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「Waltz With Bashir」がFlashアニメ初の全米映画評論家協会賞 最優秀映画受賞

5年前、Flashという技術を使って制作されたアニメ番組は、全米に5つにも満たなかった。それが今では50を越えようという昨今、ネット上でもFlashアニメに関する情報発信サイトが続々登場している。中でも、エミー賞にノミネートされたFlashアニメの番組「Coconut Fred's Fruit Salad Island(http://www.youtube.com/watch?v=-5v-e0gXk60)」で、プロデューサを務めたアーロン・シンプソンズ氏がはじめたサイト、coldhardflash.comは、コンテンツが毎日更新されるサイトとして、業界関係者からも注目されいる。ちなみに同氏は、米国Animation Magazineが選んだプラットフォームとトレンドにおいて、この世界を変えるであろう13人に選ばれているほど。

そのcoldhardflashの、1月4日のブログ(http://coldhardflash.com/)で、年末から話題になっているFlashアニメ映画「Waltz With Bashir」(ウォルツウィスバシャー:http://waltzwithbashir.com/)が、全米映画評論家協会賞の、最優秀映画に選ばれたことが書かれている。85年の「Babe」以来、アニメーションの作品が受賞したのは2回目。もちろんFlashアニメが同賞に輝いたのは、初めてである。

http://www.youtube.com/watch?v=4B86ziCwcmo&feature=related


この作品は、イスラエル人のアリ・フォルマンが、監督、脚本、プロデュースを一人でこなし、たった8人のアニメーターと、4人のイラストレーターで制作。それも、80%のキャラクター作成は、たった一人の手によって生み出されたというではないか。予算はたった$1.5ミリオン(1億4千万円)。作品は年末クリスマスに公開。すでにカンヌ映画祭でパルムドールを受賞し話題を呼び、その後も外国の賞を受賞し、すでに今年度のアカデミー賞の外国語部門賞にもノミネートされている。

この作品は、フォルマン氏のイスラエル軍に従事していた頃の経験談に基づく作品だ。19歳で入隊、40歳で早期除隊すると、イスラエルでテレビドキュメンタリーの制作者となった。フォルマン氏は、自身の記憶が一部喪失していた。とくにレバノン戦争の記憶がない。しかし、街中で泣き叫ぶ女性や子供達が飛び出してくる悪夢にたびたびうなされた。こうした戦争精神病に対するセラピー目的で、自身や仲間の経験をドキュメンタリービデオにしたものを制作したことが、同作品を作るきっかけとなった。

しかしドキュメンタリー作成当時からすでに頭の中では同作品をアニメーション化したいと考えていたそうだ。というのも、思い出や空想や記憶を喪失している部分に焦点を当てていたからだ。「アニメの方が、もっと自由度が増す」と考えたフォルマン氏は、イラストレーターのデヴィッド・ポロンスキー氏と、アニメーションのディレクター、ヨニ・グッドマン氏とともに、ストーリーボードを考え始める。

出来上がった作品は、2006年に公開されたキアヌ・リーヴス主演の映画「A Scanner
Darkly(スキャナー・ダークリー:http://jp.youtube.com/watch?v=TXpGaOqb2Z8)」に、いくつかのアニメーションが似ている、という批判もあるが、クリエーターのポロンスキー氏とグッドマン氏いわく、「スキャナー・ダークリー」が、実際の実写による映像をアニメーションに書き出すという技術を採用しているのに対して、「ウォルツ・ウィス・バシャール」は全く異なる技術を使っているという。

「われわれはFlash技術、つまり2Dの技術を基にして、この映画を製作した(つまり実写撮影などはもちろん行っていない)。 通常のアニメーション技術では、200から300人の技術者が必要だが、われわれはFlashのシステムを改良して、高品質のアニメーションを制作したのだ」とはグッドマン氏の言葉。「ピクサーに負けず劣らずの映画制作を、たった$1.5ミリオン(1億4千万円)で行えたのは、家庭用コンピューターをものすごい高度なレベルまで引き上げたから」とは、フォルマン氏の言葉。

これからの時代、Flashなどの技術を駆使したアニメーション映画がこれからもっと登場してくるに違いない。家庭用のパソコンが生み出す映像のレベルは、もっともっと高くなることだろう。内容次第、第二のフォルマン氏が、世界の名の知れない町からひょっこり出てくるのもそう遠くないだろう。

LATimeの記事参照:
http://www.latimes.com/entertainment/news/la-ca-indieeye28-2008dec28,0,2445617.story

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○The Falconer's Den  2008/12/09
 「バシールとワルツを Waltz With Bashir」
 アリ・フォルマンがアニメーションを選んだのは、もちろん友達のプライバシーを
 守るためもありましたが、アニメーションの無限なる表現力を生かしたかったこと
 もあったと思われます。特にこの映画が‘記憶’を扱っているからこそ、現実と
 幻想、夢と記憶の境界を自由に往来できる媒体が必要だったでしょう。
http://sibauchi.blog40.fc2.com/blog-entry-16.html

 

 


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ã??ã??ã??ã??ã?¨ã?¯ã??ã??ã??ã??Waltz With Bashir 2009年01月20日 17:34
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