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都市でもスローライフが実現できる貸し庭システム(シュレーバーガルテン)

比較的住宅事情の良いドイツでも、庭付き一戸建てを持つことは大都市ではそう簡単なことではない。短い夏を満喫するためにせめてバルコニー付のマンションを求める人も多いが、バルコニーでは植物は植えられても、芝生を敷いたり犬とじゃれたりする事はできない。こうした問題を解決するべく、ドイツの都市のあちらこちらには「シュレーバーガルテン(あるいはクラインガルテン)」と呼ばれる貸し庭がある。



「シュレーバーガルテン」の多くは団体の所有物であり、庭を借りたい人はメンバーになる必要がある。各「シュレーバーガルテン」には其々規則があり、庭にある小屋のサイズ、庭に植える植物と野菜の割合、あるいは有機栽培の有無などが取り決められている。もちろん庭仕事が初めてのメンバーには、きちんと手ほどきをしてくれるので、初心者でも安心だ。花の手入れを得意とする隣の庭の持ち主と仲良くなれば、上級者なみのテクニックを伝授してもらえるかもしれない。

ドイツ国内には100万の「シュレーバーガルテン」があると言われており、その歴史は19世紀初めにまでさかのぼる。元来貧しい人たちの食料確保のために作られたものであるが、19世紀後半に入り、それは子供たちの情操教育にも活用。住居が不足した第二次世界大戦後では、庭に小さな小屋を建て住み着いた人も多くいたと言われる。現在では社会人が休日に庭弄りをしたり、友達を呼んでグリルやブランチをしたり、定年にはいる高齢者が自然を楽しむために利用するのが一般的だ。ひとつの庭の大きさはさまざまだが、100平方メートル以上の敷地を持つ庭も多く、住んでいるマンションよりも広いなんてことも良くある。子供を持つ庭の借主ならブランコや簡易プールを置いて、子供が安全に伸び伸びできる環境を作ることもでき、備え付けの小屋にキッチンとトイレもあるので、週末だけ泊まるなんてこともできる。

また「シュレーバーガルテン」の最大の目的は、市民が自然に触れながら休日をゆったり過ごすことができるというだけでなく、こうした集合庭を街中に造ることで、町の緑化にもなっている。庭内に池を作る人がいれば生物が繁殖するためのビオトープになるし、集合庭ができることで住宅の密集が防がれ、それによる騒音減少にも繋がる。結果的に緑の多い都市づくりに繋がるまさに一石二鳥の貸し庭システムである。ちなみに気になるお値段だが、集合庭によって違うとはいえ、年間5万円と安価だ。

<リンク>
ドイツ・クラインガルテン博物館(独語のみ)
http://www.kleingarten-museum.de/

ドイツ・ガルテンフロインデ連合 (独語のみ)
http://www.kleingarten-bund.de/index.php


【編集部ピックアップ関連情報】

○Business Media 誠:松田雅央の時事日想
 「クラインガルテン――この世の天国まで徒歩2分」 2008/04/22
 市街地に住んでいても、自然に触れたいと思う人は多い。しかし週末用に
 別荘を持つというのも非現実的……そんな人に、クラインガルテンという
 提案はどうだろうか? 特に人口減少に悩む街の活性化や環境保全には、
 意外な効果がありそうだ。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0804/22/news025.html

 

 


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