Entry

3Dテレビに再生をかける家電メーカー

 最新のデジタル3D(3次元)技術で、映画に入り込んだかのような「革命的な映像体験」を売りものに公開された映画「アバター」は、クリスマスから週末にかけて米国での興行収入が7500万ドル(約68億7000万円)と、クリスマス公開映画のトップを飾った。3D技術メーカーのRealD社によれば、今後数年間で50以上の3D映画が製作される予定だという。

 しかし近い将来、こうした「革命的な映像体験」のために、割り増し料金を払って3D上映映画館に足を運ぶ必要はなくなるかもしれない。

 薄型のフラットパネルテレビの値下げ競争が激化する中で、3D映像体験を家庭に持ち込もうと、各家電メーカーが3Dテレビの開発に躍起になっているからだ。三菱電機やLGはすでに3Dテレビの市販モデルを持っており、その他の家電メーカーも3Dテレビの開発を行っている。また昨年1月に映像規格国際団体のブルーレイディスク・アソシエーションが、3Dで提供するための3Dブルーレイの最終仕様を決定したことで、3D対応のテレビ開発に拍車をかけたようだ。

 ソニーも12月には3D技術メーカーのRealD社との提携を発表し、本格的な3D市場への参入を表明した。毎年1月上旬にラスベガスで行われる国際家電ショーでは、ソニー、パナソニック、サムスン、LG電子が、3D対応の液晶およびプラズマの薄型テレビを展示し、それぞれの技術を競い合うことになる。ここ1年あまりの価格競争で、大型のフラットパネルテレビはすでに米国家庭に普及し尽くした感じだが、3D対応テレビは新しもの好きの米国人の購買意欲を刺激しそうだ。

 各社とも3D対応テレビの価格は発表していないが、ウォールストリート・ジャーナルの報道(2009年12月18日付け)によれば、現行テレビの高級機種と比べ、大幅に高くなることはないという。ソニーの幹部は、3Dテレビに同梱する特殊メガネのコスト分などで200ドルくらい高くなるのではないかと、同紙に話している。

 3D画像を見るためには特殊なメガネが必要だ。2010年に発売を目指すソニーやパナソニックの場合は、テレビから赤外線信号を受けて瞬時に右目、左目と交互に閉じる電池式メガネを使うという。メガネだけで50ドルくらいするらしいので、こうした付属品販売も家電メーカーを潤すことになるかも知れない。

 なお3D画像を楽しむには、近すぎず、遠すぎない場所で正面から画面を見る必要がある。リビング・ルームで、家族がソファーに一列に腰掛け、お揃いの3Dメガネをかけてテレビ画面を見る日がくるのだろうか?


関連リンク
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200912/09-1218B/ 
(ソニー、RealDとの提携発表資料、日本語)

http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0910/07/news029.html 
(フルハイビジョン3Dテレビの最新事情、芹澤隆徳, IT media, 日本語)

http://www.technewsworld.com/rsstory/68929.html 
(ブルーレイ3Dがもうすぐ家庭にやってくる、テックニューズワールド、英語)

http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704238104574602363412548716.html
(家庭向け3Dに賭けるTVメーカー、ウォールストリートジャーナル 2009年12月22日付け、英語)


【編集部ピックアップ関連情報】

○CNET  2009/11/25
 2010年は「3Dテレビ」元年---キワモノから市場形成へ離陸
 ハードウェアとともに、3Dコンテンツの盛り上がりも3D化を後押ししている。
 米国では3D映画が好評で、3D対応の映画館が急増し、一般の映画以上の
 集客力を達成している。ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション
 ピクチャーズグループは、今後のCGアニメーションをすべてを3D対応にする
 など、コンテンツメーカーも意欲的だ。こうしたトレンドは日本にも波及
 しつつあり、国内でも3D映画の公開数が急増している。
http://japan.cnet.com/special/tech/story/0,2000056938,20404121,00.htm

○にわか映画ファンの駄目な日常「3D映画の方式について」 2009/12/09
http://cinefun.blog89.fc2.com/blog-entry-46.html


