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浮き足立った電気自動車崇拝は市場に悪影響を与える

不景気の波が自動車業界に押し寄せる中、環境に優しい車を作ることで、新たな進歩を遂げようとどの自動車メーカーも必死だ。欧州同盟国内において、新規生産車のCO2排出量定義について協議が行われたことからも察せるように、大気をあまり汚染しない車両の生産を求める声が高まっている。そこでこのところ電気自動車が次世代の車として注目を浴びており、それらが市場にもたらす影響を過大評価する風潮も見られている。

世界で最大の自動車製造下請け会社Bosch(ボッシュ)社は、浮き足立った電気自動車崇拝傾向に批判の目を向けており、こうした風潮が市場に悪影響を与えていると同社車両課の代表者ベルント・ボール氏は述べている。

つまり小型のパイロットプロジェクトは基本的に役立つものであるが、2010年の時点で消費者が購入でき、現在の車両に匹敵する機能を満たすような電気自動車があるという印象を与えるのは良くないとしている。同氏は、2010年ではまだ、電力だけで駆動する自動車が乗り回されることはないであろうとし、電気自動車のシリーズは、小規模なら2015年までに期待できるであろうが、税金による国からの援助、あるいは産業界からの補助金はないため、安価に提供することは無理であるとしている。

そのため電気自動車以前に登場するのはハイブリッド駆動であり、この技術は、所謂橋渡しとなると言われている。ディーゼルあるいはガソリンモーターの消費が、この2─3年で10─15%減少することをボッシュのボール氏も期待しており、電気・ハイブリッド車両の市場にしめる割合も、長期にわたり見通しがつくようになるであろうと言う。

そして具体的には、2015年に世界中で生産される8000万台の車両のうち、250─300万台がハイブリッド装備に、そして80万台は電気駆動だけの車両になるのではないかと予想されている。つまり両タイプの技術が自動車の年間売上げに占める割合は5%以下、ディーゼル車が4分の1、そして残りがガソリン車となる。騒がれている割には小さな数値である。

最も問題となっているのは、蓄電方法、あるいは供給方法である。現在の技術では充填するまでに必要な充電時間は8時間と言われており、たとえば遠距離から通う従業員を抱える企業の駐車場で、一斉に充電が行われてしまえば、駐車場が込み合うどころか、ショートを起こしてしまうのが関の山だ。差込口からの充電が無理であるなら、どのような形でエネルギーの補充をするべきであるのか、その際の料金支払い方法はどうするのかなど、まだ手探りの段階でしかない。

そもそも論として、電気というタイプのエネルギーは、他のエネルギー源を元に生産されるものであることから、実際環境問題の解決に直結するのかという疑問の声さえも聞こえている。

Welt online 2008年12月27日付
http://newsticker.welt.de/?module=dpa&id=19922528

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○MediaSabor  「シリコンバレーが全米初、電気自動車の街へ」 2008/12/02
http://mediasabor.jp/2008/12/post_537.html

○MediaSabor  2007/10/04
 「無給油で2600キロ走行の超低燃費プラグインハイブリッドカー」
http://mediasabor.jp/2007/10/2600.html

○ハイ・エコ・ポン 2009/01/01
 HEP版グリーン・ニューディール政策「プランG」を構想中 電気自動車の導入
 米国のオバマ新大統領が提唱する環境・経済政策は、かつてのルーズベルト大統領が
 とったニューディール政策になぞらえて、「グリーン・ニューディール政策」と
 よばれているようです。
http://blog.goo.ne.jp/haiecopon/e/a5b21133ce9f6f2bb7007bca47528fd5

 

 


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