Entry

「洋服やブランド物はネット、ケータイで買う」時代が来た

 洋服やブランド品はインターネットでは売れないという「定説」がひっくり返りつつある。ファッションアイテムやアクセサリーのネット通販が売り上げを伸ばし、これまでウェブ販売を手控えてきた有力ブランドも相次いで参入。リアル店舗で商品が売りにくくなった2008年は、ファッション業界にとって「ネット販売元年」になったようだ。

 ファッションのインターネット通販で最強と呼べるのが「ZOZORESORT(ゾゾリゾート)」(http://zozo.jp/)。会員数は9月に100万人を突破し会員の男女比がほぼ半々。急成長を続ける同社は2007年12月に東証マザーズへの上場を果たしている。

 「ビームス」「ユナイテッドアローズ」「シップス」「ジャーナルスタンダード」などの有力セレクトショップが参加しているのは、「ゾゾタウン」の強みだ。個別のブランドも「ゾゾタウン」を実質的なデファクトスタンダードと見て流れ込み、「ゾゾタウン」の取り扱いブランド数は1500を超える。ブランド集積度を強みとしてきた百貨店業界だが、これだけのブランドを扱う百貨店はなく、その意味では「ゾゾタウン」は百貨店を凌駕する。

 ネット通販市場が拡大し、通販サイト同士の競合が激しくなる中、特色を持たせた通販サイトが増えている。「マガシーク」は人気女性誌「CanCam」「non-no」「Ray」「with」「InRed」などに掲載されているアイテムが買える通販サイト。こうした取り組みが実現する背景には、「雑誌冬の時代」を背景に、出版社が通販ビジネスに新たな収益の道を求めている事情も関係しているようだ。運営会社のマガシークは2006年11月には東証マザーズに上場した。

 「セレクトスクエア」はその名の通り、「セレクトショップのセレクトショップ」といった造りだ。「ビームス」「ユナイテッドアローズ」などの大手セレクトショップの商品が売り物になっている。

 バイヤーの目利きを売り物にした通販サイトも人気を集める。「waja(ワジャ)」(http://www.waja.co.jp/)は「世界のバイヤーが自信を持ってオススメする海外ファッション通販サイト」を掲げる。世界中のバイヤーから送られてきた商品を、wajaが検品し、写真を撮って、サイトに掲載している。販売や配送、アフターサービスはwajaがバイヤーとユーザーの間に立つ形で引き受ける。

 百貨店はこれまでファッションのネット通販には及び腰だった。しかし、その「常識」も変わりつつある。

 高島屋は9月、ファッションアイテムの通販サイト「タカシマヤ ファッションモール」を開いた。携帯電話でも買える。130ブランド、1万5000品目という本格派だ。これまでのように店頭の品を回すのではなく、サイト専用の商品の流れを作り、配送を円滑にしているところにも、高島屋の本気がうかがえる。

 ブランドイメージを大事にしたがるラグジュアリーブランドは、ネット店舗はリアル店舗に比べ販売チャネルとしてのイメージが劣ると見て、ネット販売を控える傾向が強かったが、変わりつつある。

 「ティファニー」が2005年に日本語サイトでの通販を始めたのを皮切りに、2007年には「ルイ・ヴィトン」「プラダ」がウェブ販売をスタート。2008年に入ると、「セリーヌ」「カルティエ」も参入した。つい最近になって「エルメス」も日本語の通販サイトをオープンした。

 セレクトショップ自身も自前のネット販売を強化しようとしている。ベイクルーズは携帯電話専用サイト「スタイルクルーズ」での通販を始めた。取り扱うアイテムは約2000品目をそろえた。パソコン用のネット通販サイトも先行してオープンしている。各ショップのこうした取り組みには、売り上げへの期待もさることながら、ショップの顧客層を厚くしたいという狙いも潜んでいる。細やかな情報発信や、「上顧客」扱いの特典などを通して、来店機会を増やしてほしいという戦略が透ける。

 ファッション企業も自前のオンラインショップに力を入れ、パソコン向けだけではなく、モバイルからもアクセスできるようにする動きが加速している。三陽商会は直営のウェブショップ「SANYO iStore(サンヨー・アイストア)」を運営しているが、携帯向けサイトも11月にオープンした。