【ビジネスポッドキャスト番組「ロングインタヴューズ」 のPR】

書籍、雑誌、新聞、検索だけでは感じ取れない本質情報を対談形式の音声で提供。

2009年10月下旬から配信を開始したビジネスポッドキャスト「ロングインタヴューズ」
は、ビジネス、メディア、カルチャーの分野を中心としたゲストを月に2から3人迎え、
経験豊富なインタビュアーがリスナーの立場にたってゲスト講師に迫り、本人の
肉声で経験や考え方、本質情報が語られるため、テキスト情報ではわかりにくい
情報も理解しやすく、ハートの奥底に響いてくる番組です。

爆発する情報を整理して、意味のあるインテリジェンスに変換するには、「読む」に加えて、
アナログで人間的な先達からの希少な声を『聴く』ことが効果的です。

製品の融合化や業界垣根のボーダーレス化が進む社会においては、異業種、
他分野で起こっていることを意識して探り、全体を俯瞰して考えることを心がけなければ
優れた戦略、企画、アイデアは生まれにくくなっています。

書籍や雑誌、新聞、検索などのテキスト情報を補い、新たな発見、気づきをもたらす
メンター(仕事や人生に効果的なアドバイスをしてくれる相談者のこと)役として
ビジネスポッドキャスト「ロングインタヴューズ」を利用してみませんか?
普段、多忙でなかなかセミナーや講演会などに参加できない方にとっても、
通勤や移動時間に聴ける貴重な中身の濃い情報源になります。

「ロングインタヴューズ」個々の対談は期間限定配信です。
まもなく、2009年10月配信の下記の対談が聴けなくなりますので、この機会に
2009年11月から12月に配信した対談を含め、気になったコンテンツを2から3本でも
聴取していただければ幸いです。

▼ 鈴木謙介(関西学院大学 社会学部 助教)─井上トシユキ
 変貌するメガヒットのメカニズム「わたしたち消費」とは
http://mediasabor.jp/2009/10/post_707.htm

▼ 神林広恵(ライター)─永江朗
 スキャンダル雑誌の金字塔『噂の眞相』のつくりかた
http://mediasabor.jp/2009/10/post_708.html


Visa, Master, JCB, AmericanExpress, Dinersのカードであれば、
海外発行のものでも利用可能です

音声本編の配信先は株式会社オトバンクが運営する「FeBe」上です。
http://www.febe.jp/podcast/mediasabor/index.html


<2010年1月配信予定の対談ラインナップ>

■ゲスト:三浦展  インタビュアー:河尻亨一
テーマ:増殖する「シンプル族」のライフスタイルと消費性向(放送時間:104分)

 ---------------------------------------------------------------
 <三浦展>プロフィール
1958年生まれ。82年一橋大学社会学部卒、パルコに入社、マーケティング情報誌「アクロス」編集室勤務、その後同誌編集長として「第四山の手」「新人類」「世界商品」などのキーワードを使い、時代、世代、消費、都市、文化などを分析。
90年に三菱総合研究所入社、99年に退社し消費・都市・文化研究シンクタンク
「カルチャースタディーズ研究所」を設立。
団塊ジュニア世代、団塊世代などの世代マーケティングを中心に、自動車、家電、情報機器、食品、化粧品などの商品企画、デザインのための調査等を行う。
また、家族、消費、都市問題などを横断する独自の「郊外社会学」を展開するほか、「下流社会」「ファスト風土」「2005年体制」「真性団塊ジュニア世代」「シンプル族」などの概念を提案、マーケティング業界のみならず、社会学、家族論、都市計画論など各方面から注目されている。 
主な著書は
「下流社会―新たな階層集団の出現」 (光文社新書)
「団塊世代を総括する」(牧野出版)
「ファスト風土化する日本―郊外化とその病理」 (洋泉社)
「かまやつ女の時代─女性格差社会の到来」 (牧野出版)
「シンプル族の反乱」(ベストセラーズ)など
 ----------------------------------------------------------------

広告や供給側の仕掛けが効きにくくなっている要因は、メディアの多様化だけでは
なく、コンシューマーの意識変化も見逃せない。静かに増殖する「シンプル族」は
その象徴であり、今後のサービス創出や商品開発で無視できない存在となっている。

