Entry

フランスの雑誌「ジャパン・ライフスタイル」編集者にインタビュー

 1月12日に隔月刊誌の「ジャパン・ライフスタイル」の8号目が発売された。発行部数3万5000部のこの雑誌の特徴は、漫画やアニメで日本オタクになった18歳から24歳頃の若者達に、日本のファッションや文化、ハイテクものを広く紹介する雑誌だ。ヨーロッパにおけるアニメ雑誌の草分け的存在の「アニメ・ランド(AnimeLand)」の出版元が発行している。アニメ・ランドは、1991年に同人誌から始まり、現在は発行部数5万部の月刊誌にまで成長した。ジャパン・ライフスタイル副編集長のヴィオレッタ・ヴァシック(Violetta Vasic)さんに、フランスにおける日本文化の位置づけについて聞いてみた。


───フランスではいつから日本のアニメの人気がでたのですか?
 
(ヴィオレッタ・ヴァシック)
フランスでは80年代から90年代に、日本のアニメをほとんどの子供達がみるほどの人気になりました。


───なぜアニメや漫画がこれほどフランスで人気がでたのですか?
 
(ヴィオレッタ・ヴァシック)
ストーリーが面白かったからです。フランスにはない斬新なストーリー展開に、多くのフランス人達がとりこになったのです。70年代から80年代に日本のアニメがブームになり、そこから漫画が輸入され広がり、人気がでたのです。それで、アニメに特化した雑誌「アニメ・ランド」を1991年に創刊したのです。号を重ねるごとに、発行部数が伸び、今では毎月5万部でています。


───新雑誌「ジャパン・ライフスタイル」を立ち上げた理由は?
 
(ヴィオレッタ・ヴァシック)
マンガやビデオゲームに特化した雑誌とは別に、音楽や映画、文学、旅行など日本全体を紹介する雑誌を創刊することにしました。現在の発行部数は3万5000部です。
 
特に力を入れているのは、旅行と若者のファッションですね。私たちが提案しているのは、フランスのブランドの服でできる日本風の着こなしです。去年の10月にパリにユニクロのショップが開店したので、日本のファッションを取り入れるのが便利になりました。1年ちょっと前に創刊されてから、日本の若いファッション・デザイナーとコラボをしたり、コスプレ専門雑誌のコスモードと提携してコスプレ部分を充実させ、よりよい紙面になるように努力しています。


───日本とフランスのファッション・スタイルの違いはなんですか?
 
(ヴィオレッタ・ヴァシック)
フランスでは、ジャン=ポール・ゴルティエやイヴ・サンローランのようなデザイナー達が、全体のコーディネートをまず考えて消費者に提案します。上から下までを一つのブランドでトータルにきめるのが普通ですね。日本人は反対に、いろいろなブランドを組み合わせて着こなしています。自分のテイスト、スタイルでコーディネートしていくのが、かっこいいとされています。複数のブランドを一緒に着る事に抵抗がないのも日本らしいですね。ミックスすることで、新しいスタイルを提案しています。デザイナーが流行をつくるのではなく、街を歩く着こなし上手のおしゃれな人が流行を生み出しているので、ストリート・ ファッションと呼ばれています。

原宿のラ・フォーレや109などの店舗がひしめきあっているファッションビルの存在も、ミックスコーディネートが盛んな大きな要因だと思います。フランスでは、他の店舗とのミックスを嫌う傾向にありますので、日本のような店舗展開は難しいと思いますね。極端に言えば、他のブランドの買物袋を持って、お店に入ると店員があまりいい顔をしないような雰囲気ですね、フランスは。


───着物を着る時に小物をその日の気分によって組み合わせていく日本の伝統が、現在の着こなし方に受け継がれているのかもしれませんね。
 
(ヴィオレッタ・ヴァシック)
確かにそうだと思います。日本人のファッションは、色使いも大きなポイントです。フランス人は、白黒のモノトーン色の服を着る人がまだまだ大多数です。白黒に近いグレーが受入れられたのも、つい最近なのですよ。日本の色とりどりの着こなしなど、フランス人にはなかなかできない技です。ユニクロをみても、Tシャツやセーターにあれほどのいろんな色があるのは斬新です。

まだまだ黒が主流を占めるフランスのファッション状況ですが、実用的な点から好まれているのです。黒い服だと汚れが目立たないでしょ。洗濯する回数が少なくてすむので、黒を着る人が多いのです(笑)。


───どうやって日本のファッションを紙面に反映させているのですか?
 
