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レシート広告の未来形 --購買履歴を反映した個別広告の一大システム、いよいよ発動--

(記事要約)

2年間で収集した8千万人の個人の購買記録を元に、今週カタリナ・マーケティング社がPointer Media Network(ポインターメディアネットワーク)を立ち上げた。このアドレス可能なネットワークシステムを使うと、全米のスーパーマーケットチェーンと、数千のドラッグストアや小売店の会員カードを持っている顧客に対して、商品を購入すると同時に、買い物客に個別の広告をレシートに印刷可能となる。

広告手法は、様々な方法が考えられる。例えば、単純にブランド認知を促進するものから、そのまま即販売行動へ繋がるような、仕組みにも応用可能だ。

「これまで広告代理店は、顧客をステータス面、心理面、行動面からターゲットを絞ることに苦労している。しかし、このカタリナのデータがあれば、ターゲットの絞り方はまったく異なる次元になる」とは、(米国大手広告代理店の)WPPグループ、メディアエッジシアのディレクター ソマー氏の言葉。

カタリナの調べによれば、たった2.5%の消費者しか、80%の代表的なブランドを購買していないことが分かった。これまでの伝統的な考え方では、20%の消費者が、80%の特定のブランドを購入するとされていた。しかし、この新しい研究結果によると、消費者の購買パターンは、メディアの消費行動に近く、非常にもろく、新しいブランドや、ブランドの認知度が高まることで、変化するということがいえる。

現在の下降気味の経済状況の中では、広告予算は限られている。この1年間、Pointer Mediaを試験的に利用してきた果物加工メーカーのDole社のマーケティングディレクター バス氏は語る。「このシステムはターゲット層への高い訴求力が得られ、高い確率で消費者行動に影響を与えることができるもので、そのことは、企業のトップマネージメントから投資に対する理解を得やすい。」

12月8日、アドウィークより
http://www.adweek.com/aw/content_display/news/media/e3ie8946cda1b3f6da213b412c53f55cafe?pn=1

 

(記事解説)

このPointer Media Network (ポインターメディアネットワーク/http://www.pointermedianetwork.com/)のウェブサイトによると、筆者自身もメンバーズカードと呼ばれる無料の会員カードを持っていて、このネットワークにも加入している企業が見当たる。

米国のスーパーマーケットは、日本のそれに比べて、「会員」と呼ばれる人への「お得感」を煽るのが上手だ。例えば、会員だと10個で$10、会員でないと一つ$1.2といったものなど。こうしたスーパーやドラッグストアの会員資格の敷居は非常に低く、IDさえ見せずになることができる。指定のフォームに、名前と住所と電話番号を記載し、プラスチックのクレジットカードサイズのカードと、ほとんどの場合、車や家の鍵と一緒に管理できるように、小さなプラスチックカードをもらう。これだけ。さらに万が一カードを忘れたとしても、ほとんどの場合はレジで、登録した電話番号を打ち込んでもらえばサービスを受けることができる。

ところで、このPoint Media Networkのすごいところは、そのデータの「量」であろう。一つのスーパーチェーンがコツコツ集めたデーターではなく、全米中にネットワークを持つ企業と、そして全米中に販売網を持つメーカーの、全ての情報が一つになっているのである。サイトによれば、8千万人分の顧客情報が得られているとのこと。規模が違う。そして「質」についても、このネットワークに加入することで、詳細なトラッキング、分析データなど、膨大なデータをきちんと「加工」した状態で把握することが出来る。

カタリナ社が発表した研究結果を考えると、代表的な80%のブランドも、うかうかしていられない。誰が本当の「顧客」かを把握し、さらに各消費者へ個別の宣伝広告活動をしていく必要が出てきた。近い将来、あらゆる広告活動が、個人別に全く異なる様相を呈するかもしれない。レシートにはじまる個別広告が、どこまで変化していくか、これからが楽しみだ。

 


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レシート広告の未来形 --購買履歴を反映した個別広告の一大システム、いよいよ発動-- | 専門家や海外ジャーナリストのブログネットワーク【MediaSabor メディアサボール 】 2008年12月24日 15:11
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