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日本を夢見るフランスのコスプレイヤーたち ─第8回ジャパン・エキスポ(Japan Expo)2007


○フランスのコスプレイヤー

フランスの若者達にとって、日本は、「サムライ・芸者」のイメージとは程遠く、80年代以降の「家電や先端技術の国」でもなく『マンガの国』である。

マンガで育った25歳以下の世代は、マンガ宗主国の日本に強烈に憧れている。世界第二位のマンガ消費国であるフランスで、ここ数年、マンガ関連のイベントが盛り上がっている。7月6日から8日に、マンガとアニメを中心にしたイベント、ジャパン・エキスポ2007(Japan Expo 2007)がパリ郊外で開催された。
http://www.japan-expo.com/

1999年に2400人の入場者で始まったこのイベントは、今年で8回目を迎えた。約7万5000人ほどが3日間で訪れたという。8年間での急激な入場者の増加が、日本のマンガ、アニメへのフランス人の関心の高さを物語っている。

入場者の大半が、15歳から25歳までの若者たちだ。このイベントのメインのひとつは、コスプレ大賞の選別大会だ。個人部門、団体部門があり、8月に名古屋で行われる世界コスプレ・サミット(テレビ愛知主催)に出場するフランス代表者が、この会場で決まる。

フランスでは、まだまだコスプレできる機会が少ない。イベントの時くらいなので、学芸会のノリである。ジャパン・エキスポは、そんな数少ないおおっぴらにコスプレのできる場であり、一番大規模なイベントだ。

今年の選別会場は、ランナウエイと2つの大スクリーンが設置されたファッションショーなみの3000人収容可能な大会場。ここで個人、団体部門あわせて約500人ものコスプレイヤー達が自信作を披露した。


○盛り上がったコスプレ大賞の会場

今年は、人気を反映して、Narutoのキャラクターに扮するプレイヤーが目立った。気恥ずかしさのためか、扮装するキャラクターになりきれていない若者がほどんどだった。

フランスでは、日常生活とはかけ離れた設定のマンガに人気があるようだ。「Naruto(ナルト)」「鋼の錬金術師」「One Piece」「Samurai Deeper Kyo(サムライディーパーキョウ)」「Death Note(デスノート)」などの作品が売上のトップに並ぶ。

日本のマンガがここまで受け容れられた背景には、欧米のコミックとのマンガのストーリーづくりの違いにある。顕著な相違点は、「強くもなく、特別でもない主人公が、試練と努力を重ね、強く成長していく」というところだ。

欧米のコミックの主人公は、特別な才能を持っていたり、タフだったりと、いかにもヒーローらしい主人公が多い。無敵の主人公に憧れるタイプのストーリー展開になっている。

その点、日本のマンガの主人公は、落ちこぼれだったり、不良だったり、ごく普通の学生だったり、と最初からヒーローでない場合が多い。マンガを愛読するフランスの少年少女達は、自分自身をマンガの主人公に自己投影して、話にのめりこんでいくのだ。頭が柔軟な彼らにとり、生活や文化の違いよりも、マンガに登場する主人公に共感できるかどうかが、一番のポイントになる。

売上が右肩あがりのマンガ人気だが、フランスの出版社には大きな悩みがある。マンガは、出版界の売上の約30%を占めるほどの大きな市場に成長しているのに、ほとんど全ての作品が日本からの輸入に頼っていること。フランス発の人気漫画家はまだいない。

漫画家になりたい若者は多くいる。出版社は、才能のある漫画家を育てて、ヒットにつなげたいと願っている。しかし、面白くヒットするような作品は、まだでてこない。

それには理由がある。日本のマンガは、出版社のマンガ編集者と漫画家との二人三脚で作品が作られている。編集者は、作者にストーリーやコマ割りや絵について、アドバイスし、時には編集の意見を強要さえもする。

マンガの歴史の浅いフランスの出版社に、マンガをつくるノウハウを持っている編集者は皆無だ。ジャパン・エクスポ会場でも、素人向けの「マンガ家養成講座」があったが、あくまでマンガ風の絵のかき方や技法を伝授することにとどまっている。まだまだ、ヒットを飛ばせるフランス人漫画家が登場するまでには時間がかかるだろう。

もうひとつ、ジャパン・エクスポの会場で目立ったのは、「マンガ・カフェ」。つまり簡易まんが喫茶。日本には1979年から、漫画喫茶があり、昨今はエンターテイメントの場として、サービスを充実させている。


