Entry

ドイツにおける育児休暇後の男女間所得格差と少子化

(記事概要)

ドイツにも押し寄せる高齢化社会の波。何しろ高学歴のキャリアウーマンが子供を産まないのだから、出生率も上がらない。では彼女達が産まない理由はどこにあるのか。もちろん育休後が不安だからである。子供を持つ母親のための援助が比較的与えられていると言われるドイツでも、隣国フランスに比べればまだまだだ。男女平等と言われていても、実際女性の平均所得は、男性の所得の3分の2であり、特にその男女における所得格差が出てくるのは、女性が育休を取った後だという事実に、その不安な状況は反映されていると言えるだろう。
 
『SPIEGELシュピーゲル』  2008年5月27日
http://www.spiegel.de/wirtschaft/0,1518,555835,00.html


(解説)

 3年もの育休を終えて、社会に戻ると、男性との所得格差は14%。1─3年以内の育休を取った働く女性では10%、そして1年以内であれば6%の格差が出るそうだ。つまり、育休の期間が短かければ短いほど、男女間の所得格差が小さい。それでは、子供を産んだ女性が社会に復帰しやすくするには何が必要かというと、保育所などの施設である。

 西部ドイツでは、3歳以下の子供でベビーシッターのサービスを受けているのは、たった7%であり、この数値は男女同等に働いてきた東部ドイツの40%と比べるとかなり少ない。そこで、ドイツ連邦では、2013年までに、3歳以下の3人に1人が、乳幼児用保育園に入れるようにとの目標を掲げている。この達成のためには、現数値の約3倍に当たる保育園施設の設置が必要とされており、それに対してドイツ連邦は40億ユーロのコストがかかることを予想している。

 もちろん子育ては女性だけの役割ではない。ドイツでは20人に1人の割合で、父親になった男性が育休を取っているらしく、この数値も年々増えているとのことであるが、母親になる女性の94%が、キャリアを一旦あきらめるのに比べれば、まだ少ない数値といえる。

 出産によって、新たに両親となる被雇用者にプラスとなるようなシステムを作らなければいつまで経っても出生率は上がらない。ドイツで出産に対する優遇となる一つのシステムが、年金にある。1992年以後に生まれた子供を持つ親には、最高3年の育児休暇の間、年金支払い期間がプレゼントされることとなっている。これは、両親が育休をとっても、その間働き続けたのと同様に、年金や社会保険の支払いがなされる制度である。

 こうしたシステムで、育休に対する不安を和らげる対策がなされているのだが、依然として育休後の女性達の不安は大きく、これは事実問題を根拠としているだけに、それに対する具体的な対応策が、これからさらに必要とされるだろう。


【編集部ピックアップ関連情報】

○MediaSabor  2007/11/26
 ドイツの「両親手当て:Elterngeld」は出生率増加・
 少子化解決の糸口になるか?
http://mediasabor.jp/2007/11/elterngeld.html

○RED PAPER  「国家が本気で少子化対策を」 2008/03/04 
 今日は,ドイツと韓国の少子化対策とその結果を簡単に紹介したいと
 思います。政府がどのような施策を取り組み,どのような結果を出して
 いるのか,日本の場合と比較しながら読んで欲しいと思います。
http://plaza.rakuten.co.jp/redpaper/diary/200803040001/

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/706