◎パルコ時代。マーケティング情報誌「アクロス」での仕事
◎三菱総合研究所での仕事
◎カルチャースタディーズ研究所設立の動機
◎独立後の印象に残っている仕事。手ごたえを感じたエピソード
◎「時代を象徴するようなヒット商品、流行は社会構造の変化によって
 もたらされる」という持論の意味
◎「社会構造の変化」を見極めるための仮説と検証について
◎優れたマーケティング・リサーチャーとは
◎「シンプル族」とは。「シンプル族」のルーツ
◎「シンプル族」のライフスタイル
◎「ロハス志向」と「シンプル族」の共通性
◎欧米文化崇拝から和文化志向への変化
◎「シンプル族」のコミュニケーション、情報接触の態様
◎「モノ」から「コト」へ変化する消費
◎これからの商品開発、サービス創出、流通の考え方


■ゲスト:夏野剛  インタビュアー:本田雅一
テーマ:ビジネスイノベーターの流儀(放送時間:97分)

 ---------------------------------------------------------------
 <夏野剛>プロフィール
1965年神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京ガス入社。ペンシルバニア大学ウォートンスクールにてMBA取得。ハイパーネット副社長を経て、1997年にNTTドコモに入社。松永真理(まつなが まり)氏らと「iモード」ビジネスを立ち上げる。iモード以後も「おさいふケータイ」をはじめとするドコモの新規事業を企画、実現する。2005年、同社執行役員就任。同社退社後、2008年5月に慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特別招聘教授に就任。株式会社ドワンゴの取締役のほか、複数の企業の社外取締役も務めている。主な著書に「ケータイの未来」「1兆円稼いだ男の仕事術」「グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業」など。
----------------------------------------------------------------

ベンチャー企業と大企業において、革新的なサービスの実現に取り組んできた
過程、手法など夏野流仕事術を公開。ITインフラビジネスの特質のほか、IT業界の
動向を多面的に解説。保守的な日本企業社会に渇を入れ、多様化する現代社会に
おけるビジネスパーソンのキャリア形成の考え方についても言及。 

◎技術的観点からは理解しにくいITバブル的投資ブームは、なぜ起こったのか
◎失敗から学んだこと。その後の仕事のスタイル
◎iモード展開の内実
◎人との出会いによって転機となったこと。人脈形成のコツ
◎FOMA再生物語(900iシリーズ)
◎イノベーションが起こりにくい日本企業の体質と経営の改善ポイント
◎複数の企業から求められている自身の役割とは
◎会社が変わっても通用するキャリア形成の考え方
◎ITプラットフォーム構築のインフラビジネスを成功に導いた戦略
◎クラウドコンピューティングに対する考え方
◎金融危機等の影響下で終了しているネットサービスが多いが、この難局を
 どう捉えているか
◎PCインターネット上で有料サービスを成立させるための重要な要素
◎アップルiPhone、グーグルの携帯OS「アンドロイド」搭載端末について

<2009年10から12月公開の対談ラインナップ>

▼ 鈴木謙介(関西学院大学 社会学部 助教)─井上トシユキ
 変貌するメガヒットのメカニズム「わたしたち消費」とは
http://mediasabor.jp/2009/10/post_707.htm

▼ 神林広恵(ライター)─永江朗
 スキャンダル雑誌の金字塔『噂の眞相』のつくりかた
http://mediasabor.jp/2009/10/post_708.html

▼ 小林弘人(株式会社インフォバーン CEO)─井上トシユキ
 出版・新聞のネオビジネスは業界の外から勃興する
http://mediasabor.jp/2009/11/post_719.html

▼ 梶原しげる(フリーアナウンサー)─永江朗
 常識を破壊する「濃いしゃべり」で結果を出せ
http://mediasabor.jp/2009/11/post_721.html 

▼ 伊藤直樹(クリエイティブディレクター)─河尻亨一
 「インテグレーテッド・キャンペーン」で「グルーヴ」を起こす
http://mediasabor.jp/2009/11/post_723.html

▼ 小飼弾(プログラム開発者)─井上トシユキ
 創造と依存をバランスさせて「仕組み」を活かせ
http://mediasabor.jp/2009/11/post_724.html

▼中島孝志(出版プロデューサー、キーマンネットワーク主宰)─永江朗
 「仕事で重要なのは情報と人脈の活かし方」
http://mediasabor.jp/2009/12/post_732.html 

▼森谷正規(技術評論家)─永江朗
 「戦略の失敗」から学ぶ日本製造業の経営
http://mediasabor.jp/2009/12/podcast.html 

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/1199