 「画面が小さい」「色や手触り感が伝わりにくい」「安っぽく見える」---。携帯上の販売サイトで服やアクセサリーを売るには、こんなネガティブなイメージがつきまとってきた。しかし、パソコンを持たず、携帯がネットとの唯一の接点となる層が増えてきたのにつれて、こうしたハードルはユーザーの側からはあまり気にされなくなりつつあるようだ。狭い画面の中でも買い気をくすぐるような、販売側の表示、演出の努力も効果を上げ始めた。

 ファッションショーをイベント化した「東京ガールズコレクション」を運営する「ブランディング」(http://www.branding.jp/  旧ゼイヴェル)は、ショーと携帯サイトをつないで、新たな販売業態を生み出した。巨大な会場で開催される同コレクションの観客席では、目の前の人気モデルが着ている洋服を、観客が携帯を通じてその場で購入できる。ショーの会場では片手に携帯を持ちながら、観客がショーに熱狂し、その熱気もさめやらぬうちに購入サイトにアクセスする。リアルショップとも通販サイトとも違う、新たな売り場がランウェイと客席の間に出現するのだ。同社の年商は100億円を超えている。

 技術面での改良も進む。米国ブランド「コーチ」の日本法人、コーチ・ジャパンは9月、携帯電話向けサイト「コーチ・モバイル」を開いた。このサイトに搭載したのが仮想の「フィッティングルーム」。自分の身長を入力して、似た高さのモデルを選び、画面上でバッグを持たせて見栄えを確かめる機能を備えている。

 携帯電話向けサービスを得意とするネット企業の参入も続く。無料ゲームサイトに強みを持つ携帯交流サイト「モバゲータウン」で知られるディー・エヌ・エー(DeNA)は子会社のモバコレを通じて、ファッション系の携帯通販サイト「モバコレ」を運営している。4月には男性向けの別サイトも開いた。数センチ四方の限られたフィールドでの演出に独自のノウハウを持つ携帯専業ネット企業はこの先、ファッション販売に新手法を持ち込んでくるに違いない。

 ウェブや携帯での販売が定着していけば、ファッション販売のあり方も変わっていくかも知れない。平面的な表示になりがちなディスプレーでは、生地の風合いや手触りなどは伝わりにくい。キャッチーな売り文句や、有名人とのコラボレーションなども「即決買い」を誘う。そうした買い手の気を引く仕掛けやプロモーションが期待される。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう  2008/10/21
 「ゼイヴェル改め、ブランディングの大浜史太郎社長はかなりの手練」
 「極東の小国でゴスロリに続くキッチュでおもしろいノリのファッションが
 流行ってるぞ!」という、モードの世界からの半ば珍獣を見るような好奇の
 視線に晒されることもいとわない、すべてを見越した決意がなければ
 こんなことはできません。
http://nomurayo.seesaa.net/article/108381768.html


○TOKYO GIRLS COLLECTION in BEIJING 2008 1st stage(YouTube 05:59)
http://jp.youtube.com/watch?v=s9LfL1HJyi4


○Fashion e-Biz Press  2008/09/20
 【英】ファッションECサイト「asos.com」が急成長
http://fbiz.blog17.fc2.com/blog-entry-54.html


○アークウェブ ビジネスブログ 2008/10/30
 「COACHの携帯Flashサイトに見る、Flash Liteで魅力的な携帯サイトをつくるコツ」
 数種類のバッグは、シルエットのモデルさんに試着してもらえる機能が
 ありました。バッグの大きさを見るのに使うようです。一工夫した
 ユーザーエクスペリエンスはやはり記憶に残りますし、ブランド側の
 気配りを感じさせますね。
http://www.ark-web.jp/blog/archives/2008/10/coach_mobile_advantage_by_mobile_ria.html


○シブヤ経済新聞  2008/03/13
 「強め大人ギャル」向け新ファッション誌--モバイル通販と連動
 通販機能では、モバイル向けファッションショッピングサイト「モバコレ」
 と提携するほか、掲載商品の購入者には人気モバイルポータル
 「モバゲータウン」で使用できる限定アバターアイテムを無料提供するなど、
 人気モバイルサイトとの連携でクロスメディア化を進める。
http://www.shibukei.com/headline/5087/ 

 

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/894