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今年を振り返る パラダイム・シフトの時

  • 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長 
  • 谷口 正和

■ついに来た変革の時
 
 100年に一度と言われる経済危機に見舞われている今日、我々はどのような姿勢でこの局面に立ち向かうべきなのだろうか。

 一番重要なことは「変革に学ぶ」と言うことである。変革に学び、その本質をどう理解し、未来へ向けてどのようなビジョンを描くか。オバマ氏の勝利を、「個人の声の結集」「地球全体の支持」と見切ったときに、次なる大きな流れの基本は見えてくる。それは「個人の集合社会」「地球全体経営」の時代が来ると言うことである。今年の最も大きなパラダイム・シフトだったオバマ新大統領の誕生は、この大変革の時代の最大の基本潮流だと言えよう。


■「身の丈経営」

 では具体的に、どのような時代が来るのだろうか。それは「身の丈」コンセプトの時代が来ると言うことだ。もはや地球人口は、一人一人が勝手に自己欲望のままに生きられる水準を超えてしまっている。20世紀の拡大主義を終わらせ、丹念に丁寧に自己の人生を生きる「身の丈」人生経営の時代に入ったのだ。

 ここに発想転換の基本理解がある。身の丈、腹八分目、そのような自己抑制の効いたライフスタイルが世界的に主流になる。限りある原資を分かち合い、マイナス成長を質の向上へと転換させる「クオリティ・オブ・ライフ」の時代の始まりである。

 世界は我々の暮らしのレベルが10とすると、2であったり3であったりレベルの人が何億人もいる。彼らの10レベルに到達したいというエネルギーが、やはり21世紀の最大のエンジンになるに違いない。しかし、全員が10レベルになることは、もはや不可能な域に達しているのだ。人類は全員満足レベルを超えてしまったのである。

 だからこそ、全員8以下で暮らしていける方向を探るしかない。それゆえ「身の丈経営」なのである。石油エネルギーを好き放題使って発展したアメリカ型国家経営も、企業経営も、人生経営も、もはや立ち行かないのだ。量的拡大を望まず、質的深まりを求める商品やサービス、店舗や業態が支持されるだろう。一歩一歩、1時間1時間を丁寧にする市井が、すべての企業、すべての消費者に求められる時代が来る。


■矛盾の清算

 ビッグスリーが苦境に立たされている。これはあまりにも当然な結果だろう。トヨタの半分しかない生産効率でクルマを量産し、借金大国アメリカの最後の借金で救われたいと願い、拒否にあい、いままた路頭に迷っている。トップが法外な報酬を得、そのツケをリストラに求めること自体が、巨大な矛盾そのものだといえよう。必要でない産業も企業もいずれ滅びる。その「いずれ」がついに来たのだ。この決着は2009年以降の最大の課題になるだろう。20世紀の最後のツケが回ってきたのだとも言える。だからこそ世紀のパラダイム転換がいま進行しているのである。


■地球経営×個人経営

 地球経営と個人の人生経営、それがリンクしてひとつになった現象が「エコ」である。エコとサステナビリティ、これは2009年の最大の課題と言うだけではなく、21世紀全般の最大の課題である。エコとサステナビリティを拒否する企業も商品も、次なるパラダイムの登場によって、必ず行き詰るだろう。アメリカがヘゲモニーを握っていた「欲望資本主義」は終わったのである。

 車で移動していた時代から、自転車で移動する次代へ。さらには歩くことで移動する時代へ。すがすがしい朝と穏やかな夕暮れの中で暮らす時代へ。つまり世界が求めているのは「平安な日々」なのである。

 あまりにも大きかった流れは急には旋回できないだろう。しかし私たちは、次なるパラダイムに向かって一歩ずつ歩むしかない。 

 その具体的な方法とは「代表顧客」に静かに耳を傾け、そのいっていることの意味と本質を理解し、次なるコト起こしの準備に入るしかない。

 巨大なパラダイム・シフトが教えてくれていること、それは旧来の成功概念を捨て、顧客と時代から次なる価値観を学ぶことである。

 

 


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