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ロサンゼルス・ファッション業界の最新動向(気になるセレブブランドと韓国勢の台頭)

(記事要約)

3月16日 サンノゼ・マーキュリーニュースより
http://origin.mercurynews.com/fashionstyleheadlines/ci_8592191

LAファッションウィークを迎えた今週末、ここ1、2年LAファッションウィークの顔であったSue Wong(www.suewong.com), Kevan Hall(www.kevanhalldesigns.com) and Ed Hardy(www.donedhardy.com)の姿が見えない。

代わりに登場したのは、マスコミをにぎわせているセレブデザイナーたちだ。例えばMTVリアリティーショーセレブのLauren Conrad(www.laurenconrad.com),生粋セレブのNicky Hilton(www.nickyhilton.com)そして人気歌手グループのthe Pussycat Dolls(www.ashleypaige.com)。

この現象に対して、デザイナーのスー・ウォンは、「どんなセレブもファッションデザイナーに憧れるものだ。だがファッションは科学であって、フィットと構造がすべて。彼らはちょっとした商品構成(マーチャンダイジング)だけで、<まじめに>ファッションをやろうとしてない」という。

一方、化粧品会社で、LAファッションショーなどのイベント用に巨大なスペースをレンタルしているSmashbox(www.smashbox.com)の共同創立者、デイビス・ファクターは異なる見解を持つ。ここLAで音楽やエンターテイメントをファッションと結びつけてイベントを企画している彼らからすると「われわれは大真面目に取り組んでいる」というのだ。「例えば(歌手の)グゥエン・ステファニは、(ファッションブランド)L.A.M.B.(ラム: www.l-a-m-b.com)に、真剣に情熱をもって取り組んでいる。」

ではローレン・コンラッドの場合はどうなのか。彼女はアソシエイト・プレスの取材に対して「テレビに出なかったら、自分のコレクションを持つことはできなかった。でも自分がテレビの人間だから、周りの人は私が真剣にファッションに取り組んでいると思ってくれない」と答え、長年の夢であったファッションブランド構築は、番組から自身が離れたとしても、続けていきたいと思っている仕事であることを表明した。

 

(記事解説)

まず上記に登場したED HARDYを主宰するクリスチャン・オードジェーは、LAファッションウィークでキャットウォークショーを行い、スポットライトを浴びることより、現実的に販売を支えるLAファッションマーケットを選んだにちがい。

ロサンゼルスのダウンタウンにあるファッション・ディストリクト(www.lafashiondistrict.com)では年に5回の「LAマーケット」と呼ばれる展示会が行われる。(特に春と秋はセレブが集まるLAファッションウィークとほぼ同じ頃に開催される。)各地から集まったバイヤーやブランドが、西海岸のファッション本拠地ロサンゼルスで買い付けを行う場である。

そしてこの週末、地区の中心に立つカリフォルニアマーケットセンター(http://www.californiamarketcenter.com)内には、ED HARDYの巨大なテントブースが設置され、販売用のワークステーションが並べられた。マーケット初日にはファッションショーも開催され、ブランドの存在感を見せつけた。

しかし、全体的なマーケットの状況は「渋い」としかいいようがない。LAマーケット期間に開催されるショー「デザイナーズ&エイジェント/通称D&A(www.designersandagents.com))は、ここ数シーズン、開催される度に規模を小さくしている。これまでNEW MARTとCOOPERと呼ばれる2つのファッションビル内に、最大で4フロアーを貸切、数百ブースが立ち並んでいたショーは、現在では各ビル1フロアーずつ。

原因の一つは、これまで同ビル内や周辺のビルにショールームを持っていても、D&Aに出展していたブランドが、予算カットの煽りを受けて出展を取りやめ、複数のブランドを一緒に、ショールームでの販売を行うようになったことも関係しているのだろう。また先に登場した、カリフォルニアマーケットセンター内で行われている、トレードショー大手のENK社(www.enkshows.com)が開催する「BRIGHT」ショーに、人気を奪われ始めていることもある。

とはいえ、この3月のショーは、2008年の「秋冬」のショーと銘打って開催されているものの、少しずつ近づいている不況の足音の影響もあり、6ヶ月先の買い付けを控え、2、3ヶ月先の「現物もの」と呼ばれる商品を集めているバイヤーが増えているようだ。

