Entry

3人のギターヒーローが語らう、ロックの深イイ話

(記事要約)

『不都合な真実(2006)』のデイヴィス・グッゲンハイム監督が発表した新作映画『It Might Get Loud』(直訳:うるさくなるかも知れない)は、ユニークな音楽ものドキュメンタリーである。ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)、ジ・エッジ(U2)、ジャック・ホワイト(ホワイト・ストライプス他)という3人の個性的なギタリストにあえて対象を絞り込み、3人のミュージシャンとしての肖像を描くとともに、エレキギターという楽器の歴史的かつ哲学的意義を、自由なエッセイ風に語っている。3人が一堂に会した座談会をメインに、個別のインタビュー、貴重なアーカイブ映像、3人のジャムセッションなどが収録されている。

2009/8/14/New York Times(文:A. O. Scott)

「It Might Get Loud」ソニークラシックスの公式ウェブサイト:
http://www.sonyclassics.com/itmightgetloud/dates.html

予告編のウェブサイト:
http://www.moviefone.com/movie/it-might-get-loud/36268/video/it-might-get-loud-trailer-no-1/26224765001/it-might-get-loud-trailer-no-1/26224765001


(解説)

8月13日、アメリカのメディアは、エレキギター「レスポール」の開発者として知られるレス・ポール氏の訃報を伝えた。そして、何ともタイミングよく、翌日14日、エレキギターを題材にした映画『It Might Get Loud』が一般公開された。奇しくも同作品には、「レスポール」を愛用するジミー・ペイジが出演していた。



評論家たちの『It Might Get Loud』に対する評価はおおむね良好である。前出のNew York Timesは、「普通でない」「興味をそそる」と比較的ポジティブに記述する。数々の映画評論のポジティブ度を集計したRotten Tomatoes(ネット上の映画評論を集めて判定を下す「腐ったトマト」http://mediasabor.jp/2009/06/post_656.html)では73%で「フレッシュ(60%以上ポジティブ)」に判定されている。

3人のギタリストを集めて、座談会風に展開する手法もさることながら、その人選がいかにも手堅い。ジミー・ペイジ、ジ・エッジ、ジャック・ホワイトは、それぞれ1944年、1961年、1975年生まれで全く違う世代を代表しているため、幅広い世代のオーディエンスが期待できる。

加えてペイジもエッジも最高峰を極めるロックバンド(レッド・ツェッペリン、U2)の代表である。おのおの独特の奏法で、ギターの歴史を塗り替えたギタリストである。本作品には、彼らの貴重な映像や録音物とともに、バンド結成の裏話、奏法の秘密など、ロックファンにはたまらない内容が詰まっている。

一方、若手のギタリスト、ジャック・ホワイトに関しては、だいぶ知名度が下がる。しかし、ペイジとエッジに会ってどんな展開になるかと聞かれ「たぶん殴り合いだ」とか、「奴らをハメて、秘密を聞き出す」と、挑発的コメントを連発し、落ち着いた他の二人とは対照的にやんちゃなキャラクターで場を盛り上げている。

もちろんデイヴィス・グッゲンハイム監督の巧みな演出も見逃せない。『不都合な真実(2006)』では、話が退屈という定評があったアル・ゴアの講義をあれほどにまでカッコよく仕上げた実績がある。本作品にも、その手腕は充分発揮されている。ひねりの効いた映像と編集によって、ドキュメンタリーを立派なアート作品へと昇華している。

折りしもアメリカでは、ギター型コントローラーで音楽に合わせてプレイするビデオゲーム『ギターヒーロー』のヒットもあり、若者の間でエレキギターへの関心が高まっている。ソウル、ダンス、ヒップホップと音楽のチョイスは数あれど、まだまだロックとそれを支えるエレキギターの人気は健在である。

ギターヒーローのウェブサイト
http://hub.guitarhero.com/index_uk.html#/Home

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/1120