世界が抱える貧困、歪みに手を差し伸べる社会起業家たち
- 米国在住ビジネス・コンサルタント
ブレイク・ミコスキーは2006年の5月にサンタモニカ市でトムズ・シューズという会社を起業した。単に利益を追求するだけの会社ではない。きっかけはアルゼンチンを訪問した時に、裸足の子供の多さに気付いたことだった。
貧乏で靴が買えない家庭が多いせいだった。彼はタンゴを踊る際に履く軽くてデザインの良いアルゼンチンの靴に眼を付けた。トムズ・シューズはその履き易さと軽快さのためにすぐに市場で人気を得た。
ここまでは普通の起業家の成功物語である。しかし彼の発想は自身の金儲けが目的でなく、靴を買えない子供達に靴を与えることが始まりであった。彼はお客様が一足購入する度にもう一足をアルゼンチンの子供達に送るキャンペーンを始めた。現在までアルゼンチンで1万足、アフリカで5万足が寄付されている。
ジョン・ブリーンはインディアナ州出身のコンピューター・プログラマーである。ある時にアフリカやアジアを始め、飢えのために苦しんでいる人々が世界中に多いことを知った。彼はすぐに貧困解消のための動きを開始した。その一つが2007年10月に開設されたフリー・ライスと呼ばれるサイトである。
言葉のクイズと言うか、言葉の正しい意味を、掲出された4つの中から選び、正解すれば米20粒の賞品が与えられるという極めてシンプルなゲームである。そのサイトに広告を出している企業が一定の方式に従って広告料金を支払い、そのお金で多くのゲーム参加者が蓄えた数量の米粒を購入し、国連世界食料プログラムを通じて世界中に配布される。現在まで370億粒の米がアフリカなどを中心に配布されたという。
リック・ライリーはスポーツ・イラストレイテッド誌のコラムニストだった。ある時にアフリカで多くの子供達がマラリアで死んでいることを知った。蚊帳を買えない為に特に体力の弱い子供達が犠牲になっていた。
2006年5月、彼はナッシング・バット・ネッツというサイトを作り、一人10ドルの寄付を募り始めた。1998年に当時の起業家テッド・ターナーが設立したユナイテッド・ネーションズ・ファウンデーションの協力を得て、現在までに7万人の個人から20万ドルが集まり、2万の蚊帳がアフリカ各地で寄付された。現在、彼はスポーツ・テレビ・チャンネルESPNで働いているが、全米バスケット協会を始め、多くのスポーツ団体なども彼の運動に協力しているという。
私は1980年始めから米国の起業家達の変遷を見て来たが、最近の起業家達は昔と違って世界や社会のために役立とうとの清い志を持つ人が多いようである。同様な動きは日本でもあり、水の問題で悩む世界中の人々を助けたいと願う大阪の日本ポリグル社の例などもある。同社が開発した優れた水浄化剤を活用し、汚い水を綺麗な飲める水に変えている。
また上記のマラリア撲滅キャンペーンには兵庫県にある住友化学生活事業部が推進している殺虫剤を沁み込ませた繊維で作った蚊帳が驚異的な成果を上げているという。同社のタンザニアにある工場にはブッシュ大統領も訪問したらしい。
上記のフリー・ライスにヒントを得て、今月、日本でもイークイズというサイトがオープンした。これは言葉の意味ではなくクイズそのものに答えると米粒が貰えるという仕組みである。世界が抱えている多くの問題の解消のために、起業家魂に燃えた人々の活躍が始まっているようである。
▼TOMS Shoes www.tomsshoes.com
▼Free Rice www.freerice.com
▼Nothing But Nets www.nothingbutnets.net
▼日本ポリグル www.poly-glu.com
▼住友化学 www.olyset-net.jp
▼イークイズ www.equiz.jp
【編集部ピックアップ関連情報】
○MediaSabor 2008/05/07
検索1,000回ごとに地球上の木が2本増えるエコなサーチエンジン「Ecocho」
http://mediasabor.jp/2008/05/10002ecocho.html
○MediaSabor 2007/08/09
靴を寄付するために起業したデザイナー「ブレーク・ミコスキー」
http://mediasabor.jp/2007/08/post_177.html
○男30代 働きながら学ぶMBA留学記 「起業家の社会的使命」2008/06/07
起業家について学ぶとき、「ひとつでもよいから社会的な使命を持つことが
必要」とよく語られる。この番組を見て、その重要性を一層強く感じた。
自分が起こした会社の技術を通じて何らかの形で社会に貢献しよう、社会を
変えよう、そんな想いがなければ起業家はつとまらないだろう。
http://hatarakinagara-mba.blog.so-net.ne.jp/2008-06-07-1
○日暮れて途遠し 「10ドルの蚊帳が慈善寄付をクールにしている」 2008/06/05
1人のアフリカの子供をマラリアから救うために蚊帳一張り
(a mosquito net)分10ドルの寄付を行う、これが特に
ティーンエイジャーの間でかっこいい善意の示し方
(hip way to show you care)になってきている。この運動は、
ポリオ撲滅を目指し1938年に生み出されたMarch of Dimes
(10セントコインの行進)の現代版であり、またハロウィーンにペニー
(1セントコイン)を集めてユニセフに寄付する運動のようなものだ。
http://blog.goo.ne.jp/taraoaks624/e/7978356e65b27d75bb6a1fe3d15ccd39
○専業トレーダー Atsuya 2008/06/03
ガイアの夜明け「世界を救うニッポンの技術 -企業が果たす社会貢献とは?-」
今回番組で取り上げるのは、画期的な「浄化剤」で飲み水に困っている
世界の人たちを救おうとしている大阪の浄化剤メーカーと、「薬剤を
塗りこんだ蚊帳」でマラリアから子供たちを救おうとしている大手化学
メーカー、住友化学。ある程度の利益を出し、ビジネスとして継続させ
ながら、どうやって自分の会社が持つ技術を社会に役立てていくのか?
そうした取り組みを見せる企業を追った。
http://plaza.rakuten.co.jp/trader/?func=diary&act=view&d_date=2008-06-03&d_seq=0007&targetdate=200805
○ITmedia News 2007/11/10
飢餓撲滅のための「ボキャブラクイズ」サイト、10億粒の米を調達
「FreeRice」サイトでは、ユーザーがクイズに正解するたびに、米粒10粒が
国連の世界食料計画に寄付される。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/10/news003.html
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