Entry

混沌とするデジタル一眼レフの行方とユーザーとしての選択

昨年から今年にかけてデジタルカメラマーケットでいちばん拡大しているのがいわゆるデジイチ、デジタル一眼レフカメラです。先日、海外に旅行にいっていましたが、旅先でも日本人に限らず、デジタル一眼レフの入門機を手にしている観光客を多く見かけました。

この時期はフォトキナ2008(http://www.koelnmesse.jp/photokina/gaiyou.htm)も開催されていたということで、デジタル一眼について、考えてみたいと思います。


デジタル一眼レフのマーケットは、主に3つの要素で読み解くことができると思います。

▼トレンド

これは少し前までは入門機が主戦場となっていました。また入門機の多くが価格や大きさが手頃に設定されているため、女性や中高年にも普及してきています。そのために手ブレ補正など、主に初心者向けの機能の充実が図られてきました。そして、この秋一気にブレイクしそうなのが、NikonとCanonという2大デジタル一眼レフメーカーが相次いでリリースしてきた動画対応です。この動画対応はまた一段、デジタル一眼レフのステージを変えてしまう威力を持っていると言えるでしょう。

Nikon D90
リンク:http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/slr/digital/d90/index.htm

Canon EOS 5D Mark II
リンク:http://cweb.canon.jp/camera/eosd/5dmk2/index.html

サンプルショートムービー
http://www.vincentlaforet.com/


▼歴史

デジタル一眼レフの歴史はそのままカメラメーカーの歴史であり、大雑把に言ってしまえばレンズマウントの歴史です。プロユースに限らず、ある程度のレベルのユーザーはレンズを複数本所有しています。もちろん、メーカーが違えば、レンズが変わりレンズマウントも違います。つまり、ユーザーから見てもメーカーから見ても「レンズは資産」だということです。だから、デジタル一眼レフマーケットではCanonとNikonが圧倒的に強いわけです。ただ、これは同時にユーザーもメーカーのどちらもレンズマウントに拘束されることを意味してもいます。

デジタル一眼レフにおいては、Nikonよりもデジタル技術に一日の長があったCanonがまずマーケットをつかみ、プロフェッショナルユースでもNikonからマーケットを奪いました。

しかし、Nikonもマーケティング戦略の成功で、まずは入門機のマーケットでCanonを巻き返し、デジタル技術でもCanonに肉薄し、プロフェッショナルユースでもCanonを巻き返しつつあります。

 リンク: ニコンとキヤノンが独占:オリンピックのカメラ席 | WIRED VISION
 http://wiredvision.jp/news/200808/2008081820.html

さらに他のカメラメーカーもこのマーケットを黙ってみているわけではありません。中でもユニークなのが、コニカミノルタからカメラ事業を譲渡されたソニーの動きです。カメラボディでの手ブレ補正など、他のメーカーにはない機能とソニーのブランド力でCanonとNikonに続くメーカーとしての地位を取得しようとしています。

 リンク: ITmediaニュース:コニカミノルタ、カメラから撤退 ソニーが「α」を継承
 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0601/19/news047.html
 
 リンク: BCNランキング
  ソニー、デジ一眼シェア、じわじわ上昇 低価格モデルの拡販に照準
 http://bcnranking.jp/news/0808/080808_11488.html

さらに、面白い動きをしているのがフォーサーズ(http://www.four-thirds.org/jp/)を採用したメーカーの動きです。フォーサーズはオリンパスとコダックによって提唱されたデジタル一眼レフカメラの共通規格です。まだまだ採用するメーカーは増えてはいませんが、次の動きを見せ始めています。それがオリンパスとパナソニックが決めたマイクロフォーサーズという、フォーサーズの拡張規格です。

 リンク: ITmedia D LifeStyle
 ポケットに入るデジ一眼――「マイクロフォーサーズシステム」発表     
 http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0808/05/news077.html

そもそもこれまでのレンズよりも小型のレンズを作ることができる規格になっています。そのさらにマイクロです。これまでのデジタル一眼レフの入門機よりも圧倒的に小型で軽量のデジタル一眼を作ることができます。すでにパナソニックからは製品が発表されています。

Panasonic LUMIX DMC-G1
リンク:http://panasonic.jp/dc/g1/index.html

またオリンパスからもマイクロフォーサーズで製品を開発していることがリリースされています。

 リンク: オリンパス ニュースリリース:
 「マイクロフォーサーズシステム規格」に準拠した
 レンズ交換式デジタル一眼カメラの開発について
 http://www.olympus.co.jp/jp/news/2008b/nr080922mfourthirdsj.cfm


