
今、コンテンポラリーアート(現代アート)マーケットが熱い
- 米国在住ジャーナリスト
今、世界中が空前のコンテンポラリーアートブームに沸いている。人々はアートを買い求め、コンテンポラリーアートを扱うミュージアムやギャラリーは、活況を迎えている。
一月のある週末、ニューヨークのユニオンスクエアにあるコンポラリーアートギャラリー「mountain fold」のオープニングは、人が動けないほどの混雑ぶりを見せていた。これがまさにニューヨークのコンテンポラリーアートシーンの現状なのである。
コンテンポラリーアートとは、現代、現在のアートを指す。時代でいうと、今から30年ほど前から現代に至るまでのアートのことだ。アンディー・ウォーホールに代表されるポップアートもその一つ。コンテンポラリーアートブームは今から10年ほど前のニューヨークからはじまったものだ。
mountain foldも新進気鋭の若手アーティストをリプレゼントするコンテンポラリーアートギャラリーの一つ。その日は、大学院を卒業したばかりの3人のアメリカ人女性アーティストによる展示会の初日であった。オープンするなり人の波は衰えず、800スクエアフィート(約74平方メートル)ほどのギャラリーは、身動きがとれないほどの大盛況となった。オープニングパーティーの数時間でサーブされたワインは実に34本分。プラスチックカップに1センチほど注がれたゲスト用のワインはみるみるうちに消えていった。
大混雑だったオープニング後、「今日は、2つの作品が売れたんですよ」とオーナーの山口優さん。日本人女性で、チェルシー地区のコンテンポラリーアートギャラリーのディレクターを務めていたすご腕だ。ギャラリーの混み合い方からいって絵もろくに見られないのではと思っていたが、オープニングのほんの数時間だけで2800ドルと3600ドルの2作品があっさり売れていた。
▼コンテンポラリーアートが活況な理由
今何故人はコンテンポラリーアートを欲しがっているのか? 世界各国の新興富裕層はコンテンポラリーアートを今こそと収集している。その裏には様々な要因が窺える。ケースとしては、10倍20倍に価値が跳ね上がっているコンテンポラリーアートを投資の目的として買っていると考えられる。もしくはすでに高価な値段の付いている印象派以降の古典よりは手軽に買うことができるというメリットもある。
オーナーの山口さんによると、コンテンポラリーアートは現代の社会問題や不安が作品に反映されており、アーティストと共にそれをシェアできるところに魅力があるという。昔はアートと言えば、お金持ちのために作られていた絵画や装飾品であった。しかしコンテンポラリーアートはアーティスト自身のために作られているもの。同世代が描く現代を共有できるところにこそ真価があるのだという。
そんなコンテンポラリーアートの人気は鰻登りで、アート・プライス・ドットコム社が発表しているインデックスによると、コンテンポラリーアートの価格は2000年1月から2006年11月の統計で 118%も上昇、平均年率に換算すると14.1%もの高利回りとなり、アート全体の指標である69%(平均年率9.3%)を大きく上回っている。2007年も相変わらず、マーケットは活気づいていたため、この伸びは堅調に続いているはずだ。
▼コンテンポラリーアートの楽しみ方
コンテンポラリーアートの醍醐味は、まだ誰も目を付けていない無名で若いアーティストを探し出すということにある。言い換えれば、作品を安いうちに購入するという事とも言える。作品を購入し、その作品が時代のトレンドにあっていれば、10年後に数倍もしくは数十倍の値段になっている可能性があるのだ。自分が惚れ込んだアーティストが先々評価されて値段が上がれば、購入者としてこれほど嬉しいことはない。
若手の作品を買うことは、そのアーティストを支援することにもなる。山口さんは「今その作品が傑作かどうかというのは分からないけれども、後でどう評価されるのか楽しみなのもコンテンポラリーアートの醍醐味の一つ。」と言う。
才能ある若手アーティストと作品を惜しみなく買っていく人達。その光景を見て、はじめてコンテンポラリーアートの本当のおもしろさが分かった気がした。
mountain fold gallery http://mfoldgallery.com/
【関連情報】
○MediaSabor 2007/04/09
『村上隆』『奈良美智』ら、日本発アートが海外でブレイクした背景
http://mediasabor.jp/2007/04/post_64.html
○MediaSabor 「感性経済」が市場を動かす 2008/01/21
http://mediasabor.jp/2008/01/post_306.html
○シブヤ経済新聞 2007/08/28
「渋谷のアートギャラリーが上海の現代アートフェアに初出展」
「NANZUKA UNDERGROUND」オーナーのNANZUKAさんは、今回ギャラリー初の
海外出展に踏み切った経緯について、「『アートフェア東京2007』(今年4月に開催)に
出展した際にディレクターのロレンツォ・ルドルフに直接スカウトされたのがきっかけ」と話す。
http://www.shibukei.com/headline/4590/
○有人彗星 2007/06/27
ポップアートの旗手たち「ジャスパー・ジョーンズとマネの絵画そしてフーコーなど」
http://youjnsu.livedoor.biz/archives/51044644.html
○シネマトゥデイ 「ファクトリー・ガール」
ポップ・アートの旗手アンディ・ウォーホルのミューズとして知られ、今も
ファッションやカルチャーに影響を与えるイーディ・セジウィックの波乱の
人生を描く伝記映画。─2008年 G.W日本公開
http://cinematoday.jp/movie/T0005786
○Factory Girl Trailer(YouTube映像 02:09)
http://jp.youtube.com/watch?v=xsfvKbOileg