(ヴィオレッタ・ヴァシック)
日本のファッション雑誌を何冊かみて、何が流行っているのかを調べていますし、編集者が日本に何度か実際に行って感じとってきた部分を反映させています。日本人のモデル&歌手のエジ(Esie)がナビゲーターになって、今の東京の流行のお店やデザイナー、着こなしを教えてくれるページもあります。

また、雑誌の中でマンガを通して日本文化を理解してもらうような記事を書いています。例えば、「死神」、「武士道や侍の歴史」とか、「トイレでスリッパを履き替える」など、フランスにはない習慣なので、紙面で掘り下げて説明しています。


───雑誌のメイン収入は?
 
(ヴィオレッタ・ヴァシック)
この雑誌は、3割が広告収入で、残りの7割を販売収入でおぎなっています。ニューススタンドで売られるフランスの雑誌としてはいい数字ですね。フランスは、日本に次いでマンガが売れている国で、年間130万冊売れています。米国を2006年に抜き2位になりました。フランスにはBD(バンド・デシネ)と呼ばれるカラーのマンガ本が昔からありますが、日本のマンガとは販売ペースが全く違っています。日本のマンガは、毎月のように次巻が発刊されますが、BDの場合は、6ヶ月待たないと次号が出版されないという事情がありますね。読者は、マンガを購入することに慣れてしまうのです。


───そのおかげで、毎年開催されるジャパン・エキスポも人気なのですね?
 
(ヴィオレッタ・ヴァシック)
年々入場者か増え、昨年の入場者は16万5000人だったジャパン・エキスポですが、私たちアニメ・ランドは、初回の1999年から協賛しています。会場をみてみると、年齢層が本当に広くなったと感じます。
 
マンガがフランス文化に深く浸透してきています。マンガを読む人口が増えただけでなく、広告にマンガが起用されたり、マンガの影響を受けたBDがあったりと日常生活に入り込んでいます。「鋼の錬金術師」や「ラブひな」、「GTO」が発行されたおかげで、2000年に読者層が大きく広がりました。


───日本の音楽も人気がありますか?
 
(ヴィオレッタ・ヴァシック)
日本のポップミージックはまだまだカルト分野ですね。ごく少数の熱狂的ファンは、もちろんいますが。ジャパン・エキスポなどのイベントで日本の歌手がコンサートをすると満員になりますけど。去年はパフィが来仏して、大人気でした。Jポックは軽快で、クリップは色とりどりで、音楽的にも軽やかですね。


───ありがとうございました。


【編集部ピックアップ関連情報】

○Decoration Box 2009/07/11
 「Japan Expo 2009 ☆ Report! ジャパンエキスポ2009 レポ!」
 ジャパンエキスポは今回初めて行ったのですが、混沌異次元空間でした!!笑
 ド派手なコスプレをしている人がいっぱい!
 いちいちそのコスチュームが凝りすぎていたり
 なんだか変だったりでつっこみどころ満載でした。笑
http://decoration.exblog.jp/10593767/

○フランスアンティークジュエリー、シェルシュミディのブログ
 「ル・オタク(Le Otaku)」2009/03/29
 この本はそんな最近の傾向のことをさらっと書いているのかなぁと
 思ったら、過去20─30年ぐらいのフランスのオタク事情とか社会事情
 をものすごく掘り下げていて、久しぶりにフランス関係の本で
 読み応えのある、ちゃんとした事実とかリサーチに基づいている
 本を読みました。日本政府はいまごろになって、「日本のコンテンツ
 の海外輸出を支援する!」とか言ってるけれど、その認知の遅さは罪深い。
http://cherchemidi.blog101.fc2.com/blog-entry-300.html



【ビジネスポッドキャスト番組「ロングインタヴューズ」PR】

 業種のボーダーレス化が進む社会では、異業種を含めた俯瞰の視点が必須!
 ビジネスポッドキャスト「ロングインタヴューズ」は時代の潮流に合致した
 厳選ゲストと経験豊富なインタビュアーの密度の濃い対話を音声で提供。
 混沌とした時代においては、ビジネスでも人生でも、旧来の枠組みに捉われ
 ない決断が求められます。賢人の智恵や経験、考え方の継続聴取により、
 氾濫する情報の点と点がつながり、価値あるインテリジェンスに変換。
 書籍やウェブ検索情報とは異なる気づきがあり、自立心が鼓舞されます。
 対談ラインナップをご覧ください。
 http://mediasabor.jp/interview.html

これまで配信した音源サンプルをオトバンクの下記サイトにて聴取することができます。
http://www.febe.jp/podcast/mediasabor/talk01.html

会員登録はオトバンクの下記サイトからおすすみください。
http://www.febe.jp/podcast/mediasabor/index.html

 

 

 

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/1214