ブランド側も、次シーズンのオーダーを得たものの、出荷と集金のプロセスを終えるまで安心できないのが本音。半年先のオーダーを得るよりも、2、3ヶ月先の商品を販売し、顧客のビジネス動向を見守りながら、商売を進めて行きたいと思うのも無理はない。

そんな中注目されるLAファッション業界の動向といえば、韓国勢が大攻勢に入ったことだ。今回「KOTRA」(http://www.californiamarketcenter.com/pdfs/kotra.pdf)というエリアが設けられ、既製服、アクセサリーおよびテキスタイルを販売する25社の韓国メーカーが一同に会し展示を行った。しかし筆者が足を運んだショー2日目の最も客足が多いであろう時間でさえ、会場には関係者と思われる人以外はぽつりぽつりといる程度。盛り上がっているという状況からは、正直ほど遠い雰囲気であった。

しかし、今LAのファッション業界を韓国勢が支えていることは確かである。生産の面で言えば、中国および韓国にあるアジアの生産拠点をコントロールしている人、ローカル工場で南米からの働き手を工場で牛耳っている人は、軒並み韓国・朝鮮系だ。

また全米最大の韓国人街、KOREAN TOWNには、スーパーマーケットだけでなく、カジュアルからハイエンドまで、様々な洋服を扱うブティックが立ち並ぶ。

彼らが地元ロサンゼルスのマーケットへの買い付けを定期的に行うのは、自然な流れであるのだ。そして優秀な韓国人デザイナーも続々と注目されている。サクセスストーリーの代表格は、「VOOM BY JOY HANG(http://www.voombyjoyhan.com)」と「PLASTIC ISLAND(http://plasticisland.net/)」であろう。

韓国出身のデザイナーたちが、LAの人気ブティック、FRED SEGALやHILLARY RUSH、PLANET BLUEなどのバイヤーをうならせ、あっという間にアブリル・ラヴィーン、パリス・ヒルトン、キャメロン・ディアス、マンディー・ムーアなどの人気セレブが好んで着るブランドに成長した。こうしたセレブの影響は、米国内にとどまらず、自国においても、また日本をはじめとしたアジア各国のブティックバイヤーにも確実に影響を与えている。

であるゆえに、彼らの成功を目にした若手韓国人デザイナーが、米国のマーケットに関心を持ち、こぞって進出してくるのも理解できる。また2004年から一部中国製を除き、繊維品のクオータ(国別割り当て)がなくなった分、韓国製の商品が輸入しやすくなった環境変化も、特に韓国製のPLASTIC ISLANDにとっては、後押しとなっているに違いない。川上から川下まで、「KOREAN」たちは今元気がいいのである。

こんな状況を考えると、NBCの話題のドラマ「LIPSTICK JUNGLE(www.nbc.com/Lipstick_Jungle)」のメインキャストの一人、リンジー・プライスが韓国系で、さらにファッションデザイナー役を射止めたのも、時代の流れを感じさせる。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○Lauren Conrad at LA Fashion Week(YouTube映像 02:21)
http://jp.youtube.com/watch?v=-HzhpRe3zow


○MediaSabor  2008/03/17
 「2008年秋冬NYコレクションに見るアジア系デザイナーの台頭」
http://mediasabor.jp/2008/03/2008ny.html


○セレブカジュアルドットコム 2008/03/14 
 「ニッキー・ヒルトンNicky Hilton・LA Fashion Week(ロサンゼルス・
 ファッション・ウィーク)で新作ライン「Nicholaiニコライ」の2008年秋
 を発表!Matt Bernsonマットバーンソンのグラディエーターサンダルを穿いて
 マリブへお出かけ!・Nicky Hiltonニッキー・ヒルトン &パリス・ヒルトン」 
http://selebcasual.blog12.fc2.com/blog-entry-835.html


○桃もニューヨークもミュージカルもコスメも。
 (シンガー+ピアニスト梶原もも子のブログ)
 「リップスティック・ジャングル」 2008/02/09
 アジア系のリンジー・プライスが本当に綺麗で、しかも職業が
 ファッションデザイナーということで、この人が一番の
 ファッションアイコンになりそうです、少なくとも私にとっては。
http://momomomo.livedoor.biz/archives/51086418.html

 

 


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