○松岡正剛の千夜千冊 『ぼくの哲学』アンディ・ウォーホル 2006/03/07
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1122.html
○GIGAZINE 2006/10/08
「Photoshopでポップアート風の画像を作るチュートリアル」
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20061008_popart/
○現代アート販売(通販)のタグボート
http://www.tagboat.com/
▼アート技法の仮説
○Rogi073.Diary 2007/01/07
「秘密の知識 巨匠も用いた知られざる技術の解明:デイヴィッド ホックニー」
様々な手法でリアルに近づいた表現がある時点で、その目標とするリアルの
対象が最終的に画面で見ることの出来る類似性というリアルから、離れていく
というのが現代美術の流れなのだというのが、この本でじっくりと言及して
いる訳ではないが、うっすらと見えてくるところ。
http://d.hatena.ne.jp/dzd12061/20070107/1168136747
○メイコイワモト/福井洋一のDolceVita
ホックニー「秘密の知識」 2006/10/30
ホックニーによれば
「15世紀初め以降、西欧の画家の多くが光学機器-鏡かレンズ、あるいは
その組み合わせ-を用いて、実物の映像を得た事。そして画家のなかに
こうした映像を素描や油彩画の制作に用いた者もあり、世界を描写する
この新しい方法-新しい物の見方-はまもなく世の中に広まった」という
仮説を提起する本です。
http://blog.so-net.ne.jp/firenze/2006-10-28
○美術史が好き! 2007/04/27
デイヴィッド ホックニー 著『秘密の知識』 その2
ホックニーの主張を平たく言ってしまうと、「過去の素晴らしい作品の多くが、
光学機器を使って画面上に投影した像をトレースして作成している」というもの。
http://blog.livedoor.jp/rsketch/archives/50970128.html
▼映像で見るアート
○奈良美智(YouTube映像 02:08)
http://jp.youtube.com/watch?v=uOSQrO7uxic&feature=related
○Philmology-Art Of David Hockney(YouTube映像 04:24)
http://jp.youtube.com/watch?v=udbxclRxT_U
○Jeff Koons(ジェフ・クーンズ YouTube映像 04:02)
http://jp.youtube.com/watch?v=Xwb0g6e3AfU
○Video Art from Art Basel 2007(YouTube映像 00:35)
http://jp.youtube.com/watch?v=_71cv08R9PU&feature=related
○Action Painting(YouTube映像 04:37)
http://jp.youtube.com/watch?v=QWlrifnjqXI&feature=related
○a day in the life, Artist paints in minutes beatles(YouTube映像 02:29)
http://jp.youtube.com/watch?v=usnudV2le6E
○Roy Lichtenstein Part 2 The 60's(YouTube映像 02:24)
http://jp.youtube.com/watch?v=jgGhZKwlwZk
○Roy Lichtenstein Part 3 The 70's(YouTube映像 01:07)
http://jp.youtube.com/watch?v=wKvzkSSJStg
○Warhol, Rauschenberg, Lichtenstein, Twombly, Kiefer(YouTube映像 05:29)
http://jp.youtube.com/watch?v=X3MBe54kp80
○Pop Art(YouTube映像 03:30)
http://jp.youtube.com/watch?v=qcZseTObbFU
○Pop Art slide show(YouTube映像 03:48)
http://jp.youtube.com/watch?v=RhipaDCovBM&feature=related
○Keith Haring (キース・ヘリング)slide show(YouTube映像 05:00)
http://jp.youtube.com/watch?v=MR-MbMDmq4w&feature=related
○Keith Haring (キース・ヘリング) collage(YouTube映像 03:40)
http://jp.youtube.com/watch?v=bew6qGfWz4M&feature=related
○Art Basel 2007(YouTube映像 02:51)
http://jp.youtube.com/watch?v=l30W4ATDyvs
○Art 38 Basel 2007(YouTube映像 08:15)
http://jp.youtube.com/watch?v=YsWcB1wuBjI
- いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。 - 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
- 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
- トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
