・ペット 「iGotchi」
 今日のアプリ『iGotchi』は、iPhone でタマゴッチのようにペットを
 飼うという、バーチャルペット・アプリです。
http://ipodtouchlab.com/2008/08/iphone-igotchi-219.html


○天然naniの突撃リポート!! 「Webkinz」 2008/07/24
 簡単に言うと、ぬいぐるみに付いてくるシークレットコードで、
 パソコンのWebkinzサイトへ、ペットの名前を決め、ログインすると、
 ゲームや、ペットを飼育したり、オリジナルルームを作ったりと、
 本当にバラエテイに富んでいて、大人なのに、Kidsのように楽しんでおります。
http://blogs.yahoo.co.jp/clintsnani2005/54419507.html


○Dagwood Life 「Webkinz(ウェブキンズ)」2007/05/31
 言うならば… 昔、シンプルなところからたまごっち、そしてポストペットが
 流行って、今では日本で人気のキッザニアのバーチャル版といった感じの
 総体性といったところでしょうか。
http://blog.dagwood.biz/?eid=557030


○CNET  2007/03/28
 「フォトレポート:オンラインでもオフラインでも遊ぶ!
 米国で爆発的人気のWebkinzとは」
 1980年代に米国で、人形のCabbage Patch Kidsが流行したことをどれだけの
 人が覚えているだろうか。一体一体に名前や身分証明書がついた
 Cabbage Patch Kidsは、当時の米国の子供たちの間で大人気だった。そんな
 米国の子どもたちの間で今、オンラインでもオフラインでも爆発的人気と
 なっているのがWebkinz。
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20345960,00.htm


○ITmedia News  2007/11/01
 一家5人に増えました「たまごっち」新機種 国際結婚も
 新たまごっちは「家族のきずな」がテーマ。3から5人の「たまごっちファミリー」
 を同時に育てる。たまごっちとして初めて、海外版のたまごっちとの
 「国際結婚」もできるようになった。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/01/news106.html


○徳力基彦 FPN  「どうぶつの森」に見るブログの口コミ効果の凄さ 2006/02/01
 つまり。今までゲーム買ったことの無い人にまで買わせちゃったんですよ。
 これはすごいことですよね。この層にリーチするのは、ゲーム雑誌に
 広告打ったんじゃ不可能ですし、テレビコマーシャルでも無消費者層の
 購買意欲を喚起するのはなかなか難しいはずです。
 ブログのバイラル効果、おそるべし、ですよね。 
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=1149


○Ps3 EyePet Trailer GC 2008(YouTube映像 01:14)
http://jp.youtube.com/watch?v=ayBvhLsKJEg&feature=related

 

 


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『Webkinz』 みなさんもうWebkinz(ウェブキンズ)をご存知ですか? 2005年4...