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持ち帰りコーヒーの代わりにエスプレッソ・マシンを買い始めた豪州人

<記事要約>

最近オーストラリア小売業協界(ANRA)が実施した調査で、「節約するために持ち帰りコーヒーを買うことをやめた」と答えた消費者が半数近くいる。

しかしながら、人々は自宅でカフェ・スタイルのコーヒーを淹れるために、エスプレッソ・マシンやグラインダー、コーヒー豆に投資していることが、ほかの数字によって示唆されている。

ANRAのリズ・ロドウェイ氏は、「過去半年で、コーヒー・マシンの小売は20から25%も伸びていて、何年も前に安いマシンを買った人たちが、アップグレードしているのが分かっています。品質のいい新しいマシンなら、地元のカフェと同じくらいおいしいコーヒーが飲めますからね」と言う。

国産のエスプレッソ・マシンは、300から2,500豪ドル(5月19日現在のレートで約2万2,000から18万4,000円、以下同)くらい。グラインダーは、50から200豪ドル(約4,000から1万5,000円)で、コーヒー豆一袋は約12豪ドル(約900円)。自分がバリスタになるなら、コーヒー・メイキング・コースの予算も必要だろう。

2009/5/10  Sunday Herald Sunより


<解説>

ささやかな幸せ――といったところだろうか。日本人が缶コーヒーを買うような気軽な感覚で、お気に入りのカフェに寄ってコーヒーを注文するのが、シドニーっ子の日々の暮らしの一コマ。「イギリス系のオーストラリアでコーヒー?」と思うかもしれないが、ことシドニーやメルボルンなどの都市部では、イタリア移民が持ち込んだエスプレッソをベースにしたカフェ文化がすっかり根付いている。

昨年スターバックスがオーストラリア国内にある4分の3の店舗を閉店したのも、コーヒーの人気がなかったせいなんかではなく、好みにあったおいしいコーヒーを淹れてくれる小粋なカフェがほかにいくらでもあるから。「わざわざ外資系チェーン店に足を運ばなくてもねえ……」という声はあちこちで聞いたし、閉店のニュースが流れても、大半は「やっぱり」という受け止め方だった。スターバックスのアジア・パシフィック地域の社長は、「オーストラリアにはとても洗練されたコーヒー文化があったということだ」とコメントし、ヨーロッパスタイルのコーヒー文化が定着していない国で成功した同社の優位性が、この国では通用しなかったことをあっさり認めている。

ここに来て、自宅でコーヒーを淹れて飲む人が増えているのは、景気後退の余波で、カフェ文化も新たな局面を迎えたということなのだろう。

おいしいエスプレッソ・コーヒーを飲むためには、ちゃんとしたエスプレッソ・マシンとグラインダーが必要なのはもちろんだけれど、たとえ同じマシンで同じ豆を使っていても、淹れる人によって、まったく異なる味になるのがおもしろいところ。使いこなすためには、ある程度のテクニックの習得が必須、と誰もが知っているせいか、半日から1日の実践的なコーヒー・メイキング・コースはこのところ大盛況らしい。誰かの家に行って、「何飲む?」「ラテお願い」という会話が交わされるのも、決して珍しいことではなくなってきた。

この記事に登場したカップルは、毎日2杯ずつコーヒーを飲むので、これまで毎週84豪ドル(約6,000円)使っていたのが、家で淹れるようになってから、毎週6豪ドル(約450円)のコーヒー豆代で済んでおり、468豪ドル(約3万5,000円)かかったエスプレッソ・マシン代も6週間ほどで回収できるという。そうなれば、たまにはちょっと高いコーヒー豆を、ということだってあるのかもしれない。

「オーストラリア国民の購買意欲は冷え込んでいる」という悲観的な報道が続く中、オーストアリア統計局(ABS)が発表した3月の小売販売高は、前月比2.2%増となった。

日本でも、「時々節約、たまに贅沢」がイマドキの消費者マインドを示すキーワードだそうだけれど、ガマンばかりじゃ、心がささくれだってしまう。コーヒーの持ち帰りをやめて節約する代わりに、決して安くはないエスプレッソ・マシンを買うという贅沢でバランスを取るのは、断然アリだと思う。ささやかな幸せを守るために。

 

 

 


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日本は"しまらー"、オーストラリアは"エスプレッソマシン" 2009年05月29日 13:10
日本では、しまらー急上昇の中、日本の真南のお国、オーストラリアでは、エスプレッソ......