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米アカデミー賞では今だに正当に評価されないアニメーション

映画の街ハリウッドでは、今年もアカデミー賞の季節が訪れる。 昨年ピクサーとディズニーが手がけたアニメーション映画「WALL-E」が、はじめての「作品賞」と「監督賞」にノミネートされるか、その動向が注目された。

http://www.youtube.com/watch?v=UblUO0LjPUg

http://www.youtube.com/watch?v=rjYI8pgdn34


というのも、昨年末から年始にかけて、すでにシカゴやボストンで開かれた各都市の映画批評家協会賞では、アニメ映画賞とは別格の「作品賞」を受賞してきたからだ。96%の評論家が「新鮮」と評価し、RottnTomatoes.comの映画評論ランキングで、断トツ1位となった同作品は、中でも今年のロサンゼルス映画批評家協会賞で作品賞を受賞。アニメーション映画として、同賞をはじめて受賞した作品となった。

しかし、結果はアニメーション部門をはじめとした6部門のノミネート。作品賞ならびに監督賞のノミネートは逃した。この朝、監督のアンドリュー・スタントン氏は、「我々は、アカデミー関係者の寛大で、謙虚な評価に、非常に嬉しく思う。そして私は素晴らしく成長しつつある大きな家族のようなピクサーという場所で、映画作りができるのを光栄に思う。これは、ピクサーとディズニーにいる人たちみんなにとっての賛辞だ。」とコメントした。

「この(映画)業界の傾向として、アニメーションを“リアル映画(実写)”から孤立させようとする傾向がある。」とはMSNBC.comの映画批評家、アロンソ・デュラルデ氏の言葉。これまでにも、「千と千尋の神隠し」や「インクレディブルズ」「ファインディング・ニモ」など、長年に渡り評価されている素晴らしいアニメ作品は、オスカーを前に一つも作品賞にノミネートされていない。(唯一作品賞に選ばれたアニメは、ディズニー「美女と野獣」だけ)

映画評論とアニメーションの専門家、チャールズ・ソロモン氏は、「アニメーションは、まだ現代の映画製作において最先端を行っている。昨年もっとも高純益を達成した10本の映画の内、4本がアニメーションフィルムだ。」と発言。しかし、興行成績が一目で分かるBOX OFFICEの情報に関して、アカデミー賞の関係者は目にしていないようだ。

US NEWSのライター、マシュー・バンディック氏曰く「こんなに技術が進歩したというのに、未だにアニメーション映画は正当な評価をされない。世界中の映画オタクたちは、今回のアカデミーのノミネート作品リストに怒りを露にしている」と。

ところで、他にも話題のアニメ作品の一つ、イスラエル人監督アリ・フォルマンの「ウォルツ・ウィス・バシャー」(「Waltz With Bashir」がFlashアニメ初の全米映画評論家協会賞 最優秀映画受賞:http://mediasabor.jp/2009/01/waltz_with_bashirflash.html)は、今回のアカデミーでは、外国語映画賞にノミネートされた。別の映画賞や映画祭では、フラッシュ技術により製作された、非常に完成度の高いアニメーション映画として評価をされてきた。しかしアカデミーでは外国語映画賞。作品賞でないことは確かのようだ。やはり2001年にようやくアニメーション部門を設けたような古い体質のアカデミーという組織を前にしたら、後50年はかかるのかもしれない。

 

<参考サイト>
http://www.newsarama.com/film/010926-Animated-Ghetto.html
http://www.usnews.com/blogs/risky-business/2009/01/22/academy-awards-controversy-wall-e-gets-snubbed-for-best-picture-oscar.html
http://www.msnbc.msn.com/id/28877503/

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○WIRED VISION『ウォーリー』:アニメ映画史上に残る傑作 2008/12/01
 全編CGアニメの映画だけれど、序盤の舞台となるこの荒廃した地上の描写は
 CG表現の到達点とも言うべき完成度で、実写かと見まがうほどにリアル。
 そのおかげで、屋外の動画広告や古い新聞に使われた実写の人間が、違和感
 なくCGの背景に溶け込んでいる。
http://wiredvision.jp/blog/takamori/200812/200812010730.html


○Andre's Review  映画「WALL-E ウォーリー」 2008/12/08
 ちょっと設定勝ちみたいなところもあると思うけど、もう観ていて、
 ずっとワクワクして、ドキドキして、優しい気持ちになって、
 そんでもって、沢山笑って、感動して、社会問題まで考えさせられて。
 この作品を観ることができる時代に生きてて良かった!と思わず感じて
 しまうほどの完成度。
http://andrekun.cocolog-nifty.com/andres_review/2008/12/walle-56cb.html

 

 


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