つまり、今、デジタル一眼レフを選ぶということに関して、これまでないほどのバラエティさがあり、それはそのままデジタル一眼レフ市場がそれだけ成長してきたということを意味しています。


▼姿勢と思想

デジタル一眼レフで写真を撮るということは、いわゆるコンパクトデジカメで写真を撮ることとは質的に決定的に異なることがあります。それは「写真を作る」ということがデジタル一眼レフは可能だということです。

そのため、同じようなスペックであっても、撮れる写真においてコンパクトデジカメ以上に各メーカーの特徴が出ます。そして、高級機であればあるほど、その特徴はそのまま撮影するユーザーに自由度の高さを提供してくれます。

これは何を意味しているでしょうか? これはメーカーにもユーザーにもひとつのことを要求してきます。それは「写真というものをどう考えるのか?」という姿勢です。

つまり、デジタル一眼レフを購入するに当たってはどのメーカーのデジタル一眼レフを買うか? そのメーカーのどの機種を買うか? ということよりも、ユーザーとしては「どういう写真が撮りたいか?」ということこそ考えるべきことなのです。そのイメージがない状態で、ただ写真を撮っていても、機械に振り回されるだけになってしまうでしょう。

そしてメーカーとしては「写真というものをどう考えるのか?」ということは決して「カメラという機械をどう考えるのか?」ということとイコールではありません。それはどういうことかというと、機械に縛られると写真を見失うということではないかと考えています。

その意味でいうとカメラメーカーとしては最後発のソニーがαマウントを取得したことで、逆にαマウントに縛られているように見えます。フォーサーズやマイクロフォーサーズのような小型の規格や動画対応などといった、これまでのデジタル一眼レフにない動きはソニーこそやるべきであったように思えるのです。

しかし、写真ほどむずかしく、それ故に面白いジャンルというものもそうそうありません。まだまだこれから面白くなっていきそうです。1ユーザーとしてはこの混沌を楽しみたいものです。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○趣味空間 「Micro Four Thirds」の発表  2008/08/06
 まずマイクロフォーサーズの話をする前にフォーサーズとは?という
 ところから説明しますと、現在デジタル一眼レフカメラには様々な
 撮像素子の大きさの規格があります。代表的な規格はAPS-Cサイズと呼ばれ、
 ほとんどのデジタル一眼レフカメラはこの規格を採用しています。
http://hobbyroom.blog.so-net.ne.jp/2008-08-06


○安田理央の恥ずかしいblog  2007/05/09
 「デジタルカメラ2.0」(美崎薫 技術評論社)
 「デジタルカメラ2.0」に話を戻しますと、ここでは「デジカメは、
 ヴァネヴァー・ブッシュが提唱したハイパーテキストシステム『Memex』を
 彷彿させる」「ディスプレイが大型化されていくとデジカメは写真そのもの
 として認知されるようになるだろう」「カレンダー型のサムネイル表示と
 いうのはデジタルカメラの液晶を、まるで手帳かカレンダーのように変貌
 させてしまう」といった、デジタルカメラをデジタルなカメラという存在
 だけには終わらせないという美崎氏の「思想」がヒシヒシと伝わってきます。
http://d.hatena.ne.jp/rioysd/20070509/p1


○ITmedia News  2008/08/05
 一眼レフをもっと小型化「マイクロフォーサーズ」 オリンパスと松下が策定
 オリンパスイメージングと松下が、一眼レフデジタルカメラ用の新規格
 「マイクロフォーサーズシステム」を策定。センサーサイズを同じままで
 フランジバックを半分にするなどし、ボディとレンズを小型化する。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0808/05/news084.html


○Photokina 2008(YouTube映像 04:46)
http://jp.youtube.com/watch?v=WWm8bxSKvfU


○独「フォトキナ2008」現地報告 ─日経トレンディネット
http://trendy.nikkeibp.co.jp/digital/specialsite/photokina08/


○読者と作る、カメラと写真のコミュニティ ---カメラマンWeb
http://www.digi-came.com/jp/


○DigitalCamera.jp
http://www.digitalcamera.jp/


○デジタル一眼ライフ
http://d1-life.com/

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/847