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不況だからこそ独立。7年連続でフランスの起業数がうなぎ昇り

 フランスは、アメリカや他のアングロ=サクソン国に比べ、社会保障が手厚いので、冒険精神、起業精神が薄い。が、2008年は、前年より4000人も多い325700人がフランスで起業している(INSEE国立統計局データ参照。フリーランサーなどの個人事務所開業を含む)。7年連続で起業数がうなぎ昇りになっているのだ。景気の悪さ、失業率の上昇、倒産企業続出と、経済状況のマイナス要素が、逆に起業の後押しをしている。

 企業の業績悪化に伴うリストラを期に、あたためていたアイディアを基に会社を立ち上げる、手厚い失業保険を貰っても、次の仕事が何時見つかるか不安なので、自分の出来る事を自由業として行っていく、といったように、従来のフランス人の仕事に対する考え方が、経済状況を反映して徐々に変化しているのだ。

 もちろん、2002年のラファラン首相が導入した起業推進政策も功を奏している。1ユーロ起業の認可、申請書の簡略化、補助金の支給など、中小企業発足を促すための政策が、やっと日の目をみている。社会保障に重点を置きすぎたために、企業側の負担の重さ、職業税の重圧、従業員の解雇の難しさという経営者への重圧が、会社をつくることを躊躇させていたのだ。

 ネットで会社登録ができるようになり、数分で自分の会社をつくれるようになったのも大きい。既に3万社がネット経由で新規企業登録をしている。自由業者のネット登録も2009年2月から可能になる。手続きの簡略化が、行政申請関連の複雑さで有名なフランスの変化の一大要因であるのは事実だ。

 起業内容は、初期投資が少なくてすむサービス業関連が圧倒的に多い。コンピューター、テレコム関連が筆頭で、2003年から2007年にかけて、この分野での起業が倍増した。 80年代にアメリカで起こったIT産業の起業ブームのように、アイディアを形にして、夢を実現、一気に大金持ちになろう、という考え方はほとんどなく、フランスでの起業の動機は、やっぱり「保身」。世界的に金融界も含め大きく揺れている現在、自分の会社をつくり仕事すれば解雇の心配がないとのフランス的な考え方自体はあまり変わっていない。

 


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