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フランスで編み物ブーム。その背景とは

 失業や倒産といった暗い世相のためか、フランスでは編み物が注目をあびている。今年2月にパリで行われた「編み物見本市」(http://www.aiguille-en-fete.com)は昨年比200%を記録するほど好評。毛糸を販売する手芸屋さんも、古くさいイメージからモダンに模様替えをするところが増えていて、ファッショナブルになっている。ジュリア・ロバーツが、編み物にはまっているとのゴシップも影響しているのだろう。2004年から始まったこの見本市、今回は、200社が出展、3万人が訪れた。パリのセレクト・ショップ、コレットもウール・アンド・ザ・ギャングWool and the Gang(http://www.woolandthegang.com)というウール専門ブランドを立ち上げた。モード界の流行でもあるのだ。

 編み物が流行っているのは、若い世代が、安上がりだからという理由ではなく(反対に材料費が高くつくことの方が多い)、物をつくる楽しさを満喫しているから。フランスもヨーロッパの他国同様、女性が編み物をする習慣があったが、68年の5月革命で、女性が伝統、家事を一切否定した風潮の中で、母親、祖母から娘に引き継がれるべき編み物の伝統的継承が失われてしまった。

 ここにきて、こつこつと自分でつくりあげる楽しみがブームに。手芸屋さんが大繁盛している。ボン・マルシェなどの大きなデパートの手芸コーナーは品揃えが充実して、週末ともなると若いお客で混雑する。フランスは、BCBGといわれるコンサバな服装がメインだったが、ここにきて若い世代は、自分らしさを服装で表現するようになってきた(東京やロンドンがお手本)。個性的な服やアクセサリーが、かっこいいとみなされるようになっている。フランスの硬直した社会も、少しずつ躍動しはじめたようだ。と、同時に失われつつある伝統、自分達のルーツは、失業や経済不況に疲れた若者をほっとさせる。その創造性と伝統性こそ、編み物がブームになっている理由だろう。

 ウール・アンド・ギャングのアートディレクターのウインター女子Nadège Winterは、「スピード社会の中で、時間をかけることの必要性というのを皆に教えていかなければならない」と語る。そして、一度編み物を始めると「癖になり、癒し効果がある」と分析する。物を必要最小限で大事に使う、という昨今のエコの流れも、編み物ブームを後押ししている。2006年から世界編み物の日(http://www.journee-mondiale-du-tricot.com/)が制定され、今年は6月13日に、編み物を普及させる街頭イベントがフランス各地で行われる。自分の好きな物を簡単に作る事ができるというのが人気の秘密だ。

 自分で身につけるものを作り出す事が癒しになるというのは、多くの人が消費社会に疲れてきていることの証明だろうか? 男性の間でも流行ってきているそうだ。

 

 


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