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禁煙法下、飲食店の救世主 屋外用暖房がエコロジストの標的に

 フランスでは2008年1月から閉鎖された公共の場およびレストラン、ナイトクラブ、煙草屋併設のカフェなどの室内空間が一切禁煙になった。喫煙人口の多いフランス、その影響で増えているのがテラス席。日の長い夏日にカフェのテラスで新聞を広げ、エスプレッソを飲みながら、何時間も談義をしたり、街行く人の人間ウォッチングをしたり、というのがパリの典型的な絵であった。

 禁煙法が適用されて、客足が鈍るかと思われたカフェやレストランの救世主が屋外用の強力暖房器具。ガス又は電気暖房の熱風で頭部から暖められるおかげで、冬でもテラスでコートを脱いで、くつろいで煙草を吸いながらお茶が飲めるようになった。

 そんな風潮に待ったをかけたのが緑の党、エコロジストのノエル・マメール、マルティン・ビラール、イブ・コシェの3議員。フランスで年間25000台売れている屋外用暖房機器具は、必要以上に街の温度を上げ、二酸化炭素も排出している。世界が真剣に取り組んでいる環境保全のことを考慮し、店舗と個人宅の屋外への暖房器具設置を禁止するべきとの新案を10月29日に国会に提出した。

 暖房器具のおかげで、町中の温度が上昇している。毎時1キロのプロパンガスを燃やすと、3キロの二酸化酸素が排出されるという研究結果があり、排出二酸化炭素を削減しようとしている政策に反している。エネルギー資源節約が世界中で議論のテーマになっている中で、エネルギー消費の多い暖房器具を使用するのも反対理由のひとつだ。緑の党は、ガスや電気暖房の替わりに、テラス席ではコートを着たままで、毛布で暖まる古典的な方法をとるべきだと主張している。

 しかし、室内での喫煙が禁止された今、屋外に置く暖房器具まで禁止するとなると、今年はなんとかテラス席で喫煙客を確保して首をつないだレストランやカフェ稼業をつぶすことになる、とロビー・グループは反対している。暖房器具設置と電気・ガス代は安くはない。ある店主によると、ガス暖房一台で、一ヶ月200ユーロ、電気ならば500ユーロの光熱費がかかり、設置代は全部で8000ユーロにもなったという。それだけの設備投資をしても、テラス席で飲食してくれる客が見込めるならば、商売になる状況なのだ。

 たしかに、テラスに設置されているガス暖房機は、室内と変わらないくらい温めてくれる。煙草を吸いたい人はもちろん、中で窮屈な思いをしたくない客も、暖かいテラス席があれば、そちらに席を取りたくなる。快適さを追求する人間の欲望と、昨今話題の環境問題、どちらに軍配があがるかは、ここ1年くらいで結果がみえてくるだろう。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○ニコラのオランダ生活 「今日が最後」2008/07/01
 果たしてこの禁煙法が原因で、どれだけの飲食店が倒産するのか、
 はたまた功を奏するのか・・・その辺は分かりませんが、どちらに
 しても結果が見えるのは暫く経ってから。
http://nicola.seesaa.net/article/101911340.html


○ベルリンより -gruess Dich!!- 「健康の為にやるときゃ、やる!!」2008/03/11
 何だかんだ言って「俺達ゃ吸うんだ!」なんて法律おかまいなし
 なんじゃないのー。なんて思っていたんですけど、灰皿なくなっていますね。
http://gruseausberlin.blog112.fc2.com/blog-entry-92.html

 

 


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