○やっとフランスに登場してきたマンガ・カフェ

パリに漫画喫茶の第一号店ができたのは、2006年7月と、まだ一年ほどしか経ってない。会場のマンガ・カフェは、1時間総入れ替え制で無料で漫画が読める。漫画喫茶の形態を知らしめようとの意図だ。

しかし、フナック(FNAC)などの大型本屋で、床に座ったり、付随のカフェで、本を買う前に(立ち?)読むことができるフランス。漫画喫茶が日本のように発展するかどうか。

フランスでは、マンガの単行本は結構高い。5ユーロ(約850円)から9ユーロ(1530円)もする。ベーデーBDと呼ばれるフランス版コミックは、一冊10ユーロ(1700円)前後する。BDよりは割安ではあるが、お小遣いの少ない中学生、高校生は、漫画喫茶に通い、ファンが集うことだろう。漫画喫茶が、コスプレを披露する場所になるのかもしれない。



 

■関連情報

○MediaSabor 2007-06-14
 「マンガ(漫画)消費大国フランスでコスプレ人気ブレイクの予感」
http://mediasabor.jp/2007/06/post_128.html


○MediaSabor  2007/08/05
 「米国コスプレイヤーを取り巻くビジネスシーン:Vol.2 
  ─アニメエキスポ(Anime-Expo)2007 現地取材」
http://mediasabor.jp/2007/08/volanimeexpo2007.html


○MediaSabor  2007/07/16
 「コスプレイヤーを取り巻くビジネスシーン:Vol.1 
   ─アニメエキスポ(Anime-Expo)2007 現地取材」
http://mediasabor.jp/2007/07/vol1animeexpo2007.html


○musicman’sリレー 「日本の活路は1億人パワーの発揮」
 中村伊知哉 スタンフォード日本センター研究所長/国際IT財団専務理事
http://www.musicman-net.com/relay/50/a_4.html

○矢崎屋伽藍堂 2007-07-07 フランスで「ジャパン・エキスポ」開幕!
http://d.hatena.ne.jp/yazaki_ya/20070707/p1

○50歳のフランス滞在記 「今の日本」エキスポ― 1 2007-07-09
http://blog.goo.ne.jp/take_uu2004/e/e48c3d130a6f78f330ee142813a318b2

○魁!清谷防衛経済研究所 ブログ分室 2007-01-29
 「日本マンガ・ブームで窮地に立たされるフランス語圏産マンガ 」
http://kiyotani.at.webry.info/200701/article_27.html

○ここがおフランス!? 「mangaというマンガ♪」 2006/08/03
http://blog.livedoor.jp/kokogaofrance/archives/50614927.html

○so what ?  「フランスのテレビアニメ事情」 2005/07
http://www.kyo.com/blog/archives/2005/07/post_115.php#


○日テレNEWS24 (ニュース動画あり)
「コスプレ大人気!日本文化紹介するイベント」 2007/07/09
http://www.news24.jp/87798.html

○Japan Expo 8 !  (YouTube映像) 03:35
http://www.youtube.com/watch?v=BSvMSk2aFCE


○Nana Kitade en concert à Japan Expo 2007(YouTube映像)04:42
 ゴシック・ロリータ(ゴスロリ)ファッションで人気の歌手・
  北出菜奈(きたで なな 1987年生まれ)がパリで開催された
 「第8回 ジャパン・エキスポ」に参加した。一昨年の香港、昨年の米ボルティモアに続き、
  3年連続での海外ライブイベント。7月27日に東京で凱旋イベント(SHIBUYA O-EAST)、
  8月に新曲「アントワネットブルー」を発売。下記ライブ映像の曲は「希望のカケラ」
http://www.youtube.com/watch?v=o9GksLL2d8s

○北出菜奈SlideShow 03:48
http://www.youtube.com/watch?v=TAq7mSdC8MI

○北出菜奈Official Web Site
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/nanakitade/


○HALCALI en concert à Japan Expo 2007(YouTube映像)04:09
 東京都目黒区出身のHALCA(ハルカ)とYUCALI(ユカリ)の
  2人組ガールズヒップホップユニット
http://www.youtube.com/watch?v=c-hMOP6wm9Y

○HALCALI公式サイト
http://www.halcali.com/


○ネタフル 「フランスと日本のマンガタイトル比較表」2005/06/23
http://netafull.net/neta2005/009192.html

○関心空間 フランスの漫画誌『Shogun Mag』
http://www.kanshin.com/keyword/1153290

 


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フランスのテレビアニメ事情 2007年07月12日 06:58
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