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さらなる値上げを行った米スターバックスと、変化するアメリカのコーヒー市場

<記事概要>

米国コーヒーチェーン大手スターバックスは、7月23日にドリンクの値段を平均9セント値上げすると発表し、同月31日から価格を改訂した。スターバックスは値上げについて、乳製品やエネルギー、燃料などの価格上昇が要因だと説明している。

同社は1997年以来7回もの値上げ改訂を行っており、現在、ラテの価格はおよそ4ドル。スターバックスのコーヒーは、「高い」というイメージがすっかり定着してきた。

そんな中、アメリカでは低価格のコーヒーを売りにするファーストフード店が登場し、コストパフォーマンスが良いと、消費者から支持を受け始めている。スターバックスの値上げに逆行するコーヒー販売店の登場で、アメリカのコーヒー市場は、少しずつ変化を見せ始めた。

(Business Week 8月1日)


<解説>

アメリカのコーヒー市場に変化が見受けられるといっても、まだまだスターバックスの人気は高い。ニューヨークのスターバックスでは、通勤時間にコーヒーを買い求める列がずらりと並んでいる。

ニューヨークでは、多くの店でレギュラーのスモールコーヒーが1ドルほどで手に入る。一方、スターバックスのレギュラー・コーヒーの価格は$1.75。ラテや、カプチーノなどに至っては、一番小さいサイズでも4ドルほどになる。それでも毎朝約4ドルのコーヒーに行列ができないことはない。

スターバックスが8月1日に発表した第3・四半期(4―6月)決算は、新店舗の売り上げが貢献して、前年同期比9%の増益となった。売上高は、前年同期比20%増の24億ドルとなり、相変わらずの成長を続けている。

しかし、そんなスターバックスを取り巻く環境に、最近変化がある。大手のファーストフード店が、コーヒー販売の競争相手として進出してきたのだ。

大手ハンバーガーチェーン店マクドナルドは、“プレミアム コーヒー”というキャッチコピーで、スモールサイズのコーヒーを$1.39で販売している。米国内に13,794店舗を有するマクドナルドが、朝食を買いに来る消費者に積極的にPRを行ってきた。

マクドナルドのコーヒーは、消費者からの反応が大変良い。

アメリカの有力な消費者団体専門誌、コンシューマー・リポートは、顧客の立場から徹底した評価を行い、ランク付けを行う情報誌(創刊1936年。消費者団体「コンシューマーズ・ユニオン」が行う商品テストを報告する月刊誌。広告は一切なく、雑誌の売上だけで厳しい評価を行なう。商品比較に機能や性能、耐久性ばかりでなく、商品価格も比較対象に含まれる。テスト結果の信頼は高く影響力は大きい。発行部数は約400万部に上る)。

その誌面で、人気のコーヒー店であるスターバックス、ダンキンドーナツ、マクドナルド、バーガーキングのコーヒーをランキングした。その結果、味とコストパフォーマンスが認められ、マクドナルドが堂々の1位に輝いている。

さらに、ドーナツチェーン店ダンキンドーナツも勢いづくコーヒー販売店の一つ。米国航空会社ジェットブルー・エアウェイズとのパートナーシップを結び、飛行機内でのコーヒー提供を開始した。宣伝活動も積極的に行い、今ではおいしいコーヒーを出すお店として、イメージが定着してきた。

最近では、マクドナルドやダンキンドーナツのようなファーストフード店がコーヒー販売を大々的に展開し始め、その存在感が大きくなってきた。消費者にも、スターバックス以外の選択肢が増えたのだ。

さて、一方のスターバックスだが、増益を発表するも、このところあまり良いニュースがない。例えば利用者層の変化だ。以前は、スターバックス新規利用者が、高収入、高学歴であることが特徴であった。しかし、最近ではその高収入、高学歴の客層も顕著さがなくなっている。

2006年10月の発表によると、新規でスターバックスを利用する消費者の平均収入が5年前は$92,000であったのに対し、現在は$80,000。5年前は新規利用者の45%が大学卒であったのに対し、現在は30%に落ち込んでいる。

数字には表れにくい「満足度」も低下しているように感じる。スターバックスが展開し始めた当時、素晴らしいサービスと、綺麗な店内に感動したものだ。しかし米管轄のスターバックスは、今はサービスも粗雑になり、店内も綺麗とはいえなくなっている。店内に、ホームレスのような人たちが半分住み着いているような光景もよく見受けられる。それでいてコーヒーの価格が上がっていくのだから、高いと感じざるをえない。

12ヶ月以内でスターバックスの株価は20%減少しており、成長を続けてきたスターバックスへの期待は、現在低下を見せ始めている。

ファーストフード店のコーヒー販売が勢いを見せている今、コーヒー販売シェアに、顕著な変化は出てくるのだろうか。スターバックスのブランドイメージはまだまだ健在とは言え、値上げのニュースのたびにうんざりしてしまうのは、筆者だけではないはずだ。

 

■関連情報

○MediaSabor  2007/03/14
 ネット流出 スターバックスのシュルツ氏が幹部に宛てた「メモ」の中身
http://mediasabor.jp/2007/03/post_36.html

○emkaigi.net Canada 2007/02/03
 「マクドナルドのコーヒーはスターバックスよりもおいしいことが調査で判明したそうです。」
http://white.mkaigi.net/2007/02/cat35/post_18.html

○特定アジアニュース 2007/01/12
 「やっぱり? スターバックス敗訴。最高裁判決ニダ!」
http://specificasia.seesaa.net/article/31285681.html

○大西 宏のマーケティング・エッセンス 2006/10/10
 「そんなにスタバを増やしてどうするの?」
http://ohnishi.livedoor.biz/archives/50252054.html

○CNET 2006/09/12
 「印刷クーポンの配布は慎重に--米スターバックスの失敗事例に学ぶ」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20231128,00.htm

○ITmedia News 「コンビニで買えるスターバックスラテ発売」2005/09/01
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0509/01/news119.html

○POP*POP 2007/02/14
 お気に入りの写真をスタバのタンブラー用に変換できる『クリタンメーカー』
http://www.popxpop.com/archives/2007/02/post_117.html

○関心空間 「ジェットブルー・エアウェイズ」2006/07/18
http://www.kanshin.com/keyword/981349

○MediaSabor  2007/03/11
 「米国新鋭格安エアラインがYouTubeで”ごめんなさい”」
http://mediasabor.jp/2007/03/youtube_1.html


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