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日本のパーティーをもっと魅力的に!

 年の瀬も迫り、忘年会やクリスマスパーティーなど多種多様なパーティーが各地で催される季節になった。年が明ければ、「あっ、アッ、ハッピーニューイヤー!」とあいさつし合う、新年祝賀パーティーも舞台袖から顔を覗かせて出番を伺っている。さまざまなグループに属していると、忘年会が重なることもよくあることで、年1回の忘年会が唯一の存在意義という会もあるやら、ないやら……。

 偉い方は肩書きが幾つもあるので、さまざまな忘年会に出席しなければならないし、大きな会の忘年会であるならば、壇上で乾杯用の、すでに泡のなくなったビールグラスを握り締めながら、一年間を振り返る演説もしなければならない。

 パーティーも千差万別で、気が急くパーティーもあれば(そんなに多くないか?)、足が重くて前に進まないパーティー(ほとんどか?)もあるのだ。

 旅行業界もまた、パーティー好きである。私は新聞記者なので、新商品の発表会や、観光地のPRイベントなどに取材で行くことが多い。そこでは必ず「懇親会」という名のパーティーが設定されている。そのほとんどがホテルでの立食パーティー形式で、各地域の特産品などが料理として出されることが多い。

 また、旅行会社や旅館などで形成される組合の会合(主に温泉地で開かれる)に取材で訪れることも多い。昼間の会議のあと、夕刻には背広から浴衣に着替えて、そこでも「懇親会」という名の宴会が設定されている。そのほとんどが旅館の大宴会場で、コンパニオンの御姐さんがお酌をしてくれる。興じてお酌をし合った結果、「この大広間は日本のどこで、何の会だったかな?」と一瞬、不確かになることもある。私は知らないが、ファッション業界やIT業界ではもっと斬新で洒脱なパーティーが開かれているのだろうか?

 公式なイベントや会合、記念式典などのパーティーでは、冒頭に来賓の方々による挨拶ラッシュが待ち受けている。その挨拶する人の頭数は、出席者の参加人数にほぼ比例して増え、挨拶の内容も出席者の参加人数にほぼ比例して堅苦しくなるので、たとえば根性の足りない人や、老いさらばえて足腰の弱っている人、お腹がペコペコな人には辛抱堪らない状況になっている。

 なかには、公務ご多忙のため出席が適わなかった偉い方の形式的な祝辞を、秘書の方だか、事務方の人だかが5分くらい代読している立食パーティーもあり、「様式美を重んじる日本の真骨頂ここにあり!」という場面によく出会ってきたし、これからも同じくらい出会うのだろうと思っている。だけど、これらは仕事上のパーティーで、「ビジネス優先」や「格式こそすべて」という使命が明確に存在しており、「楽しさ」を最優先にしているわけではないので、当たり前の話かもしれない。

 さて、ここまで随分と長い前置きを書いてきたのだが、「日本のパーティーをもっと魅力的に変えたい!」と強い意志を持って今年、日本パーティープランナー協会(JPPA、http://www.partyplanner.jp/)が設立された。主宰するのは食空間プロデューサー、テーブルコーディネーターとしても活躍する丸山洋子さん。「日本に『パーティー』という言葉が入ってきたのが明治以降のことで、100年経てもなお消化できず、現在も飲食中心の『宴会式パーティー』から脱却できない」と現状の日本のパーティー事情にもの足りなさを感じている。

 「画一的で、テーマ性や演出力が欠如している――」。まさにその通りである。今のご時世、予算を削ることはあっても、パーティーの演出に多大なエネルギーを使う人は、そう多くはない。まず、パーティーの演出家が簡単に思い浮かばない。煩わしさを省いて、ホテルなどのプランに丸投げするほうが簡便である。

 丸山さんによると、「米国ではパーティープランナーやパーティーデザイナーは当然のように認識されており、フラワーデザイナーのような人が兼ねている場合が多い」のだという。日本パーティープランナー協会においては、フラワーデザイナーやテーブルコーディネーターで活躍している人ばかりではなく、帝国ホテルの宴会担当者なども講座を受けている。半年間受講後の検定試験によって「パーティーデザイナー」、さらには上級コースの「パーティープランナー」の認定書がもらえる。

 丸山さんは、「マルチメディア時代は顔を合わせなくても交信できるが、人と人とが出会い、コミュニケーションを取ることの重要性がむしろ高まっている。アナログ的要素が必要な時代」としたうえで、「パーティーは人と人とがどう出会うか、どう新しいネットワークをつくるかが大切。演出によってよい出会いができる空気づくりを広めていきたい。そのためには、もっとクリエイティブな、次代のパーティースタイルを確立する人材育成が今こそ必要。決してセレブなパーティーではなく、日本のもてなしの心を感じられるような感動的な“手づくり感”のあるパーティーをつくる人材を育成したい」と夢を語る。

 バブル期には、パーティーの企画といえば、とにかくお金をかけた華美な演出のパーティーがあちこちで渦巻いていたが、今はいかに心を込めた温かみのある“手づくり感”を大切にするかがカギを握る。「香り」「音」「光」をほんの少しだけ操ったさりげない演出に、参加者たちは知らず識らずのうちに紳士や淑女のように魅力的な心持ちに変身させられてしまい、新しい出会いの場になるのかもしれない。

 「昔、」といっても私が二十四歳のときのことだが、大野君という、ホームパーティーを企画するのが好きな友がいた。「自分で料理を作って、狭いけど自分の部屋に親しい友人たちを招くんだ」と少し照れて言った。彼の口から「ホームパーティー」と聞いて、私はスコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャッツビー』で演じられた絢爛豪華なホームパーティーしか思い浮かばなかった。当時、畳が4枚半しかないボロアパートでの生活を営んでいた私は「地球の裏側のようなことをいう男だな」と感心したものだが、今こそ彼のようなパーティーに対する強烈な情熱を持つ人材が必要なのかもしれない。

 経済状況が悪化するなか、おそらく今後、パーティー予算は減れども増えないだろう。それでは、会場を狭くするのか、料理を減らすのか、主催者は限られた予算の中であれこれ悩むだろう。それならば、情熱に溢れ、プロのアイデアと腕前を持つパーティープランナーやパーティーデザイナーの力を借りるのも一つの手だ。限られた予算のなかで、アイデアを出し合いながらきっと印象的な装飾や効果的なサプライズを演出してくれるだろう。

 


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